第26話 凍道チャンネル「祟神機関八咫烏スペシャル③」

「じゃあついでに井沢元彦氏の論も紹介しようかな。井沢氏は、徳とか崇とか、清らかな漢字が使われてる天皇は暗殺や不遇の立場に追い込まれた天皇で、怨霊にならないように清らかな名前を贈られたんだ、という説だね。天皇はそもそも諱(いみな)が名前であって、在位中の天皇は「天皇」であり、死後に贈られる諡号はあくまで通称みたいなもの。そして、『聖武天皇の頃、過去の天皇に諡号が一斉に決定されたため、御肇國天皇(はつくにしらすすめらみこと)が崇神天皇となった』わけだ。なんなら、後醍醐天皇とか後白河天皇なんてのは、「醍醐に住んでた二人目の天皇」とか「白河に住んでた二人目の天皇」くらいの意味だからね」


「はえ~」「後醍醐さんって名前だと思ってたのだ」


「ついでに井沢元彦論と俺の論の違いを説明しておくと、井沢氏は『怨霊思想が自然発生的に生まれ、それにならって天皇が怨霊化しないよう徳や崇という名が贈られた』なのね。で、俺の論は『怨霊(祟り)思想という、天皇にとってとても都合の良い思想は、当然天皇一族によって生み出され、それによって権力を失ってもこの国で生き延びつづけた王族』という見方なわけ」


井沢元彦論

自然発生した怨霊思想があったから天皇もそれにならった


俺論

天皇が怨霊思想という天皇に逆らってはいけないという思想を広めた


「世界的に見ても『怨霊(祟り)』という概念は日本だけのものだ。海外の悪霊は、祓うことのできるものだが、日本の怨霊は『一度怨霊に狙われると助からない』という概念になってるとおもわないか?たとえば伽椰子とか、古いのだと番町皿屋敷とかがそうだね。どうやってもひどいことをしたら怨霊にとり殺される。それはなんの神威もないような一般人でさえもそうだ。ましてや、天皇を弑し奉るなど、もってのほか。『けして天皇には害意を持ってはならない』そんなことをした一族がもしいたら、一族郎党がただちにすさまじい怨霊によって滅ぼされる。そういう思想を、戦後の日本で育ったずんだも自分の中にも感じるだろう?」


『おそれおおいのだ』『のだ』『ばちがこわいのだ』


「井沢元彦論だと、崇神天皇が説明つかないと思うんだよね。えーと、たしか『崇』と『徳』が怨霊を鎮める名前だったかな?歴史上暗殺されたと史料にのこってる崇峻天皇、三大怨霊にされてる崇徳天皇、そして聖徳太子、だっけ。あとは道鏡の称徳天皇とか海ダイブしちゃった安徳天皇か」


『道鏡巨根説きたこれ』『海の底にも都は在るのだ』


「井沢説で疑問がいくつかあって、大きいところで行くと『偉大で最初に日本統一したと思われる、非の打ち所のないはつすめらみことである崇神天皇に崇って字が使われてるのはどういうことなの』とか『歴史上最強と思われる怨霊である長屋王が怨霊扱いされてないのどういうこと』って2点だね」


・崇神天皇

・長屋王


黒板にキーワードをメモする


「それを踏まえて俺の説。そもそも神武天皇~持統天皇の諡号は、聖武天皇のあと、淡海三船がまとめて贈ったものとされている。俺もここが、怨霊思想を天皇一族が生み出した頃だと思うから、それに辻褄を合わせるように贈られた諡号だろう。崇神天皇は、四道将軍をつかわし、大物主神を祀ることで疫病をおさめた大英雄だ。なぜ崇神天皇に、同じくまとめて名前をつけられた『暗殺された崇峻天皇』と同じ崇の字を使ったか?これを井沢説は説明できないように思う。俺は『祟り神として天皇の神威を示した』崇神天皇は、『怨霊になるならない以前に、祟り神として神だった』のだと思う。崇神天皇が『祟り神』で、崇峻天皇は『祟りを起こすかもしれない天皇』というわけだね」


『はえ~』『むちゃくちゃだけど面白いのだ』


「歴史上『神』の名をいただいた天皇は3人しかいない。神武天皇、崇神天皇、応神天皇だ。俺はこの3人は同一人物だと思う」


『また無茶なw』『くぅ~これこれ、これが凍道節なんだよな』『どうしてかな?続けて』


「まず、天皇は天照大神の末裔とされてるよね。つまり神の一族だ。なら、何度も神という名前が使われて当然じゃないだろうか?なのに3回しか使われていない。そして、神武天皇と崇神天皇は、この日本をはじめて平定した「はつすめらみこと」という名を持つ。この二人が同一人物と思われることは、説明するまでもないだろう。では応神天皇に注目しよう。応神天皇は蝦夷を平定したり、渡来人をよく使ったりした天皇だ。ここで母親の神功皇后に注目。神功皇后にはこんなエピソードがある」



忍熊王を菟道に追い詰めていたときのことである。昼なのに夜のような暗さが続き、これを「常夜行く」といった。原因を占ってみたところ二人の神官を共葬したためでないかと出た。そこで聞きまわってみると怪しげな話が見つかった。この土地の神官である小竹と天野は親友だったが、小竹が病気になって死ぬと天野は血の涙を流して嘆き悲しみ殉死して共葬を望んだという。すぐに墓を暴いてみると事実だったので棺を新しく作って別々の場所に埋めた。するとすぐに日光が降り注ぎ、再び昼と夜が分かれたということである。


「これ連想するの誰?」


『天照大神の天岩戸のだ!』『ホトまで押し下げて踊るウズメまだ?パンツ脱いだのだ』


「そう、そして俺の論だと卑弥呼とアマテラスは同一であり、スサノオの一族とアマテラスの一族が結ばれて今の天皇一族になったのではないかと思う。応神天皇は母親である神功皇后がこの卑弥呼と思われるアマテラスの天岩戸と共通するエピソードを持っている。つまり、魏志倭人伝にも残る卑弥呼一族の子が応神天皇であり、これは崇神天皇や神武天皇と同一人物であり、天然痘を兵器として使って日本を統一した最初の天皇ではないか。これが俺の説ね」


『ぶっとびすぎなのだw』『日本書紀と古事記にけんかを売っていく凍道スタイル』『アカデミアがブチ切れる音が聞こえたのだ』『樋口英雄樋口英雄樋口英雄樋口英雄樋口英雄樋口英雄樋口英雄樋口英雄樋口英雄樋口英雄樋口英雄樋口英雄樋口英雄』


「んん?へんな荒らしきてるね、ブロックと、発言制限ちょっとつけてくるからまってね」


『誰?』『樋口って誰?』『???』


樋口の本名?なんで俺のチャンネルに?そういえばあいつメール返信ないな?誰だこれ?アカウントは最近作られた捨て垢か?なんなんだこいつ?

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