第21話「魔力の実験」
「えーと」リリアが古代の記録を読み解く。「まずは水晶に魔力を...くしゅん!」
星型の魔力が、透明な水晶に吸い込まれていく。
中で星が小さな渦を巻き始めた。
「おお!」ガストンが興奮気味に。「次は私も...くしゅん!」
虹色の魔力が加わり、水晶の中で星と交わる。
まるで小さな銀河のよう。
「素敵!」エマが目を輝かせる。「私たちの魔力くしゃみ、みんなで集めましょう!」
世界中の料理人たちが、次々と水晶に魔力を注ぎ込んでいく。
桜、龍、オーロラ...様々な形の魔力が渦巻く。
「ここまでは順調ね」学院長が観察する。「では、調理を...」
その時、水晶が突然激しく脈打ち始めた。
「あ」フェリシアが気付く。「魔力が暴走...!」
水晶から魔力が溢れ出し、近くの食材に飛び散る。
すると食材たちが、まるで意思を持ったかのように動き始めた。
「わっ!」一郎が驚く。「人参が走ってる!」
「キャベツが空を飛んでる!」エマが指差す。
「Mon dieu! タマネギが剣術の練習を...」
広場は、突然の食材の反乱で大パニック。
「データを!」リリアが必死に測定器を向ける。「こんな現象、前例が...くしゅん!」
星型の魔力が暴走した食材に当たり、今度は食材たちが歌い出した。
人参とキャベツによる即興デュエット。
「ふふ」学院長が楽しそうに。「面白い実験になりましたね」
「学院長!」ガストンが叫ぶ。「これは実験を楽しむ場面では...」
「大丈夫よ」学院長が杖を掲げる。「この暴走こそ、私たちに必要なものだから」
「え?」
「見てごらんなさい」
食材たちは踊り、歌い、時には軽い曲芸まで。
観客たちは、最初の驚きから笑顔に変わっていく。
「なるほど」一郎が理解する。「これも、料理のエンターテインメント」
「そう」学院長が頷く。「固定概念を破ることも、時には必要なの」
「でも」リリアが心配そう。「この状態で料理なんて...」
「くしゅん!」
エマの虹が、暴走食材たちを優しく包み込む。
「あれ?」フェリシアが驚く。「食材たちが...踊りながら調理台に並んでる!」
確かに、食材たちは秩序ある動きを取り戻しつつ、自ら調理の準備を始めていた。
「さぁ」一郎が決意を込めて。「世界初の"踊る食材の魔力料理ショー"、始めましょう!」
...誰もが笑顔で料理を始める中、水晶の中の光は、さらに強くなっていた。
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