4年生編(2)
短い春休みが明け、新学期が始まった。弘前市の気温は肌寒いが、通学路の元気な小学生たちが寒さをかき消す。綺麗に咲く桜並木が登校する小学生たちを静かに見つめる。
和樹は宿題をしっかり終わらせたため、すっきりとした気持ちで登校できた。足取りも軽やかであった。宿題をしていないと、野球部の体験入部に遅れてしまうため、一生懸命宿題に励んだ。
今日は待ちに待った野球部の体験入部の日。ワクワクしすぎて、あまり眠れなかった和樹であったが、眠気よりも楽しみが優っていた。
退屈な授業が終わり、体験入部の時間が近づく。曇りがかっていた空も、いつしか晴々としていた。
「やっと授業が終わったな、正樹。」
「めちゃくちゃ眠かったね。半分寝てたわ笑。」
「それじゃ、退屈な授業も終わったことだし、早速グラウンドに向かいますか!」
和樹と正樹は、一目散にグラウンドへ向かった。
(「やっと野球部に入部できる!」)
2人の心はやる気と興奮で満たされていた。彼らの明るい気持ちが、足取りを加速させていった。
見慣れたグラウンドが、なんだかいつもと違うく見えた。殺風景な風景、漂う土の匂い、どれをとっても新鮮に感じた。
グラウンドを見渡すが、自分たち以外に人はいなかった。
「俺ら張り切りすぎて、一番に到着しちゃったな。」
「僕たちが一番やる気あるのかもね!」
「正樹、俺、早く体を動かしたくて、体が疼いてきたよ。」
と、2人が笑顔で話していると、ユニフォームを着た上級生がグラウンドに現れた。
「君たち、体験入部しに来たの?」
上級生は2人に優しく声をかけた。
「は、はい!よろしくお願いします!」
突然話しかけられたので、和樹は緊張して返事をしてしまった。
「よ、よろしくお願いします。」
正樹は小さな声で挨拶をする。
「みんなが集まるまで、もう少し待ってね。」
上級生が優しく声をかけると、練習の準備を始めに、ベンチに向かった。上級生がその場を離れると、2人の体の硬直が解かれた。
「突然声をかけられたから、緊張しちまった……。」
「僕なんか、緊張しすぎて声が小さくなっちゃった……。」
「上級生って、なんだかよくわからないオーラ纏ってるな。」
「僕たちなんかが近寄れないオーラ出てたね。」
そんな他愛もない話をしていると、次第に上級生や他の体験入部生たちもグラウンドに集まってきた。
「正樹、俺なんだか緊張が増してきた……」
和樹が不安そうに話した。
「大丈夫だよ。なんとかなるさ。たぶん……」
正樹も少し不安そうに答える。
「体験入部生、集合!」
監督らしき人が声をかけ始めた。和樹たちも指示に従い、彼の元に集まる。
「俺は監督の成田だ。よろしく。まずは、球の取り方や投げ方を体験してもらう。」
和樹と正樹はグローブを手に取り、捕球や投球を体験してみた。しかし、思った以上に難しく、苦戦してしまう。ボールを取ろうとしても足が思うように動いてくれない。ボールを投げようにも、力加減がわからず、ボールがあちこちに飛んでいってしまう。
(「俺、本当に上手くなれるのかな……。」)
あまりの不甲斐なさに、自信を失う和樹。
ふと、正樹の方を見てみると、正樹も思うように体を動かせていなかった。他の体験入部生も同様に苦戦していた。
(「俺以外も上手くできていないやつがいるんだな。」)
周りを見て、少しだけ自信を取り戻すのであった。
結局、全くうまくプレーできないまま練習が終わった。
「全くうまくできなかった……。正樹はどうだった?」
「僕も全然ダメだった……。これからうまくなるのかなぁ?」
「俺もなんだか不安になってきた。」
想像以上に野球が難しかったことで、ショックを受けた2人。しかし、同時に、和樹の心に決意が芽生えた。
(「少し上手くできないくらいで、くよくよしてられるか!まだまだ、これからだ。」)
和樹は持ち前のポジティブさで、少し元気を取り戻した。
「正樹、俺らだって練習を頑張れば先輩たちみたいに上手くなれるさ。」
「そうだよな、これからたくさん練習しようぜ!」
二人はお互いを鼓舞しながら、今後も頑張ることを決意するのであった。
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