たった一人の現実ダンジョンテストプレイヤー

ふにえる

第一話 選ばれし、ただの高校生

「じゃあまた明日ね~」

「ういよー」


 他愛のない会話のあと、友達と別れて、それぞれ帰路につく。


 俺の名前は志木煌河しきこうご

 平均よりちょっとだけ上くらいの高校に通っている、なんてことのない高校一年生だ。


 今日も今日とて、刺激もない日常を終えて、見慣れた帰り道を歩いていく。


 十月中旬の金曜、あと少しでハロウィン。街はどこか浮かれ気味で、繁華街なんかはもうすでにハロウィンムード一色だった。

 紅葉が始まった街路樹の下、冷たい風が頬を突き刺す。手をこすりながら、足早に家を目指す。


「ただいま~」


 うちは母子家庭で、母さんは夜遅くまで仕事。話すのは一日数回あるかないか。

 貧乏ってわけじゃないけど、子ども三人を養うには、それなりに働かなきゃならないのだろう。


 中三の妹と中一の弟がいるが、妹は受験勉強、弟は部活で、俺より帰りは遅い。

 俺はバイトもしてるけど、今日はシフトが入ってないからゆっくりできる日だ。……まぁ、ゆっくりできた記憶なんてあんまりないけど。


 弁当箱を洗い終え、リビングの床にごろんと座って、テレビのスイッチを入れる。

 内容なんてろくに頭に入ってこないけど、音がないと落ち着かないんだよな。


 三十分ほどして、玄関の開く音。

 だけど「ただいま」の声は聞こえない。妹の機嫌が悪いときはだいたい無言だ。

 晩飯で好物でも出せば機嫌も治る。そんな単純な子だ。


 さらに十分後、弟が帰ってくる。


「ただいま~、兄ちゃん!」

「おかえり。今日は冷蔵庫にあったひき肉でハンバーグ作るから、手伝ってくれ」

「わかった、ちょっと待ってて!」


 弟の名前は志木大輝しきたいき。活発で、運動が得意なタイプ。

 妹とは正反対だけど、兄弟仲は悪くない。むしろ、うちの兄妹は割と仲がいいほうだと思う。

 妹も俺のことを慕ってくれてるし、兄としてはうれしい限りだ。


 ……って、感傷に浸ってる場合じゃない。

 俺は冷蔵庫からひき肉、玉ねぎ、パン粉、牛乳、おろしにんにくを取り出して、玉ねぎから切り始める。


「手洗ってきたよ。何すればいい?」

「じゃあ、ボウルにひき肉と調味料、入れてってくれ」


 兄弟で料理を進め、完成間近。

 大きな声で妹を呼び、大輝に皿とコップの準備を頼む。


 ハンバーグを焼き終え、ご飯をよそっていると、眉間にしわを寄せた妹が登場。


「今日は?」

「ハンバーグだよ」

「マジ!? やったー!」


 妹の名前は志木渚沙しきなぎさ。落ち着いた性格で、勉強のほうが得意なタイプ。

 大輝とは真逆だけど、まあそこがバランスいいのかもしれない。


 さっきまでの不機嫌も、ハンバーグ一発でご機嫌に。

 家族ならぬ兄弟三人で食卓を囲む。


「「「いただきます」」」


 賑やかに夕飯を終え、風呂も済ませ、俺は自室で一息つく。


「ふぅ、満足……」


 ベッドに寝転がり、スマホをチェック。

 SNSや広告の通知がいくつかあるけど、友達からのメッセージはナシ。期待した俺がバカだった。


 スマホを机に置いて、時計を確認。

 午後九時五十分。妙に中途半端な時間。


 ……もう寝ちまうか。

 明日早起きできたら、散歩でも行こう。


 そんなふうに考えて、その日は幕を閉じた。










『ダンジョン形成計画』


ダンジョン難易度の把握のため、

この世界より一名を選出し、テストプレイヤーとする。


……選出完了。


プレイヤーナンバー0:志木煌河しきこうご


ナンバー0に初期装備を支給。

ナンバー0に説明用ナレーターを支給。


準備完了。

これより【オペレーション0】を決行する。










「んぁ……朝か……」


 差し込む日差しに目を細めながら、のそりと体を起こす。

 目をこすりながらカーテンを開け、いつもの日常を確認するように外を眺めた、そのとき――


 目の前に、青く半透明のプレートが浮かび上がった。


『テストプレイヤーに選ばれました。

ダンジョンに挑む準備はできましたか?』


「……は?」


 理解が追いつかないまま、次の文章が自動的に表示される。


『あなたには、“未来”を背負っていただきます』




―――――――――――――


こんにちは、ふにえるです。

実はこの作品、一度書いて投稿したものの、自分の中で納得がいかず……思い切って削除しました。

でも、設定をじっくり練り直し、改めてリメイクすることにしました!


更新はゆっくりですが、少しでも「面白いかも」と感じていただけたら、ぜひ★や❤、コメントで応援していただけると嬉しいです。

それが何よりの励みになります。

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