第11話 聖女の決意
皇帝陛下が二度、手を叩くとどこからともなくメイドたちが現れて、大きな布で私の身体を拭き始めた。さらにメイド服まで着せてくる。エフェタリアのメイド服とは違って、スカートの裾は短めであちこちにレースのフリルがあしらわれている。
「こ、これは……?」
「いやなに、いかに妾が皇帝といえど全裸のおなごを連れ歩くのは問題があろうよ」
そう言って彼女は豪快に笑う。
「それにお主、裸足ではないか。このまま歩かせるわけにもいくまい」
メイドのうちの誰かが持っていた予備なのだろうか、少しだけ大きい革靴を渡される。
「す、すみません……」
「なぁに構わんさ。それくらいのことは気にするな。のう?」
「はい、皇帝陛下」
皇帝陛下とメイドたちの信頼関係を見ていると……どうしてもファリアのことを思い出してしまう。彼女は無事だろうか。私が……治癒術が使える聖女だったら……彼女を危険な目に合わせずにすんだだろうか。
「セレーナ? 体調がすぐれないか?」
「あっ、ごめんなさい。だ、大丈夫です……」
「ふむ。今はまぁ空元気でも構わん。さぁ、ゆくぞ。日暮れまでに帝都へ着きたいからのう!」
皇帝陛下に促されて私は歩き出す。
「ところでお主、これからどうするつもりじゃ?」
「……わかりません。陛下は、どうされるおつもりで」
今、私の生殺与奪は目の前の幼い女帝が握っている。自分からどうするつもりかなんて、今は決められそうにない。
「ふーむ、お主の身柄と交換で王国から金をせびってもいいが……応じる余裕もなかろうに」
「はい……亡者のせいで、王国はもう終わりかもしれませんね」
自嘲気味に言う。だが、事実だ。亡者が解き放たれたことで、王都周辺の街や村は全滅しただろう。
すると、皇帝陛下は突然立ち止まり、こちらを振り向いた。
その表情は怒りに満ちていた。
「国の滅びを座して待つなど、妾ならお断りじゃな!!」
強い言葉だ。私の中の弱気が震えるほどの、決意に満ちた声。
彼女の強さが眩しいほどに伝わってきた。そして、だからこそ知りたかった。なぜそんなに強いのか。
さらに彼女は私の想像を超える言葉を口にした。
「追放された聖女セレーナよ、妾とともに王国を滅ぼそうぞ」
私の想像を超える、けれど私はその言葉を待っていたのかもしれない。復讐を望んでいるわけじゃない……きっと、後始末なんだ。これは、ご先祖様のできなかったことを私の手で成し遂げよということなんだ。あの空間で女神様とご先祖様に会った理由が、そこにはきっとある。
きっとそれは……滅びではなく――。
「―う―を、救―た――す……」
「――なんじゃ、聞こえんぞ。はっきり申すがいい」
「わ、わたしは……王国を、世界を救います!!」
世界を救う、その一言を絞り出したとき、身体の中を熱い力が駆け巡った。
それが何かわからないけど、私の中で確実に何かが変わった。
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