8話 不穏な宿場街からの脱出と不穏な雰囲気

「さて、どうするかね」


【王子、もとい推定王子と言う事になっている王女様からある程度の権力を貰えたのは僥倖ですね】


「口約束で無ければね。後、自称司祭が動いてれば、まあ、確実だろうよ」


【と言いますと?】


今日も白米が美味い!あの後、路地裏でハウスにマントを収めて、こっそり外に出てお肉の味付け用の塩やら色々買ってきた甲斐があるなと思いつつ、話を続ける。


「アレ、王族関係者、もしくはそれに近しい者だろうなって」


【その心は?】


ご飯を胃に流し込むのに水を流し込んで一息。


「あの会談で唯一と言って良いほどだったからさ。驚きはしてはいたがね、時にあの王女様の肩を叩いたりしてたからな」


【なるほど、そうなると、口約束ではありませんが・・・】


まあねえ。ディーの言いたい事は分かる。現在、セーフハウスを発動してるの、何処だと思う?宿場街の内部の路地裏に面する外壁である。そこから覗き穴を覗くと、明らかに場違いなジョブ持ちがこんなとこ入って何の用なの?と衛兵に問われてもおかしくないぐらいに何かを探している。まあ、その探し物もとい、はまあ、自分なんだろうけどね。命じたのはあの王子と言うか王女様じゃなく、ギルマスだろうね。なんで分かるって?ギルドの受付で見た作業してた人達とかも見るもん。丁度、覗き穴の正面に見える店、昨日寄った調味料販売してる店だし。多分そっちから、この裏路地に入ったって証言あったんだろうな。


「まあ、大体目的何か分かるけど」


【ですねえ】


ご飯を食べ終えたので、茶碗やお皿を洗いつつ、ディーと会話する。まあ、目的は魔石もしくは、自分が持つアイテム、酷いレベルになると、王女様から貰った首飾りまで全部かな?あの王女様御一行は首都に戻ったかもしれんね、こりゃ。


「火炎突撃の魔石あげて、ギルドが販売した大怪我の原因とかにしてやろうか」


【それはそれで、難癖付けてきそうですね】


デスヨネー。これだから、変な野望とか持つ系の人物は嫌いなんだよ。そんな人ばっかじゃないのはあのかなりのお人好し王女様見れば分かるけどさあ。


「人が居なくなり次第行動起こすかね。念の為、アクアスプライトを召喚、重ねて召喚、サンダースプライト!出でよ、水雷精!」


『シャーッ!』


水の体を持ち、電撃を纏うフェアリーが召喚される。マントの中に入ってもらい、護衛として連れて行く事にする。マントの背を叩き、隠蔽を発動、スマホは荒事が起きたら困るのでお留守番である。


「よし、行ってくる」


【では、予定通りに?】


「ああ、首都を目指す」


そう言って、覗き穴から見て人が居なくなったのを確認し、外に出る。人ごみに紛れて、とっとと脱出しますかね。




「ええええ?」


「シャアン・・・」


いやあ、看破とかその辺のスキル持ちに止められるかな?と思ったんだけど、宿場街だけに朝出て行く人の多い事もあるが、めっちゃ警戒してた自分は勿論、水雷精も呆れるほどあっさり出れてしまったのである。もしかして、向こうは夜の闇に紛れてと思ってたとか、だから、今はギルドメンバーの中でそういう能力の者や強い奴は休ませてるとか、そんな訳ないか!HAHAHA!当たってたら、自分まるっきり、物語の黒幕か暗殺者枠に見られてるって事じゃん・・・


「さてと・・・」


隠蔽を維持したまま、街道を歩く。ハウス内で見た周辺地図を信じるなら、この街道真っ直ぐで大体2~3日の道のりらしい。コレ、馬車がある場合に限るとかじゃないよな?


(まあ、のんびり行くとしよう・・・うん?)


そう言えば、思い出したが、この街道の途中、1時間ほど歩いた先にダンジョンに行く分かれ道があったはずだ。首都だと、あのギルマスと鉢合わせになる可能性が低くもないから、そっちに向かってみるか?いや、なんかだから、とっとと行こう。ちなみに、かなり後であの宿場街のギルマスが物理的にも解任されたと聞いた。まあ、色々やらかしたんやろうな・・・って。




【デイル王国首都 王城 謁見の間】


「父上、突然の召集って、兄上達まで?!しかも、全員?!」


「来たか、我が娘よ。これで全員じゃな。突然の召集すまぬ」


「いえ、奥の手のアレを使わせてまで全員を集めて、何が?」


「我が国内でワンダリング・モンスターの発生が確認された」


『なっ?!』


「最後に発生した時代、神話以来だが・・・来るぞ、ダンジョン・モンスター・スタンピードが」


「場所は?」


「皮肉も皮肉じゃ。観光ダンジョン、そう呼ばれた宿場街の近くのダンジョンじゃよ」

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