第58話

『嘘だろ......』


「そんな......」


「メシアの力をえて、私は私の世界をつくる。 そのためには君たちネクロマンサーも邪魔なんだ」


「彷徨える魂よ、我が声に答えよ」


「彷徨える魂よ、我が声に答えよ」


護謨甲虫弾アイアンクラッドビートルゴムバレット!」


膠化海月ゲルジェリーフィッシュ石青鮫ブルーシャーク


 バッグから転がった容器に針を投げつけると、そこから巨大なクラゲが現れ、ゴム弾を取り込んだ。


(だめだ! 貫けない!!)


 そして杭をうめた地面が盛り上がり、巨大なサメが数匹、石床を堀りながら進んでくる。


『こいつ石を砕いてるくせに速いぞ、クルスのれ!!』


 ぼくはミーシャにのり、サメをかわす。


『どうする! 逃げ回るだけじゃやつは倒せない!』


「わかってる...... あの壁のクラゲをなんとかしたいけど。 あんなゲル状の体じゃ、手持ちでは切れないし撃ち抜けない」


(なんとかあれを......)


「彷徨える魂よ、我が声に答えよ! 散弾蟻シェルショットアント鍬形スタックビートル!!」


 続けざまに散弾とクワガタムシを放つ。


「無駄なことだ......」


 それらはクラゲを避けて天井へと当たった。


 その時サメは体当たりをしてきた。


「がはっ!」


『ぐぅ!!』


 ぼくたちは壁まで吹き飛ばされた。


「ここまでだな」


「......メシアはなにをするつもりだったんだ」


 ワイズマンはため息をつくと、こちらを見据えた。


「やつは狂っているのだ。 人間と同じくな。 ただ私は違う。 人間たちは私のものだ。 私が導いていく」


 旋回していたサメがこちらに向かってはしる。


「彷徨える魂よ、我が声に答えよ...... 甲虫護謨弾アイアンクラッドゴムバレット!」


「無駄な足掻きだな。 天井を砕いた石程度ならクラゲはとおさない」


 放った弾丸は天井へと当たると、粉々になった天井は下へと落ちた。


「ミーシャ!! いまだ!!」


 ぼくが飛び降りると、跳ねるようにミーシャがワイズマンに飛びかかった。


「防げ」


 だがクラゲは小さく固まっていった。


「これは!? しまっ......」


『くらえ!!』


 ミーシャの爪がワイズマンを切り裂く。 星幽石が切れる音が響く。


「ぐっ!! バカな......」


 ワイズマンは膝から崩れ落ちた。


「な、なぜだ...... 天井から落ちたものがこんな粉々になるはずが......」


 そういうと崩れた天井をみた。 数ヶ所にあながある。


「......そうかはずしたのではなく、わざとか。 最初の発砲もこれを狙ったのか」


「クラゲは大きな石では倒せない。 だが石を粉々にして水分を奪い取ればクラゲは動けない」


「ぐっ! なんだ、これは...... まさか!」


 そうワイズマンは驚いている。


「......ぐぅううああ!!」


 ワイズマンが苦しむようにのけぞると、その切れた場所から赤と青の星幽石がみえた。


「あれは! ロード隊長とおなじ! まさか! まずい! ミーシャ攻撃だ!」


「ぐあああああああああ!!」


 ワイズマンの体は別の体へと変化していく。 

 

「体が変わっていく!! 固くて攻撃も効かない!」


 変化したそれは髪の長い白髪の若い女性だった。


「......ワイズマン...... そなたでは私の力を制御できなかったようだ」


 そう金の目と青い目のオッドアイをもつ女性は静かにつぶやいた。


「あなたがメシアなのか」


「......そうだ。 そう呼ばれていた。 そなたは......」


 こちらをみた。


「あなたは何をするつもりですか......」 


「救済......」


『救済だと?』


「すべての人間を死という救済をもたらす」


 そういうとメシアは立ち上がった。


『救いといいながら、結局は人間を滅ぼそうってか!』


「それはしかたないこと...... 膨大な時間をつかい、幾度ものトライアンドエラーの結果。 もうとっくに人は壊れてしまったのだ」


「壊れてしまった......」  


「そうだ。 長く続いた悪意のはて人は壊れてしまった。 いや最初からかもしれぬな......」


『壊れてるのはお前だ! おまえたちが今まで戦争を起こさせてきた悪そのものだろう!』


「ではそなたらに問おう。 人は善か」


「善でも悪でもない」


「いいや、悪だ......」


『人が悪でお前たちが善だとでもいうのか!』


「そうだ」


 驚くぼくたちに、メシアはつづける。


「この世界は罪なきものは生きられぬ」


『罪なきものが生きられない......』


「罪なきものを殺す者がこの世界にはいる」


「殺す者......」


「そう、それはそなたたちの祖の誰かだった。 そなたたちを祖まで遡れば、罪なきものはいまい」


『それは......』


「この世界で生きられたのは人を欺き、奪い、虐げ、殺せる、悪しきものたちだけ。 清きものたちを殺したのはそなたちの祖、そなたたちは悪の子なのだ」


『なっ......』


「それで滅ぼすのですか」


「そうだ。 最初から間違っていた...... 罪ある人間は苦しみ生きるべきではない。 穏やかに死すべき者たちなのだ」


「それが救済」


『ふざけるな! お前がそんなことを決めるな!』


「それはそなたたちの祖の意思でもある......」


「祖の意思、そういえばあなたは星幽石で甦った、まさか!?」

 

「そうだ。 私は元々死者、人の祖がつくりし存在」


『最初の...... ディシースト』


「私は罪に苦しむ、人間の祖によって、多くの生け贄を使い、救世主としてつくられた存在」


「それでメシア......」


「自ら判断に苦しんだ人間は、選択を私に託した。 人はどうなるべきか。 私は長い間、思考した。 そして悪しき人間はもはや正しくいきることは叶わない。 みな静寂の救いへと向かうべきだと結論をだした」


「それで人間を......」


「悪意はつづき、人間は罪を犯しつづけ苦しみつづける。 この連なりを断ち切るのが救い。 人の祖の願いをもって、私はかつてネクロマンシーを使った。 それは貧しき者、信じる者、正しき者、上にたつ者、病む者、老いた者、賢き者、孤独な者、しいたげられた者、強き者たち......」


「それが白き聖者ホワイトセイントなのか」


「そう、そして死した魂は引き寄せあう。 同じような記憶と痛みをもつものが結合して、ひとつの人格となる。 罪なく殺された彼らには人を罰する資格がある」


「だけどロードはそれを否定した」

 

「......そうだな。 それは善性ゆえ。 罪あるものに慈悲を与えたのであろうな。 だがそれでは苦しみから逃れでることは叶わぬ。 同じことを再び繰り返すのみ......」


「過去の人間が何を考えようが、今のぼくたちは生きるべきだ!」


『クルス......』


「罪を犯しながらその苦しみに抗うのか......」


「ああ!」


「そうか......」


(メシアはなにももってない! 今なら)


「彷徨える魂よ、我が声に答えよ! 散弾蟻シェルショットアント」 


 放った弾丸はアリとなってメシアに当たった。 だがアリはそのまま地面へと落ちた。


「効かない!?」


 よくみると体の表面が透明になっている。


(なんだ!?)


石鷹ストーンホーク


 メシアの足元から大きな石のタカが生まれた。


「術も星幽石も使ってないのに!」


「私は星幽石でできている。 ゆえに核はいくらでも埋め込める」


 そういうとその手のひらから水晶を産み出した。


(これがメシアの能力、星幽石を集めるだけでディシーストを産み出せるのか!)


 タカはこちらに襲ってくる。


「くっ! 浅蜊盾クラムシールド鍬形刃スタックビートルナイフ


 ワシのくちばしを盾で防ぎ、ナイフで首を切る。


「ミーシャ!」


 ミーシャは動かずその場に立ち尽くしている。


 

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