~異世界に転移したのはいいんだけど、明らかにヤバい連中が多すぎる~ナーロッパなのに何でロケラン持ったテロリストが居るんだよ!
【垢バン大復活】ブラックナイト田村二世
異世界渡航
プロローグ 虜囚になるなら死んでやる!
東欧の新興小国ボスホートルーシは緩衝地帯として、旧ソビエトの中心国家であったロシア連邦による理不尽な統治を受けていた。不満が限界まで積もり堪忍袋の緒が切れた政府は完全独立を宣言し、それを阻止しようとするロシアとの間で戦争が幕を開けた。
開戦当初、各国の軍事専門家達が満場一致で一週間もあれば終戦すると予想していたが、ボスホートルーシは近隣諸国のウクライナやNATO加盟国のバルト三国から軍事物資の支援を受諾しており、ロシアという大国の正規軍相手に意外にも優位な戦いを築き上げていた。
しかし相手はかつてのナチスを破り、一時的ではあったがアメリカよりも上の立場に居座っていたあのロシアだ。ソビエト崩壊後の現在でもロシアは強大な軍事力と潤沢な資源を両手いっぱいに抱えていて、少しでも油断すればボスホートルーシが敗北しても不思議でない状況だ。
だが、ボスホートルーシの兵士や国民達は愛国心と団結力が強固で、信念も根幹から鍛え抜かれているため、自由を手に入れるまで祖国に尽くすとその胸に誓っていた。
◇
ボスホートルーシ、北部の森。
冷たい風が吹く中、未成年で国際法違反と分かりながら便衣兵の皮を被って戦う俺――セルゲイ・イヴァーノヴィチ・ベレンコは、自軍拠点の塹壕を抜け出し、奇襲を仕掛けて来たロシア軍の集団から息を切らして逃げていた。
襲撃はいきなりだった。臭くて不潔な塹壕で休んでいる時に砲撃されたのだ。さらに今日は多くの兵士が休暇で出払っているので、拠点を守り抜くのに十分な戦力がなかった。熟練の兵士達はあの場に残って戦闘を行っているが、今ではもう味方の銃声は聞こえない。皆殺しにされてしまったのだろう。
「タイミング考えろっての!」
ロシア兵が放つ鋭い銃弾に注意しながら、姿勢を低くして走る。
「うおっ、あっぶねーなおい」
鉛弾がヘルメットに命中し、軽い金属音を立てた。
身近な木に一旦身を寄せると、ヘルメットを脱いで外装の状態を確認してみた。側面が抉り削られている。ちょっとでもズレていたらと考えると、冷や汗が止まらない。
「追い付いてきたか」
追手のロシア兵がかなり迫って来ていたので、ヘルメットを被って首元の落下防止の紐を固く結び、また駆け出した。
走りつつ後ろを振り返るが、依然としてロシア兵は追って来ている。ソビエト時代の頃からそうだが、ロシア軍は良くも悪くも諦めない体質だ。これではまるでストーカーみたいだ。
どこかに避難できる安全な場所はないのかと駆け回っていると、鬱蒼とした森から一変、海のように広がる雄大な青空とその下にどこまで続くのかも分からない崖が現れた。
その景色はあまりにも優雅で戦場に居る事を一瞬忘れそうになったが、徐々に接近してくる足音を鼓膜で拾って現実に引き戻された。
映画のクリーチャーのように、ロシア兵が薄暗い森から次々と出現する。数はおよそ10人だ。
ロシア兵の集団は円陣を組みながらこちらへ進んで来る。それに合わせて自分も後退するが、すぐ後ろは崖だ。これ以上は逃れられない。
「チッ……」
舌打ちと足元の砂利が奈落の底へ落下していく音が微妙に響く。
周りには凶悪なロシア兵と、背後には恐怖を煽る深い谷。
与えられた選択肢は実質2択だ。
大人しく投降するか、あるいは飛び降りて死ぬかだ。両方が絶望的な選択肢なのは変わりないが、どちらの方がマシか思考を高速で張り巡らす。
ロシア兵に投降すれば命だけは助けてもらえるかもしれないが、その代わり死ぬまで強制労働を課せられるだろう。
ふと、昔にとある掲示板サイトでロシア兵に運悪く捕まった少年の画像を見た事を思い出す。その写真に写っていた少年は拷問を受けたのか全身が赤く腫れており、とても悍ましくて許せないものだった。
ロシアの兵士全員が悪人だとは思わないが、ロシア兵による戦争犯罪は実際に多く起きている。
つまりだ。
もしもここで降参してしまえば、俺もまた、あのサイトに載っていた少年の姿に変えられてしまう可能性が十分にあり得るのだ。
だったら、最も賢い選択はこれしかない――――そう、この世からの大胆な逃亡だ。
死に対する恐怖を縛り付け、覚悟を決める。
目前のロシア兵が捕えるためか自分の腕を掴んでこようとした寸前、祖国への思いを叫んだ。
「ボスホートルーシに栄光を!」
言い残す事は何もない。
地面を軽く蹴って、底へ落下していった。
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※この小説はフィクションであり、実在の国家や組織、人物とは一切関係ございません。また、特定の思想を支持、礼賛する意図もありません。
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