第5話,Cに誓う 〜中編〜
あれがら時がたち、Naの年号もMgに変わった。Mg.7年。アロンの存在は、死亡扱いとなっていた。そして、彼を慕っていた人や彼の温情に惹かれた人たちは、「アロン・ゼウス様が死んだ理由は、常族の者達だ」とでっち上げた。そして、国民内での常族に対する復讐の念が漂い始めていた。勝手に誰かが言い出しただけの一言でこんなに、ひどい感じになるんだね。窓を見ていてあきれていた。
「何を見ているの?」
「ん?ああ、アルメニアか。外がひどいものになってしまったなって、思っちゃってね。」
「そうね...。もうちょっと前は、明るく活発で温かいものだったのに...。でも、暗い話をしてったしょうがないじゃない!」
「それもそうだね。」
「それに、エクスの新しく付けた眼帯、とってもお似合いよ!」
「そう?ありがとう。」
「うん!わざわざ新調までしちゃって、かっこいいよ!これで、あなたは魔族になったって感じかな?」
「いや...あんまり褒められると、その...照れくさいよ。」
「えー!エクス照れてるのー?やっぱりこういうのに弱いじゃないの~」
「あまり僕のことをからかうなよ?」
「フフッ、ごめんなさいね?」
相変わらず、15になっても何にも変わってないなーこの人は。その変わらない温かいところは、彼女のいいところっちゃそうだけどね。そして、今日は、兄上と初めてお城に行くことになっている。どういうことかって、兄上の護衛もかねてついていくって感じ。兄上は僕の剣術で一目ぼれしてたからね。自慢のつもりじゃないよ?立派な自画自賛だよ?
お昼とき、王城に向かう支度をし、兄上の合流を待った。すると、奥からアルメニアが来た。
「そろそろ出発?」
「ああ。そうだよ。」
「気を付けてね?お城にいるルミン様とかは特にね。あの人、アロンが死んだとなって、国民と同じように常族をにらんでる。それに、エクスは、アロンの親友だったんでしょ?一番近い常族として、狙われるかもしれないし...」
「まぁまぁ、大丈夫だよ。これでも、見た目は魔族だし、いくら皇女殿下様でも、僕の剣さばきにはついてけないよ。それに、アロンは今でも大の親友だよ。この僕とともに、彼はきっと、生きてるよ。」
「...そうね。そうね!そうね...。だから、だったらちゃんと帰ってきてよ?!」
「ああ。帰ってくるよ。護衛くらいで帰れないなんてことないだろうし、そうだ!帰ってきたら、一緒にチェスしよう!今度はちゃんと真剣勝負で!」
「フフッ、望むところよ!!」
熱くなっちゃってんねー。そしたら、兄上がやってきた。
「盛り上がっているとこ申し訳ない。では、行ってくるよ。アルメニア。留守は頼んだよ?」
「任せてください。お兄様。お早いお帰りをお待ちしてます。」
敬語が上手になったね。アルメニア。
そして僕らは、出かけた。後ろで手をたくさん振ってくれている。それに押され、元気よく進むことができた。
城へ来た僕らは、門前の門番に手紙を渡し通してもらった。中には、とても大きな宮殿のような、建物が建っていた。しかし、きれいだけど渋い感じの雰囲気だった。
中に入ると向かい入れてくれたが、雰囲気はぜんぜん明るくない。そんなに嫌かな?見た目は魔族なはずなんだけど?
今回城へ集まったのは、1年に1度、ケレス家とゼウス家で保管されていた白と黒の2つの骸骨仮面の交換を行い、それぞれの研究結果を報告するためだ。だから、ケレス家の人たちがぞろぞろとやってきた。僕は、フードをかぶり目立たないように心掛けた。
兄上は、話しに出席するからその間、周囲に警戒しておかなければな。腰にさしてある剣を確認した。あとはじっくり待つのみ。出席しているのは、ゼウス帝国皇帝ヴァルディ・ゼウス、そしてその娘第一皇女ルミン・ゼウスや、ケレス王国国王アントニオ・ケレスとその息子第一王子ジョンヴィ・ケレスなどなど8名。周りを警戒していたが、特に異常はなく、スムーズに話が進んだ。しかし、ルミン様のあの目は、何か考えている。なぜかそう思ってしまう。
報告が終わった後、おのおのが部屋から出て、闘技場へ向かうことになった。何やら、武芸の方で、自分たちの騎士どうしで、武芸を高めあうのを観戦するらしい。まぁ、自分の騎士自慢をしたいらしい。大変だねぇ。僕は、騎士ではないから観戦しておくことにした。
試合は順調に進み、かなり激戦だ。騎士も大変だねぇ。ジョンヴィ様の騎士が今のところトップかな?圧倒的に強いね。
「ジョンヴィ様わが手に敵なしですよ。ですが、もっと強い方と戦ってみたいものだ。」
「そうかい?ジーン。だったら、オルイ様。あなたの騎士はどうでしょう?」
おっと、兄上の騎士はいないよ?
「はは。そんなことを言われましても、私は騎士を任命してはおりませんよ。それに護衛役しか連れてきてないですよ。」
「だったらその護衛役と手合わせというものはどうでしょう?」
「ジョンヴィ様、私は騎士であります。護衛役が相手になるとは、思えません!」
「まぁまぁジーン。あの勇猛なオルイ様が護衛役を付けたのだ。よっぽどの信頼があるのでしょう?」
すっかり見抜かれている。なんて鋭いんだ。
「...いけるかい?私の
こりゃあ行くしかねえな。
「...もちろんですよ。勝ってきます。」
「よし。負けても文句はなしですよ。これは真剣勝負なんでね。」
まさか僕がここに立っちゃうなんてな。注目がすごいな。
木刀を握り、深く深呼吸する。
.....1.....2.....3.....今!始めの合図とともに、間合いを詰める。
相手の剣が来る。それをかわし、少し間合いを取る。
「さすがだよ。相変わらず基本に忠実だね。」
相手の戦い方は、攻撃型の激流。圧倒的な破壊力を持つが、体力の消耗が激しいという欠点を持つ難しい型。だがッ!
間合いを一気に詰めて、後ろさえとれればッ!
(次の攻撃、パターンは3通り!右、左、上)
守備で受け止めるのか!よし!
間合いが詰まり、相手の剣は「上」からくる。それを守備型の護封で受け止める。
「なに!?基本からの派生だけでなく、攻撃型からも派生をするというのか!?なんという戦闘センス。オルイ様いったい誰ですか!?」
「ジョンヴィ様。彼は、私の自慢の『弟』だよ。」
受け止めた後、それを払い一気に攻撃型に構え、腹を狙う。
(相手は焦って次の攻撃を出す。そのときのパターンは、おそらく2。だとしたら、攻撃型をかわしに変える)
そうか、うち合わなくても切り抜けれる高さ、上からか!
右からの剣がきた。それをうち払いながら跳ぶ。後ろを取り横腹をたたく。
会場は騒然とした。ジーンともあろう騎士がただの護衛役に負けたのだから。
「今日も面白いものを見せてもらったよ。さすが私の弟だよ。」
「いえいえ。まだまだですよ。」
日はすっかり落ち、お褒めの言葉をいただきながら、会場は動揺を隠せていなかった。
「み、みなさん、時間も時間ですし、お食事はいかがでしょうか?」
案内役もこの様子だ。ほんとに大丈夫かよこれ?まぁそのまま着いていくけど。
「少々席を外します...。」
「分かりました。」
ルミン様はサッと立ち上がるとすぐにどこかへ行ってしまった。トイレだったら逆だけどな。
ルミン様のことは気になってしまうが、僕らはそのまま、食事会場まで向かうことにした。「バリィんッ!!!」
「!?」
ゆっくり歩いていたら、逆の方で大きなガラスの割れるような音がした。逆の方にあるのは、、、!?骸骨仮面!まさか誰かに...!
「なんだ今のは。どうしたんだ!」
「ちょっと嫌なんだけど」
「おい!またなんか音がしてるぞ!」
早くもパニックになっている。
「兄上これは!」
「ああ。何者かが、仮面を狙っているに違いない。急いで向かわなければ!」
「なんだと!?そんなバカな!仮面の交換は、厳重に行われている。いくらなんでもそんな簡単な警備ではないはずだぞ!それに皇城である以上よそものが入ることができるわけない!誰かが落として焦っているんじゃ!?」
「バカな!バートレイン様!どう考えようと、今は仮面の安全が保障されていない以上、直ちに対策を!」
ガッシャ―ン!!!
バンバンバン!!!キャー―――!!!
状況はさらに悪化していた。
だから、走った。これが姉上様のやったことならば....。
保管庫に到着し、ドアを開けた途端...目の前は火に包まれた死体だらけの部屋となっていた。こんなことが....。目の前に恐怖した。足がすくんだ。幸い1枚の仮面は無事だった。兄上は、すぐに仮面を回収した。しかし、もう一枚の仮面がなかった。
「これは、盗まれただろうね。そして、この骸骨仮面をはめたのだろう。」
「はい。...兄上。」
「なんだい?」
「...兄上は...これの犯人は...」
「ルミンだろうね。」
「やはり...そう思いましたか。」
返答が帰ってくるとなんだか悲しかった。信じたくなかった。生真面目なあの方が、こんなことをすると思えなかった。しかし...
バンッ!!
銃声が鳴り響く。
「兄上!!」
(腹部をやられてる。出血もひどい。...!?)
目の前に黒の骸骨仮面をつけた、女の人が立っていた。
「姉上だろ!!どうしてこんなことを!!」
「....」
黙ったまま銃を向けそのまま迫ってきた。とっさに、兄上と白の骸骨仮面を抱え、走った。ひたすら走った。
広間まであとわずかだった。しかし、
「エクスよ、私を...おろしてはくれまいか?まだ、立つことはできる!」
「兄上!何を無茶な!...」
「私がルミンを引き止める。...だから、その間に!骸骨仮面を!」
「そんな傷で、止められると思ってるんですか!?」
「いいから行け!!私のことは気にするな!」
「...でも...」
「いいか。君は、私の自慢の...弟だ。
誰よりも、誰かのために頑張ろうとできる。そんな自慢の弟...なんだ。だから、こんな...ところで、君が..死んでいいはずないだろう?これは、私からの最期の頼みだ。さぁ...行け!!!」
涙を流しながら、仮面を持ち、兄上を後にした。兄上の顔は、晴れた笑みだった。
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