第7話 偉大なる魔法使い……?
「……大丈夫か?」
今も息絶えそうになりそうなボロボロな姿をした子供の声を掛ける。俺の存在に気づいたのか、そいつは目だけを動かす。
「……だれ?」
「通りすがりの通行人だよ」
「……そう、なんだ……食べ物、たくさん食べれる場所、あっちだから……この先、なにもないよ?」
「…そっか」
今のも自分の命が消えそうなのに律儀な子だな。感心しながらも、俺は今日の昼にでも食べようと思っていた木のみを目の前に置いた。
それを見た子供は俺の方に顔を向けて首を傾げている。
「教えてくれたお礼だ。それでも食べてくれ」
「……いいの?」
「あぁ、人を見捨てるほど俺は悪人じゃないからね」
……まぁ、善人かと言われたらどうだと思うが。
そんなことを思っていると、数十個はあるであろう木のみを自分の所に引き寄せて貪るように食い始める。
(……まぁここで離れてもいいけど)
俺はその場に座り込んで彼女が食い終わるのを待つ。しばらく腹にご飯を入れてなかったのか、あっという間に木のみは無くなり……数分には跡形もなく消えていった。
「……ふぅ。久しぶりに食事をした気がするのじゃ。感謝するぞ」
……実際に見て感じたんだが、性格変わりすぎやしないか?
いやまぁ彼女の体質を考えたら仕方ないだろうけど……そう思ってると、目の前にいる150にも満たない身長の彼女は俺のことをじっと見ている。
「……お主、不思議な奴なんだな」
「?何がだ??」
「普通の一般人なら、我の姿を見て嘲笑ったり馬鹿にしてくるのじゃが、そんなものがお主からは微塵も感じられん」
「あー……まぁ人それぞれだからな?人は中身だって言うし」
貴方のことを知っていたらなんて言うことが出来ないからね。
そう答えたのかがよかったのか、その幼女……のじゃロリとも言える彼女は気分がよさそうにしている。
「うむ。年配者を敬う姿勢やよし。気に入ったぞお主……えっと、名前は?」
「……カラだ。今は……世界を周っている」
本名を教えるわけにはいかず、偽名を彼女に伝える。
「カラだな。その名前、覚えたぞ。せっかくだ。我の名前も教えてやろう」
すると風が強く吹き荒れる。その影響で肩に掛かってあるマントが音を立ててなびき、強者の風格を感じさせられる。
「我の名はニーミャ・アルデバラート!偉大なる魔法の使い手にて、いずれこの世界の全魔法を極める者である!」
高々に宣言するその姿勢に改めて感心と……ほんのちょっとだけ不安が過ってしまった。
ニーミャ・アルデバラート。
テオが勇者パーティーから追放されてから仲間に加わった人物である。
アリシア以上に伸びている青髪は広大な海を思わせられ、引き摺り込まれそうな澄んだ青い瞳はアクアマリンやサファイアのような宝石と捉えてもおかしくない。
つまり何が言いたいかって……とんでもない美少女だってことだ。
「……今思ったんだが、さっきと性格全く違わないか?」
「うぐっ……い、いや腹を空かせたりすると……な?自分で言うのもなんだが、その……幼くなってしまうのじゃ」
……それが本来の性格なんじゃないのか?
だが、それは心の中で留めておく。これを本人の前に言ったらどうなるか……原作のテオはそのせいで相当時間を費やしたのだが。
「それよりカラよ。お主、世界を周っていると言ってたな?ということは冒険者をしてるのか?」
「……いや、冒険者に登録していない。事情があって10年くらい世間から離れててな。でも身分証明書の登録も兼ねてギルドに行こうと思ってるんだ」
「そうなのか?お主ほどの強さを持った者が冒険者でないのは少し意外であったな……ギルドに行くのなら我と一緒に行くか?」
……やっぱり俺の強さはこいつにはバレバレか。流石、偉大なる魔法使いって言うだけあるな。
そう思いながらも、俺は折角だから彼女と一緒に向かおうと思い、頷いた。
すると、ニーミャは嬉しそうにニコッと笑顔にさせてから、路地裏から出ようとして……ふぐっと情けない声を出して転んだ。
「………」
「……すまぬ。なにぶん、数ヶ月はご飯を食べていなかったせいか身体が動かんのだ……できれば背負って欲しいのだが……」
「………………分かった」
地味にこのやりとりも覚えており、小説を読んでいた時の懐かしさと彼女の鈍臭さに苦笑しながらも、彼女を背負っていく。
「こ、ここから真っ直ぐ行けばギルドに着くのだ……す、すまぬな」
「……死にそうになってないか?」
大丈夫なのか本当に……?少しニーミャのことを心配にしながらも、俺はギルドに向かうのだった。
◇
「……はい。登録完了しました。それとこちら、カラさんの身分証明書となります。お受け取りください」
「あぁ。ありがとう」
ギルドの受付嬢さんからギルドカードと身分証明書を受け取る。
ギルドカードには冒険者ランクという階級があり、これにより受けることのできる依頼や中には指名依頼という特殊な依頼も受けることができる。
最高ランクは……Sランクだったか?こいつらは勇者パーティーに匹敵すると言われており、とんでもない化け物パーティーだ。
だが、そんな中でもアリシア達は10年間勇者としての威厳と力を守ってきており、他の奴らと比べても次元が違うことは理解できた。因みに勇者パーティーと冒険者は明確な違いがあり、国直属が勇者パーティー、ギルド直属が冒険者となっている。
だから以前勇者パーティーとして入った俺は身分を隠す必要があるわけで……ギルドを通じて俺の素性がバレかねない。
でも、今思えばよくアリシアはあの時のテオを勇者パーティーに入れることができたよな……それだけ熱心に国に訴えかけたということか?
(……よし、冒険者の登録をした。身分証明書もゲットできた……なら、まずはこのモガの街から出て、あそこに向かう)
「……おい、あのチビがいるぜ」
すると、ひそひそと俺たちの方を見て他の冒険者であろう奴らが話している。
……いや、正確には。
(……そっか。こいつもこいつで苦しんでたんだったな)
俺は隣で気まずそうに視線を下に落としているニーミャの方を見たのだった。
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また、こちらの作品の方も見てくださると嬉しいです。
《全てを失う悲劇の悪役による未来改変》
https://kakuyomu.jp/works/16818093076995994125
《ギルドの看板受付嬢であるリリナさんは俺と話したい〜その割には俺にだけ冷たくないですか?〜》
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