一日の始まり

 全員の朝食が済んだあと、おれたち四人は昨夜と同じようにテーブルを囲んだ。異なるのは各自の前に置かれた飲み物が、すべてコーヒーであることだ。我が家の電気ケトルももうしばらく生きながらえてくれそうな調子で、なによりである。


「じゃあ、今日のわたしたちの予定を説明するね」


 湯気の昇るカップを手に立つルナが、口火を切った。

 ピーコックグリーンのそでなしベストに白いショートパンツという恰好。昨夜あれからもひとりダイニングに残って計画を練っていた様子だったのに、はつらつとした顔つきには夜ふかしの名残はみじんも感じられない。起床が遅かったとはいえ、朝ごはんはいつもどおりもりもり食べたし、相変わらずのタフネスである。


「二手に別れ、昨日の蛇のタトゥーの男について情報を集める。まず、シェリファとザジが組んで、イーストビレッジのボイド氏を訪ねてほしい」


 シェリファが得心したように「ああ」とうなずく。おれとザジが顔を見合わせていると、すぐに種明かしがあった。


「ボイド氏は彫師なんだ。実はシェリファも前に世話になったことがあってね」

「ほら、わたしの右のお尻にバラのタトゥーが入ってるの、ふたりも知ってるでしょ?」


 確かに知っている。あまり本意ではないが。


「で、ルナたちはどうするの?」

「わたしとヒデトはハーレムの一三〇丁目に行くよ」


 今度はシェリファとザジのふたりとも心当たりがあるようだった。


「それって、もしかして魔女――」

「おっと、そこまで。いまは秘密ね」


 素早く突き出されたルナの手が、ザジの言葉をさえぎる。


「魔女……?」


 不穏な単語の登場に眉をひそめるおれに向かって、ルナは満面の笑顔を浮かべてみせる。どうやらまた、彼女の悪い癖が出たらしい。


「ヒデトには追々、わたしから説明するよ。ま、楽しみにしておいて」


 実に素敵な笑顔に、おれは不安しかない。

 ともあれ、座から異論もなく方針は決まった。新たな一日の仕事に備え、〈ボトルムーン〉のメンバーたちは動き始める。

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