つむの家に招待された
「じゃあ、のんのん。1時間後OO駅前集合でいける?」
「え!?今日なの!?もちろんいいけど。」
という事で、今僕はOO駅前の銅像でつむを待っている。時刻は18時を過ぎた頃で、辺りには今から帰宅するのであろう学生や社会人が溢れていた。学生カップルが手を繋ぎながら楽しげに歩いている横で、キラキラしたアクセサリーを身に着けた男子が、大人しげな女子に話しかけている。駅前では色とりどりの男女の姿が視界に飛び込んでくる。
つむとリアルで会うのは三度目のはずなのに今日いきなりつむの家に行くことになった。か。。。つむと会えて嬉しいという気持ちの反面、なんというか....ハッキリ言って僕がヤリoンみたいだとも思ってしまう。
つむとは、ネットでは毎日話しているものの、リアルで会ったのは前回と前々回の二回きり。1年のつむとのやりとりと1度のお出掛け。そんな非対称な関係__矛盾を承知で告白をしたはずの自分への嫌悪が喉元に刺さっている。
でも、つむは僕の恋人だ。
つむだって僕と一緒にいる事を望んでくれている。そんな世間の目なんて気にしてちゃダメなんだよなぁ。。、
などとあれこれ考えを巡らせていると、聞き馴染みのある可愛らしい声が聞こえてきた。
「のんのん。遅れてごめん!準備に時間かかっちゃって。」
「うん。大丈夫だよ。僕もさっき着いたところだし。」
つむに気負いを感じさせないため、気を遣って返事をする。
僕も人生で一回はこのセリフ言ってみたかったんだよなあ。
「そうなんだ!なら良かった。」
つむはカバンの紐をくるくる巻きながら
「じゃあ、行こっか?」と聞いてくる。
「そうだね。つむ。」
どうやらつむはタクシーでここまで来たらしく、僕と一緒に家へ向かうためタクシーを待たせているのだとか。
僕たちはタクシー乗り場へと歩き出す。でも実際歩いていると、二人の手の甲がたびたび触れ合う距離を保つ。噴水の近くに咲いているチューリップを見つめて立ち止まり、
「綺麗だね。のんのん。」
と呟いたかと思うと、左手を自然に腰の方で組み、ひらりと手のひらをこちらの方へ向ける。
人混みで立ち止まった時、つむの小指がわざとらしくこちらの手の甲を撫でている。僕が視線を合わせると、慌てて視線を逸らす。
人混みが動き始めたと思った瞬間、つむが僕のポケットの縫い目を引っ張りそっと手を差し出してくる。
「つむ?手繋ぐ?」
「うん。。!」
ぷいっと差し出されている手を握り返す。
つむの手はなんだか小さくて、温かくて、手を繋いでいると、心地よかった。
「つむって、なんか変なところで恥ずかしがり屋さんだよね。」
「えー?そうかな?」
「だって、前も『好きー』とか『えっ、、ちな事がどう』とか普通に言ってきたのに、手繋ぐのは言ってくれないんだもん。」
「それはさ、、。。だって、恥ずかしいじゃん。」
「ふふっ。なんか、リアルで会うのが3回目で家ってどうなんだろうとか考えてたけど、そんなのどうでも良くなっちゃった!」
「つむ、そんな事思ってたんだ。」
「うん。だって、なんか女たらしみたいじゃない?」
「うーん?のんのんは女たらしじゃないよ?」
「うーん。そういう事じゃ無いんだけどなあ〜。。」
思わず微笑みがこぼれる。なんか、女たらしだとか女たらしじゃないとか。どうでもいいや。悩んでいた時間がまるで遠い夢のようだ。
だって、僕はつむのことが好きなんだから!
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その後僕らはタクシーに乗り込み、つむの家へと向かった。
つむの家へ入ると、つむのお父さんが出迎えてくれた。
「あ!君が噂ののんのんちゃんか!いつもつむから話は聞いているよ。」
「あはは。。こちらこそいつもつむと仲良くさせてもらって、ありがとうございます。」
「うんうん。いいねぇ。さぁさあ、上がって上がって!ご飯もいっぱい用意しといたから!」
「お父さん、、余計な事言わないでって何度も言ったのに。。」
つむが頬を染め上げている。自分の親が友達を歓迎する時ってなんともいえない気持ちになるよな。。
「まぁ、まぁ、つむぐ。せっかく大切なのんのんちゃんがきてくれたんだから歓迎しないと。のんのんちゃん、つむぐが友達連れてきてくれたの初めてなんだぞ?」
「もぉ!!!お父さんてってば!!もう本当に!」
つむの声は高く、しかし怒りというよりはむしろ恥ずかしさに満ちていた。その声はまるで小さな子供が秘密を暴かれた時のようで頬は真っ赤に染まり、目はきょろきょろとあちこちを見渡している。
「もう、ほんとに...」
つむの声は震え、言葉の端々に恥ずかしさが滲み出ている。つむは僕を部屋の奥へと急ぎ足で引きずり込む。
「あはは。。なんか、すみません。お父さん。。」
「いいのよ〜つむったら初めての親友で恥ずかしいのよね〜」
なんだか、つむ、同情するよ。ほんとに。。。
あ!あと!僕男の子です!!!
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いつもより表現多めで頑張ってみました!どうですか?
♡、⭐︎、コメントにレビュー是非お願いします!
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