ロマンス詐欺と戦ってみた(2日でゴング)良い子は真似るな

岩田へいきち

第1話 押しちゃったよ

 し、しまった。

押しちゃったよ。俺は可愛い女の子に釣られて、インサムのフォローボタンをタッチしてしまった。まあ、いいかっ。


◇ ◆



『おはようございます!私はCacaです。フォローしていただきありがとうございます。横浜で自分の服飾デザインスタジオを運営しています。新しい友達に出会えてとても嬉しいです。これから交流できることを楽しみにしています!おしゃべりは、知らなかったことを学んだり、仕事のストレスを解消したりできるので、とても大切ですよね。これからどうぞよろしくお願いします!😊✨』



来ちゃったよー、どうすんだよ? こんなん、話しするだけでもやばいんじゃない?



ーーこの子のお店の中と思える所で着物姿の清楚な女性の画像とアドレスーー



『あなたのメッセージを楽しみにしています💕』



知らんぷりしとこう。



◇◆



『既読スルーは悲しいかな😁』


『横浜に友達がいるのは悪くないですよね?機会があれば横浜に来て、一緒にご飯を食べましょう』


ーー自分のお店がある辺りの道路に横付けしたトラックの画像とアルファベットで書いた横浜の住所ーー


『こちらが私のスタジオの住所です。』



なんだよ、これ? 本格的詐欺?

俺は、仲間の数人に『こんなん来ちゃったよ』と送ってみた。その中のひとりが『乗って報告してください』と。そんな横浜まで行く金あるわけないじゃん。



恐るおそる返信

「なんとも甘い誘いのお言葉✨🤭 憧れますね〜

でも横浜まで行くお金と時間が全くありません。貧乏なんです!」



返事しちゃったよ。もうこうなったらこの綺麗な女性との会話楽しんでみるか。詐欺の手口も興味ある。横浜まではどうせ行けないし、おじさん相手かもしれないけどオンラインでからかってみよう。



『仕事はしていないのですか?男が貧乏でも怖くはありません、努力すればいいだけです💪。努力するだけでなく、正しい方向を見つけることも大切ですよ』


『大学を卒業したとき、毎月の給料はたったの20万円でした。この数年間、仕事のために恋愛する時間もなかったんです』



なんだよ、こいつ、俺にとっちゃ、20万円は大金だよ。



「凄い💦たったの20万円なんだ💦」



『大学卒業のとき、インターンシップの給料は高いのでしょうか?』


『あなたがそう言うと、自分がとても貧乏だと言っているのは少し矛盾しているように感じますね。😅』



「いや、反対です。僕らにとって給料20万円は大金です💦

たったとかいえない」



『あなたは少しユーモアと皮肉を交えているんですね』



なんかAIっぽいなあ?



「たくさん喋ってますね💦ぼくの今の給料20万円アラウンドです」



『頑張ってくださいね、そうすれば退職後の生活が豊かになりますよ💪。私の母の友達は日本の年金をもらってタイで生活しているんですよ。彼は日本では生活できないと言っていました😅』



『あなたの家はどこですか?どんな仕事をしているのに、給料がこんなに低いのでしょうか?』



日本語間違えてるな。外国人か? 外国人のおじさん? 外国人のAI? なんだよそれ?



「最低賃金以内ですよ!あなたは、外国の方ですか?」

あっ、どこかか。

「九州です」



『両親はどちらも日本人なのに、どうして私は外国人になったのでしょうか?私は札幌で生まれ、韓国で勉強して、今は母と一緒に横浜に住んでいます。😁』


『九州は横浜から遠いですね、地震も多いのでしょうか?』


『年齢を教えてもらえますか?』



 それどころじゃない。俺は接待へ出かけなきゃ。もうギリギリだよ。



「出かけるのであとで」



『OK』







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