時の交わる間~輪廻転生した僕は君に会うために~

なかなかぼちぼち

プロローグ

冷たい雨が降る夕刻、僕は小さな神社の前で足を止めていた。 濡れた制服が肌に張り付き、強い風に晒された身体は、動くことも考えることも体温と共に奪われていた。


僕は無意識の内に神社に足を踏み入れ、薄暗い拝殿の前に立つ。かすかに聞こえる雨音の中で、ぽつりとつぶやいた。


「もう…つかれた」


その瞬間、風が止み、時間が凍りついたような静けさが辺りを包む。

一面に霧がかかり、闇の中から〇〇のような柔らかい声が、僕の後ろから聞こえてきた。 振り向いた僕の目に見えて来たのは、小柄で淡藤色の和服がよく似合う色白の少女だった。 黒髪が雨に濡れたように艶やかで、瞳の奥には夜空のような深い闇が宿っている。


ー君は誰…


僕が声を出す前に、少女が話し出す。


「やっと、会えたのね」


その言葉に、少女の瞳に、僕の心はざわめいた。

ー以前に会ったことがあるのか?

彼女の黒い瞳に映る自分が、何者なのか?それさえも、わからない。

そんなことを考えているうちに、いつの間にか、雨がやんだ空には、薄明かりの月がのぞいていた…

僕の孤独な日々は、この出会いをきっかけに大きく揺れ始める。


そう、月久保 翔(つきくぼ しょう)の物語。

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