11話 ダンジョン内での凄い面会
「んで(ボリボリ)、1週間経過(ボリボリ)した訳ですが(ボリボリ)」
【マスター、朝ご飯の時間で、小麦奉納の報酬であるキュウリから浅漬け出来たのが嬉しいのは分かりますが、ぼちぼち飽きません?】
「キュウリはご飯に合いすぎるし、浅漬けにもなると、箸休めになるからな。仕方ない、仕方ない」
食器を洗って、乾かし台に載せて乾かしつつ言う。あれから小麦の報酬として、キュウリその物が箱で置かれていた。いや、助かりますがね。お陰で、ディーのレシピを見つつ、様々なキュウリ料理が食卓に並ぶことになり、最終的に漬け物で保管が正解となった。まあ、好物だし、白飯のお供になるから助かるけどね。何気に塩っけって人間には必要だしな。
「ようやく落ち着いてきたし、隠蔽マントで隙を見て出るとして、当面はこのダンジョンで適度に探索しながら過ごす」
【おや?首都にはすぐ行かれないので?】
「どうせ、しばらくしたら絶対なんかある」
【デスヨネ】
例の首飾りがそうですよ!とばかりあるしね。廃棄するのも王女様に悪いし、捨てたのを悪用されても困る。金策になるものも稼ぎたいしね。小麦や野菜を奉納したら、早速向かう事にする。あ、今回もスマホはお留守番ね。地下1階ならともかく、地下3階以降だからね。
「これは、人が減ったというより、落ち着いたからかな?人があまり居なくなったな」
火炎の騎士が最後のオークを倒し、ドロップを集めて見落としが無いかを確認。観光ダンジョンとは言っても地下2階までが限度。ダンジョンである以上は地下3階からは命懸けである。まあ、英雄譚(笑)が話題を呼び、人が集まったんだろうが、その英雄(笑)が見つからないんで落ち着いたんだろうな。誰だろうな、その英雄?ハイ、私です。
「ドロップは・・・ヨシッ!と言いたいし、狙ってはいたが、どうなってんだ、コレ?」
ドロップは全て焼きチャーシューになっていた。いや、出来るかもと思ってやったけどさあ。この肉が地面にベチャッ!とならないように巻かれた笹の葉っぽいの何?ファンタジー世界か!ファンタジー世界やったわ!
「とりあえず、それが10個か。10体以上いたから確率ドロップかな?」
火炎の騎士にも手伝ってもらい、一先ずは玄関先に入れて積んでおく。そして、玄関を閉めて、扉が消えたのを確認してから探索を再開。隠蔽使ってるのに火炎の騎士が居るのはおかしいので、解除してカードに戻す。
「地下4階への階段か、この下なら下手な人おらんだろうし、潜りますかね」
先に広がる階段を見て、降りていく。まあ、絶対なんかあんだろうなあ。とは思っていたのだが、そこで自分は予想外の再会を果たす事になる。
「あ~、なるほど、それでか。自分が見てない時間帯に潜ったんだろうな、脇目も振らずに潜れば、可能かな?」
地下4階を降りた辺りにある、所謂セーフゾーンで軍隊がキャンプしていた。ああ、多分自分が籠ってる間に告知とかあったかも。ミスったな。何がって・・・
「何者だ!」
そら、ダンジョンでキャンプ且つ、軍隊且つ、警戒してるなら看破、あるいは感知持ち居るよねってなる。仕方ない。背中の紋章を叩き、勘で持ってきていた首飾りを見える位置に出しつつ、降参のポーズを取りながら出現する。その時、頭部の紋章を叩いて顔を隠蔽しておくのも忘れない。
「危害を加える気はない。かなり前からこのダンジョンに潜っていてね。この国の軍隊なら、首飾りが通用すると思うが?」
「確かに王家の宝石。第3継承者・・・・・・ちょっと待っててくれ」
あれ?通れると思ったんだけど、この展開は、まさか、ねえ?えええええ?
「まさかの再会とはね、今度も色々教えて頂けるのかな?英雄殿?」
「全くだ。自分の確認が迂闊だったとはいえ、早い再会だ。協力出来る点があれば協力しよう」
王子、もとい王女様との思った以上に早い再会だった、オウフ。しかも、なんか、本当に王子様っぽい護衛付きの方が2名。ワ、ワァ・・・・・・すっげー嫌な予感がするゾイ。
「ああ、なんとなく察してると思うけど、ボクの兄達さ」
「上から、下から?」
「本当に察しが早くて助かるよ。勿論、上からさ」
オウフ、またこういう展開ですかとしか言いようがない、上から、つまり、第一王子、第二王子様ですってよ、奥様。ゴフッと心の中で吐血しておく。
「胃が痛くなる話だ。初めまして、なんか英雄と呼ばれてる転生者だ。看破持ちの方は頭部を看破しないで頂けると助かる。シャイなんでね。名前その他は調べてるだろうから割愛させていただく」
まあねえ、王子様達ならその辺すでに調べてるというか調べてそうだし。王女様に薦められた椅子に座り、2人の王子とその護衛を見る。片や重装備の厳つい男、片や軽装だが賢そうな優男。どちらもその姿に対応した武官が付いているようだ。片方はグレートソードと思わしき大剣。片方はアレ、日本刀じゃね?なぐらい似てる柄が洋風のサーベル。
「第一王子ルーベンス・デイルだ。なるほど、転生者にして、カードテイマーに違いない。名はダイゴだったな」
厳つい男の方が語る。手に持ってる資料が調べたやつかな?隠さない、カードテイマーで見下げない辺り、色々分かってるって事か。
「同じく第二王子ロベルト・デイル。初めまして、ドラゴンを討伐せし英雄殿」
優男の方が第二なのか、思ってたのとは逆だね。こちらも嫌味な感じはしない。そして、第二王子の隣の席に王女様が座る。
「それで、呼ばれたのは?ただ会うだけではなさそうだが?」
「うむ、先ずはこの割符を受け取って頂きたいというか、受け取ってくれないか?」
おん?王女様からなんか、鉄で出来た割符を渡される。鑑定で念の為調べるが、何かが付与されてると言う訳ではない、マジでただの割符っぽい?
「何か依頼を受けた覚えはないが?あのドラゴンもダンジョンに入るのに邪魔だっただけなんだが。すでにアレの討伐報酬に滅多に出ないカードパックを貰ってる訳だしな」
しばし、場がしんと静まる。しばらくすると、第一、第二王子様が爆笑し始める。王女様に至ってはヤレヤレとされる、解せぬ。
「ふーっ、ふーっ。いきなり笑ってすまない、弟に聞いた通りだな。欲が無い」
「ええ、兄上。これは欲が無いというより、素で気づいておりませんぞ」
「何か?」
「うむ、先ずはあのドラゴン、そして、起こり得るはずがないダンジョン・モンスター・スタンピードを説明させて頂く」
と、第二王子に言われて、説明を受け、頭を抱える。おおう、なんてこったい。そりゃ、カードテイマーでも英雄扱いだわ。納得だわ。あのドラゴンはエンシェント級、宮廷の魔術師達が感知した下手をすれば街をいくつも破壊する、下手すれば首都に迫り大破壊が出来るドラゴンクラスであった事。そして、この世界には無いといわれていたが例外とされる神話時代以来のスタンピードの発生。それを阻止したとなれば、カードパックで報酬とかボッタクリ過ぎである。加えて・・・
「例のドラゴン素材を全て無償譲渡はやり過ぎだよ、英雄殿」
王女様に苦笑される始末である。アッハイ、デスヨネとしか言いようがない。それが1週間近く行方不明でしたは無いわ。偶然でも会えたらコレ渡すわ。しかも、モンスタースタンピードの放置ドロップアイテムがギルド有志が拾って、その報酬が自分宛に保管されてるらしい、ワオ。え?おいくらになるの、コレ????
「自分はカードテイマーであるからな。パック以外は後は全部面倒なんだが?」
『いや、それでも放置しすぎ、国が貰いすぎ。国家が栄誉市民賞与えるに値する出来事だぞ?(よ?)』
国の王子3人から一斉にツッコミを受けてしまった。デスヨネー。ああ、そう言えば?
「自分で言うのもなんだが、国の重鎮、しかも、王位継承者上位3人に加えて、兵士が観光ダンジョンで訓練なのか?」
「いや、訓練をする意味もあるが、実際は大戦力での調査だ。神話以来の出来事だからな」
ああ、今までは神話でしか聞いた事無かった出来事で、それが解決したとか俄かに信じられんよな。そら、調査するわ。
「こちらからも良いかな?君がマントを持っているのは周知済みだが、ここまでで君は見かけなかった、何故だい?」
王女様から質問される。そらなあ、軍隊と王族3人がやって来たのを知らないのにタイミング良く来たからな。そら、ダンジョン内に居たと思われるわな。うむぅ、まあ、すでに色々調べられてるだろうし、切り札はまだまだあるしな。
「そこの第3王子様から聞いてはいると思うが、自分は女神ガーネット様の庇護を得ている」
スッと立ち上がると、護衛が警戒するが、王子様達が手で制してくれる。
「贈り物はマント以外にもう一つある。非常にこの世界に転移させられるに当たり、重要な物。それは簡単だ」
ぼそりと小さな声でセーフハウスの召喚ワードを呟く。こういうのも隠蔽の内に入るらしい。
『なっ?!』
まあ、そりゃ、驚くわな。テントと言うか天幕の内側に扉が出現すれば、そりゃあね。
「名付けて、マイハウス。女神ガーネット様自らから賜った転移前の生活と変わらん生活空間を作ってくれるレガシーアイテムだ。無論だが、自分が許可した相手以外は入れんし、簡単に入れるつもりはないぞ?」
『レガシーアイテム?!』
ホント、この3人息ぴったりだな。護衛さん達も驚きに目を剝いてる。例外も居るようだけどね。
「ああ、そうだ。ちょっと待っててくれ」
丁度思い出したので、例の火炎突進の魔石をタッパーから取り出し、ディーにも軽く説明してから麻袋に入れて持ち出す。
「こちらドロップアイテムの魔石なのだが、自分には使い道が無いのでな、譲ろう」
『ファッ?!』
扉を閉めて消えたのを確認して、麻袋を机の上に置き、中身をぶちまけると、今度は例外さんである司祭の女性も含めて、全員が驚く。まあ、地道に貯めてたからな。
「もっとも、火炎突進の魔石と呼ばれるらしいからな、使い道は鑑定で調べるなりして考えてくれ」
「いやいやいや、英雄殿?!どんだけ狩ったの?!火炎突進と言うモノ自体聞いた事無いのだが?!」
「自分がカードを登録した村の近くの辺境ダンジョンのブルバッファローの肉が欲しくてね。肉が集まった頃に特殊な倒し方をしただけさ。作業については秘密とさせてもらう」
全員から何言ってんだこいつ?な顔をされるが、知らんがなと言いたい。まあ、丁度良いので処分でもある。と言うか、ある事からも目を離させる意味合いもある。
「まあ、国民栄誉賞もいらない、ドラゴンに関してはこの国に住まわせてもらってる感謝の証と思えばいい。そうさな、もうしばらくはダンジョンに籠るが、報酬は首都のギルドで受け取るとしようか。第3王子様は意味がお分かりになるよな?」
「まあね。信用出来ない奴のとこに密偵置かない訳ないじゃん。まさか、バレてないと思ってたとは予想外だったけど。ゲッシュも付けておけばよかったね、アレはミスだった」
「ああ、珍しくお前が申請した件だったな。いや、まさか、王族の誓約をギルドマスターの地位の者が破るとはなあ・・・」
「もう、ギルドマスターどころかどこにも着けなくなりましたけどね」
うわあ、ここで初めて知ったのだが、あの場の誓約は真面目に王族が絶対ばらすなよ?変な事すんなよ?という契約が交わされた事になってて、んで、それをギルマスは知ってながら自分の確保に動いた事で破ったと。んで、首都に強制召喚の上で地位剥奪、そして、ズンバラリンされたという。残当。
「ある意味では平和になったって事か?と言うか、アレ普通に誓約違反だったのか」
「あの後、僕たちはスタンピードの件で父上に緊急召集を受けて急いで帰還したからね。それで、バレないと思ったんだろうね。ゲッシュのアイテムも使わなかったのはミスだった、すまない」
「いや、構わない。それですっきりした所もある。なにせ、いきなりの指名手配並の探しっぷりだったからな」
まあ、もうマジで2度と会わんから切り替えよう。あ、そうだ!
「ドラゴンとギルドの褒章は後日ギルドで受け取る、その際までにこの魔石の褒章の代わりに調べて欲しい情報がある」
「ほう、なんだね?」
「こちらの日付2001年、◎月〇日、神戸から大阪行きのバスに乗っていたという転移者が居たら、所在を調べて教えてもらいたい」
これはちょっとした確認がしたいからだ。あの転移の日にガーネット様とも話し合い、調べる事にした事でもある。
「理由は?如何に英雄殿とは言えど、調査理由が無ければプライベートであり、トラウマにも刺激する案件は簡単にハイとは言えない」
第2王子さんが言う。まあ、女神様との事や褒章でって訳にもいかないのは御尤もだ。
「そうだな、俺は召喚された、それは聞いたと思う。しかし、その召喚から零れ落ちたのを救われ、女神様と相対した。それも第3王子様に話し済みで、共有もされていると思う」
王子様達全員が頷いたのを見て続ける。
「だが、話す内に一つだけ腑に落ちない点があった。それを調べる為さ」
「それは?」
「先ほど言ったバス。それは動く移動手段だ。後はお分かりになるか?」
ガタっと、第二王子と王女様、護衛が目を剥く。第一王子様はかろうじて平静を保ってはいるが内心驚きまくっているだろう。
「そういう事かね?」
第一王子さんの頬に汗が伝わる。護衛達も同様だ。
「ああ。俺、いや、俺達を召喚した奴は移動している物にすら召喚陣を置く事が出来る、あるいは・・・道路その物、いや、下手をすれば・・・街一つ分の人間を一斉に召喚した疑いがある」
ガタンッ!と椅子が3つ倒れ、護衛も顔が真っ青になる。これだけは絶対に調査すると決めた事だ。神殿・城が破壊された後も、そいつが巻き込まれて死んだか、そして、喚ばれた人間はどれぐらいいるか確認しないと、安心出来ないからな。
【その後の通信魔石通信報告】
『恐ろしい事だな。すぐに調べさせる。所在の確認だけで良いと先方は言ってるのだな?』
「はい、父上。このルーベンス、一生の不覚でございます」
『言うな。それを言ってはこの父も同じよ』
「やらねばなりませんか?」
『出来る事なら、英雄殿には内密に事を運ぶ』
「件の召喚士に心当たりが?」
『ある。そして、そ奴が生きてる場合、仕留める心当たりもな』
「御意。しかし、どうしますかね?」
『褒章なあ。金は素材代金で困らんだろうし。領地欲しがるタイプでも無かろう?ましてや、聞いたことも無い素材も持ってるらしいからのう』
「パートナーも居ると聞いておりますし、今の所、マイハウスに他の人は入れる気が無いとも聞いております」
『ふむぅ?』
「が、彼はカードテイマー。アレはいかがでしょうか?ほら、父上が母上に本気折檻受けて、倉庫に入れざるを得なかったアレです」
『お主、マジで記憶から消したい事を覚えとるの。ふむ、分かった。それを出しておこう。お主から王城に来るように言っておいてくれ。ああ、それとな?』
「なんでしょう?」
『例の首謀者らしきのが心当たりあるといったじゃろう?』
「ええ」
『元々交流が少なかったのもあるが、かなり前から交流が無い』
「交流少なければ当たり前では?」
『そう思っておったが、思わぬ報告を英雄殿に渡すことになるかもしれんぞ。期間はいつでも良い。絶対に王城に一度は来てもらうのじゃぞ?』
「は、はあ?」
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