断罪された悪役令嬢、現代ファンタジー世界の最弱スライムに転生しましたわ！規格外の力でモンスターやアイテムを吸収して無限に成長していたら、いつのまにか探索者からは災厄なんて呼ばれて恐れられていますわ！？

第63話 次の挑戦者はもういらっしゃいませんの？

私は静かにその場に立ち、次なる挑戦者を待ちましたの。周囲の探索者たちは再び動きを止め、怯えた目で私を見つめておりますわ。ふふ、この恐怖に満ちた空間――なんて素敵な気分ですの。

探索者たちは完全に立ちすくんでおりましたわ。その様子を見ていると、私が与えた圧倒的な力の前に、彼らがどれほどの恐怖を抱いているかが手に取るように分かりますの。ふふ、なんて素敵な気分ですの。

（さて、この場で立ち尽くしているだけではつまらなくなってしまいますわね。誰か、もう少し楽しませてくださらなくて？）

私は軽く地面を踏み、周囲の探索者たちの注意を引きましたの。その音だけで彼らの体が震え、無言の威圧感に包まれるのが分かりますわ。まるで羊の群れに狼が紛れ込んだかのような光景ですわね。

「だ、誰か……次、出ろよ！」

震える声で命令する探索者の一人。その声に応じるように、一人の中年の男が歩み出てまいりましたわ。手には巨大な盾を構え、重厚な鎧に身を包んだその姿は、一見して防御力に特化した戦士のようですわね。

（ほう、次は盾使いといったところですのね。防御がどれほど通じるか、試してみたくなるものですわ。）

彼の目には一切の怯えがなく、ただ強固な意志が宿っておりましたの。その目が私を捉えた瞬間、彼が低く呟きましたわ。

「ここで止める……！」

その言葉とともに、彼の盾が輝きを放ちましたの。魔力が盾全体に行き渡り、まるで輝く壁が出現したかのような壮観な光景ですわ。

「絶壁守護！」

彼が叫び、盾を前に構えると、地面が大きく振動し、周囲に無数の魔力の壁が現れましたの。

（ふふ、壮観な防御陣ですわね。でも、その堅牢さがどれほどのものか……試して差し上げますわ。）

私は軽やかにその場から前進し、彼の盾に向かって歩を進めましたの。彼の表情には動揺はなく、その構えには隙が見当たりませんわ。ですが、それが私に通じるとは限りませんわよ。

私が一歩ずつ歩を進めるたびに、彼の盾の輝きがさらに強さを増していきますの。周囲に立つ探索者たちは、彼の構えを信じるように見つめ、その背に希望を託しているかのようでしたわ。ふふ、それがどれほど無意味か、これから教えて差し上げますのよ。

「……来い！」

彼の静かな一言が、場の緊張をさらに高めましたの。私もまた、その言葉に応じるように、歩を止めましたわ。軽く手を振りかざし、周囲の魔力を感じ取りながら、彼の盾へと一歩近づきましたの。

「……っ！」

彼の盾が青白い光を放ち、一瞬の閃光が私を包み込もうとしましたの。でも、その程度の威嚇に怯む私ではありませんことよ。私はその輝きを軽く手で払うと、その魔力の波動が空気中に消えていくのを感じましたの。

「なっ……！」

彼の動揺が、その表情に浮かんでおりましたわ。盾の魔力が消えたことで、彼の構えに一瞬の隙が生じましたの。それを私は見逃しませんでしたわ。

（あら、簡単に崩れてしまいましたわね。もう少し堪えてくださると思いましたけれど。）

私は彼の目の前まで軽やかに近づき、その盾に手を触れましたの。その瞬間、吸収の力が発動し、彼の盾がみるみるうちに輝きを失い、私の中へと取り込まれていきますわ。

「ぐ、ぐあっ！」

彼が膝をつき、地面に手をつきましたの。周囲の探索者たちが一斉に声を失い、その場の空気が凍りつきましたわ。ふふ、まさに完璧な勝利というものですわね。

（これで終わりかしら？それとも、まだ続けますの？）

心の中でそう呟きながら、私は次の挑戦者を待ちましたの。でも、誰も動こうとはしませんわね。その怯えた目で見つめられるのも悪くありませんけれど、少し物足りないですわ。

探索者たちは完全に動けなくなり、その場に固まったまま私を見つめておりますわ。ふふ、これほどまでに恐怖を与えるとは、私の存在も罪深いものですわね。

（それにしても、盾すら私に通じないとなると、次はどのような手段で挑んでくるのかしら？もっとも、どれも無駄でしょうけれど。）

周囲の静寂を破るように、一人の探索者が重い足取りで前に進み出ましたの。その男は、丈の長いローブを纏い、杖を手にしていますわね。魔術師、といったところかしら？

「ここまでか……だが、俺が全力で食い止める！」

彼の声には覚悟が宿っておりましたわ。その姿勢は見る者に確固たる意志を伝え、周囲の探索者たちの心にわずかな希望を灯したようでしたの。でも、それがどれほどの意味を持つのかしら？

「爆裂炎華！」

彼の杖から放たれた炎の球が、轟音とともにこちらへ向かってまいりましたの。その熱気が肌に触れる前に、私は軽やかに身体を捻り、その軌道を見極めましたの。

（まあ、派手なだけの攻撃ですわね。避ける価値があるかどうかも怪しいところですわ。）

炎の球は私の背後を通り過ぎ、地面に激突すると、辺り一帯を灼熱の炎で包み込みましたの。周囲の探索者たちが一斉に悲鳴を上げる中、私はその中心に立ち尽くし、無傷のまま彼を見つめましたわ。

「な、なんてことだ……！」

彼の顔が蒼白になり、その目が震えておりますの。ふふ、やはり彼も私の力を理解したようですわね。

「まだまだ！」

彼は震える手で再び杖を振り上げ、次々と魔術を放ちましたの。その一撃一撃が地を裂き、空を焦がすほどの威力を持っているようでしたけれど、それでも私には届きませんの。

「絶氷の刃！」

「雷神の怒り！」

叫びとともに放たれる魔術の数々。それらが次々と私を狙いますけれど、その全てを私は優雅に回避しましたの。そして、彼の魔力が尽きかけたその瞬間、私は一歩前に出ましたの。

（ここで終わりですわ。）

心の中でそう呟きながら、私は手を軽く伸ばしましたの。彼の杖に指先が触れると同時に、吸収の力が発動しましたわ。その杖はみるみるうちに輝きを失い、私の中へと取り込まれていきますの。

「嘘だ……こんなことが……！」

彼の声は完全に絶望に満ちておりましたわ。手から杖を奪われたその瞬間、彼の力は全て封じられたも同然ですわね。彼の膝が崩れ、その場に座り込む様子を私は冷ややかに見つめましたの。

（これでまた一つ、私の前に立ちはだかる壁が消えましたわね。次はどなたが挑戦なさるのかしら？まだまだ楽しませていただきたいですわ。）

私は周囲を見渡し、次の挑戦者を探しましたの。でも、誰一人として前に出てくる者はおりませんでしたわ。探索者たちは恐怖と絶望の表情を浮かべたまま、ただその場に立ち尽くしているだけですの。

（まあ、それも無理はありませんわね。これだけの力の差を見せつけられては、戦う気力も失せるものですわ。）

私はその場で静かに佇み、次なる展開を待ちましたの。その間、心の中ではまだ何かが起きるのではないかという期待感が湧いておりましたわ。

そして、しばらくして――

「……撤退だ。これ以上は無理だ。」

探索者たちの中から誰かが呟くように言いましたの。その言葉が合図となり、全員がゆっくりと後退を始めましたわ。ふふ、勝利というものはやはり甘美なものですわね。この瞬間の快感こそ、私がこの場に立つ理由の一つですわ。

（まあ、次の戦場が訪れるまでは、少しばかり退屈を楽しむといたしますわ。）

私はその場に立ち尽くし、撤退していく探索者たちの背中を見送りましたの。その姿はまるで、敗北を悟った軍勢そのものでしたわ。

（……次の挑戦者はもういらっしゃいませんの？）

私は周囲の静寂を楽しんでおりましたわ。探索者たちは一人、また一人と後退し、ついにはその場から姿を消しましたの。ふふ、これほどまでに一方的な勝利を味わうのも、悪くありませんわね。

（さて、このセーフティエリアもそろそろ静まり返りましたわね。これだけの戦力を投じておきながら、結局私には何もできなかったのですもの。戦士としての矜持というものがあるなら、もっと工夫を凝らしていただきたかったものですわ。）

私はその場で軽く息を整え、再びエリアの奥を見渡しましたの。この広大な空間には、まだ未知の何かが潜んでいる予感がしてなりませんの。ですが、今はこの勝利の余韻を楽しむといたしましょう。

（ふふ、これからどのような展開が待ち受けているのかしら？この世界には、まだ私の知らない興味深いことが山ほどあるようですわね。）

私は静かにその場を後にし、新たな冒険の準備を整えることにしましたの。探索者たちがいなくなった後のセーフティエリアは、まるで私だけの特別な領域のようでしたわ。

（さて、次の一手を考える時間ですわね。この世界で私が頂点に立つ日も、そう遠くはありませんわ。）