第19話 ドリルVS大自然が作り出した硬い岩盤
ハリーにドリルの実演をした2日後――。
私とハリーは馬車に乗って、例の硬い岩盤がある山へとやってきました。
本当はラボットさんも来たかったそうなのですが、ぎっくり腰をやってしまったそうで泣く泣く断念していました。
ラボットさんからはドリルのパワーを見せつけてこいと言われています。私、絶対にドリルで硬い岩盤を砕いてみせて、その下に眠る魔石の鉱脈へとたどり着きたいと思います。
王都を出てから、馬車を飛ばして1時間少々が経過したでしょうか。どうやら目的地へと着いたようです。
私はハリーにエスコートされて山の地面へと降り立ちました。
正面の山と山の間からふわっと優しい風が吹いてきました。私の自慢のくるくる縦ロールの髪が揺れ、前髪が持ち上がりました。
「クルリーナ、こんなに遠くまで来てくれてありがとう」
「いえ、私、王都から出る機会があまりなくて。新鮮な旅でしたわ」
周囲を見てみます。ここは山の中腹の手前あたりでしょうか。木々はなく、短い草がたくさん生えている場所のようです。
爽やかで優しい風の通り道のようで、ここでピクニックをしたら気持ちがいいかもしれませんね。
「クルリーナ、見てくれるかい。すぐそこが、この間ビッグバン家に爆破してもらった場所だね。見ての通り、傷一つつかなくて困っていたんだ」
円系で半径20メートルほど地面が剥き出しになっている場所がありました。そこがビッグバン家が爆破を実施した場所だそうです。
私たちはその場所へと移動しました。
立ってみると土の柔らかさは感じず、完全に岩の上を歩いている感覚になりました。
しゃがんでみて地面に触れてみると、まるで金属みたいに硬い岩がありました。中指を折り曲げて関節部分で叩いてみると、本当に金属みたいな重くて鈍い音が返ってきました。想像よりもだいぶ硬そうです。
「これ、自然にできた岩でしょうか?」
「そうらしいよ。大昔に噴火で溶岩が流れてきて固まって、そこに自然発生した魔力が長年染みこんでできた岩なんだそうだ」
「なるほど……。大自然の力って凄いですわね」
「その凄い力をクルリーナの発明が超えていくんだよ。俺は素晴らしいことだと思うよ」
「試してみましょうか。ドリルの性能を」
「そうだね。クルリーナ、俺がドリルの性能を試してみてもいいだろうか。このあいだドリルの実演をやってみたときから、もう一回使ってみたくてずっとうずうずしてしまって」
「もちろん構いませんわ」
そういえば前世の世界でも男性ってドリルが好きでしたね。こっちの世界でもそれは変わらないようです。
ハリーはうきうきしながらドリルを手に取ると、剥き出しの岩盤にドリルを立てました。
「ああ、わくわくするなぁ。ガリガリ掘れるのか、それともシュークリームみたいな柔らかさを感じながら掘れるのか」
「いざ尋常に勝負、ですわね」
「ドリルVS大自然が作り出した硬い岩盤だ。じゃあ、いくよ」
ドキドキしてきました。さすがにこの岩盤がビッグバン家の作り出した合金の板よりも硬いとは思えませんが。それでもやってみるまでは、掘れるか掘れないのか結果は分かりません。
はたして私が作り出したドリルは大自然が作り出した硬い岩盤に勝てるのか――。
今、ハリーがドリルに魔力を送り込みました。するとドリルが気持ちよくキュイーンと回転を始めます。
ドリルの先端部分が岩盤に当たり、勝負を始めました。
ドリルの回転が生み出すパワーが勝つのか、はたまた硬い岩盤が勝つのか――。
ハラハラ、ドキドキ――。その結果は――。
「うわっ、やったよ! クルリーナ!」
「ええ、やりましたわね!」
ガガガガガガガッ、と工事現場のような音を立てながら、ドリルが硬い岩盤を掘り進めていきます。
ハリーがとても安堵しているようです。
「よかった……。ああ、本当によかった……。これで岩盤の下に眠る魔石を取り出せそうだよ。肩の荷が下りた気分だ」
ドリルがどんどん下へ下へと掘り進んでいきます。
ただ、ちょっと問題点が……。岩盤の性質の問題なのか、あまり綺麗に掘れていません。
ドリルが下に進むたびに、周辺の岩盤に亀裂が入ったり、岩盤の破片がピュンと凄いスピードで弾け飛んだり……。その破片に当たったらちょっと痛そうです。
「うはははははっ。楽しいなぁ、これ!」
「ちょっ、あのっ、痛っ。破片が飛び散って……。ねえ、ハリー、今日ってどこまで掘り進めるつもりですの?」
「いけるところまでいってみたいねっ」
ハリーはニッコニコです。これはしばらく夢中で掘りまくってしまうかもしれません。
ドガガガガガガガッ、と前世の工事現場で聞くような音が鳴り響きます。ドリルは元気に回っているようですね。
ハリーはある程度掘り進めると、砕けた岩盤の破片をぽいぽいっと捨てて掃除をしました。そして、さらにまた下へ下へと掘り進めていきます。
「楽しそうですこと……」
私は楽しそうにドリルを使うハリーを眺めていることにしました。
雪のハリネズミのきみ……なんて呼ばれているハリーはどこにもいなくて、砂場でスコップを持ってはしゃぐ少年のような男性がいるようにしか私には見えませんでした。
そんなはしゃいでいるハリーを見るのは少し楽しかったです。
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