最終章 能力者達の夏の過ごし方

第56話 運命の日

 とうとう運命の日だ。今は8月15日、日曜日の夜9時、4人でモノの家の最寄り駅に集合した。


「みんなちゃんと制服着て来たね」

「おう、持ち物に気がいってて、危なく私服で来るとこだったけどな」

 みんなは何を持ってきたのだろう?お互い牽制して、まだその話題には触れない。ミッケは相変わらずギターを背負っているが、手ブラだ……。

 それにしても、最近は私服で会ってたから、みんなの制服姿を見るのも久しぶりだな。この時間に制服で出歩くのはちょっと違和感があるけど。


 モノの家の場所は、事前に送ってもらった。駅から10分ぐらいの3階建ての一軒家だそうだ。

 4人でぞろぞろと歩いていくと、閑静な住宅街の中、一際立派な家に辿り着いた。

「うわっ、ここか!表札に『遠童』って書いてある。しかし、デカいな」チエが思わず声に出す。

 聞いた事は無かったが、モノの家は結構裕福な家庭のようだ。若干躊躇しつつ、チャイムを押すと、ドアを開けモノが顔を出す。

「いらっしゃい!お待ちしてました、どうぞ入ってください」

 モノもちゃんと制服着ているね。私達は門を通り、少し緊張しながら家に入る。他のみんなもちょっと硬いようだ。

「お、おじゃましま〜す」

「他に誰もいないから、気を使わないでいいですよ」

「そうだよね、ハハハ……え〜と、コーラとお菓子買ってきたよ」

 私の家に集まる時は、いつもみんなが買ってきてくれたので、今日は私が用意してきた。

「ありがとうございます。流星群が良く見える場所が良いと思って、今日は屋上にテーブルを用意しました」

「屋上!?屋上があるんだ!凄いね」

「いえ、そんな……では、こちらのエレベーターに乗ってください」

「エレベーター!?」

 3階建てだからエレベーターもあるのか。庶民の私には驚くことばかりだな。

 モノについてエレベーターに乗ると、一気に屋上に到着だ。

 エレベーターのドアが開く。周囲に高い建物は無く、見晴らしが良い。

「うわぁ、広いねー!」ミッケとチエは、端まで行って周囲を眺めている。

 屋上の中心にはアウトドア用のテーブルとイス、テーブルの上にはランタンとグラスが用意されている。

「へえ〜、いいねー、景色がいいし、風も気持ちがいい。初めからリルの家より、こっちが良かったね」

 はしゃいで戻ってきたチエが調子に乗って軽口を叩く。

「何言ってるんですか、何度も使わせてもらって。リルの部屋は適度な広さで、集中出来て良かったですよ」

 適度な広さ……モノのフォローが入るが、私もチエの言う通りかなと思ってしまった。まぁ、確かにここで話し合いは落ち着かないかもしれないけどね。


「あ、あのー、始める前にみんなに報告があるんだ」

 みんなが落ち着き始めたのを見計らったように、突然カノンが声を上げた。

 私達は改まったカノンの様子にとまどいながらもテーブルの周りに集まった。

「実はさ、昨日父さんの意識が戻ったんだ。病院行ってさ、大分たどたどしいけど、何とか会話も出来るんだよ。このままリハビリしていけば、歩けるようにもなるって……」

 カノンは涙ぐんでいる。

「凄いよカノン!おめでとう!」

 みんなが口々に祝福の言葉をかける。

 カノンは、みんなで集まってた時は、お父さんの事を気にしてるような素振りは見せなかったけど、やっぱり心配してたよね。私も心に引っ掛かってたんだ。本当に良かった。


「リル!」カノンが駆け寄ってくる。

「大丈夫なんだよな?もう、隕石なんて落ちてこないよな?オレは死にたくない、やっと家族一緒に進んでいけそうなんだ、まだ死にたくないよ」

 カノンは涙目のまま、私の手を握る。

「うん、大丈夫だよ、絶対大丈夫……」

 隕石なんて落としてたまるか。今から特別な事ができるわけじゃないけど、私は強く心に思った。

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