第6号 雪の降る街を

 寒いですね。めちゃ寒いです。雪も降っています。藤光の住む兵庫県中部はめったに雪など降らない地域なのですが、はらはらと白い雪が舞っています。きれいですが、寒いです。止んでほしいです。


 エピソードタイトルにした『雪の降る街を』は歌の題名です。街に雪が降ってくる様子を見ていたらふと頭の中にこの歌の歌詞か浮かんできたのでした。


 雪の降る街を 雪の降る街を

 思い出だけが通り過ぎてゆく

 雪の降る街を

 遠い国から落ちてくる

 この思い出を この思い出を

 いつの日かつつまん

 温かき幸せのほほえみ


 ――というどこかもの寂しい歌詞ですが、これはわたしが小学生だった頃、学校の給食の時間(昼休み)に校内放送として流れていた曲です。


 現代の感覚からすると、小学生に聞かせるには渋すぎる&寂しすぎるような気もしますが、今回エッセイを書くにあたって調べたところ、どうもNHKみんなのうたで放送されていた(1960年代)ようで、70年代当時は子どものための歌と認識されていたのだと思います。


 この歌、わたしがとてもよく覚えているのには理由があって、そのときたまたま読んでいたH.G.ウェルズ『透明人間』の最後の場面、透明になって悪事を働いていた主人公が雪の中で生き絶える悲しく寂しい場面(子どもの頃の記憶なので実際はちがうかもしれません)と、シンクロして強烈な印象があるんです。


 当時小学生でしたが、物語やマンガに出てくる透明人間というキャラクターは、不思議ではあるもののポップでコミカルな存在として描かれることが多く(ピンク・レディーの楽曲にも「透明人間」ありましたね。その少し後くらいです『透明人間』を読んだのは)、ウェルズの『透明人間』に描かれるような「自分の得た知識を悪用する科学者」、「悪事の報いを受けて無惨な最期をとげる」存在とは思っていなかったので、


 ――ええっ、透明人間ってこんななの?


と衝撃を受けたことをよく覚えています。色素を失った男が雪の中で死んでいるラストシーンは、逆にイメージとして鮮やか過ぎて忘れられません。


 ウェルズのSF小説では、『宇宙戦争』や『タイムマシン』の方が有名なのかもしれませんが、『透明人間』も興味深い作品なので、見かけたら読んでみるのもいいかもしれません。雪の降る街を思い出しながら。

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