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海星

第1話 フラッシュバック

「マリア…ばいばい…」

「なんで?…」



――――――5年後。


晴太は10歳。マリアも同じ10歳になって晴太がまたまちに戻ってきた。



母親の都合で出て、また母親の都合で戻ってきた。


晴太は戻ってきた日、母親の目を盗んではっきりと記憶にあったマリアの家に駆け込んだ。



――――――マリアの家の裏庭から入ってリビングの窓の前。


「…マリア!!」


晴太は出来るだけ大きな声で叫んだ。


すると出てきたのはマリアの母。


「…晴ちゃん?晴ちゃんだね?」

「晴太だよ。ママ、助けて。ママ、助けて。」


マリアはマリアを呼ぶ声で慌てて二階の自室から降りてくると晴太を見て駆け寄って抱き締めた。


「晴太…おかえり。」

「マリア助けて…。もうどこにも行きたくない。助けてマリア。」


マリアの母は晴太に聞いた。


「なにがあったの?」


マリアは感の鋭い子。

晴太の上の服を強引に脱がせた。


すると、全身痣だらけになってた。



マリアの母は直ぐに警察に通報して、

晴太の体のあざと10歳の子の供述で実母は逮捕された。

晴太は晴太の希望とマリアの母の受け入れもあり、マリアとマリアの母と生活を送ることになった。


約五年、離れていた。

でも根本は変わっていなかった。

また、男の子という事もあり、どことなく成長が遅く、少し抜けているところもあり、マリアの母のみならず、マリアにも可愛いがられていた。


扱いは昔と変わらず少し弟のような感覚もあった。



暫くして、一緒に学校に通い始めると少しづつ本領発揮して行った。


ある日、たまたまマリアが囲まれているのを見た。僕は迷わず入っていって、話をしようと中に入ったがなぜか蹴られそうになってその足を蹴り返した。


「今のって正当防衛だよな?」と聞く。

マリアは「そうじゃない?」と言う。

「俺からは手出さないから。来たいやつはこい」

というと、雲の散らすように去っていった。


その時、晴太は初めてマリアにキスをした。


マリアは驚いていた。



「キスしかしてない。他に何も言ってない。」


マリアはただドキドキして何も返せずにいた。



数回マリアを救う事が続くと、

さすがにまずいとマリアを標的にするのをやめて行った。


当のマリアは、家でもぎこちなくなっていた。


晴太と少し距離をとるようになっていた。



でもある日をきっかけにまた距離が縮まって行った。



ある日、学校の授業で『虐待』について取り上げていた。


晴太はフラッシュバックしてしまってたまらず教室を出た。


マリアはすぐに追いかけた。


屋上まで来て過呼吸にも襲われて苦しみもがく中、一番まで行こうとすると、


「晴太!!行かないで!!」とマリアの声が聞こえた。


その場でしゃがみこむと後ろからマリアが包み込んでくれた。



「晴太。ダメ。」

「……」


いつも冷静にマリアを守る晴太が震えて小さくなっていた。


「大丈夫。晴太には私がいる。ママもいる。大丈夫。帰らなくていいよ。」


僕はマリアの方に体を向けて抱きしめた。


そして…キスした。



「晴太…」

「ただキスしただけ。」

「そうだね。」


「……」

「……」


もう一度マリアの頭を撫でながらキスした。


「大丈夫。ちゃんと伝わってるよ。」

「…来てくれてありがとう。」

「当たり前でしょ。」




―――――――――――。

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