第13話 不可解な謎
指導室に戻り、ミルについて調べ始めた。
(ミル、、、どこかで聞いた記憶があるんだよなぁー。まあ、調べてみ、、、)
パソコンにタイピングしていた手が急に止まった。{ミル}と検索のワードに入れると、そのサジェストには追放者の文字が。
「追放者?、、、」
東日本のカイリですらこのワードは知っていた。
一番上のサイトをクリックし、つらつらと並ぶ文章を読み込む。
追放者。東日本が認定した能力犯罪者を指し、能力を使用可能区域の多い西日本から追放、東日本で能力の封印後、監視または監禁される。また、捕まっていない指名手配犯もそれに当てはまる。
あまりに物騒な文言が続き、言葉を失うカイリ。
「こんなのに狙われてるの、、、」
画面をスクロールし、歴代追放者一覧の中からミルの名前を探す。
下のページに行けば行くほど過去の追放者の記録が出てくる。が、ミルの記録は一向に出てきはしなかった。
(こんな昔に遡っても出てこない、、、このサイトには載ってないのかな)
そう考えこんでは次のサイトに行こうとしたとき、ついにその名前が顔を出した。
(あった。ミル、追放者になった日、不明)
詳細に調べる前からもうすでに多くの謎が渦巻いていたが、それらの不明点はたった一文で解決させられた。
カチカチッ
「原初の追放者・ミル、、、結晶人」
他の追放者にはあった顔や生年月日、過去の犯罪歴などの情報が何一つ載っていない異様なページ。それでも十分なほど結晶人という言葉には重みがあった。
(あの白衣を着た人が、、、ミル。結晶人。なんで僕が、、、)
ガチャ
急に扉が開き、沈黙を貫いていた指導室がどっと騒がしくなった。
「やっぱり水族館でしょ!かわいい魚がたくさん見れるんだよ!?」
「はあ?北陸と言ったら寺と博物館巡りだろ!なんで和風なお前が水族館なんだよ!」
(*'▽') 検索、北陸 美味しいもの
どうやら遠征に行った際の観光についてもめているみたいだ。これはカイリにとって日常茶飯事。よく起きることではあったが今回ばかりはいつも通りではいられなかった。
三人がソワソワしていたカイリ見つめる。
「どうしたんだカイリ?なんか落ち着いてねぇみたいだけど」
リオンがふとカイリのパソコンをのぞき込む。
「ん~?カイリ君も観光スポット調べてるの?、、、って、追放者一覧?」
「なんか堅苦しいサイト見てんなー。どうした?」
(*'▽') 検索、北陸 猫カフェ
険しい顔を隠せないカイリ。
「いや~、、、なんと説明すればいいか」
ユナの「”彼女”がどんな行動を誰に行うのか、少し経過をまとう。」という言葉が脳に焼き付くカイリ。もし、ミルがまた行動を起こせば大会どころではなくなる。しかし、大会を待ち遠しくしている三人。そして観客たちがいた。それゆえにあの事件についてどう説明すればよいか、カイリは頭を悩ませたのだ。
「え~と、、、その」
腕を組んだ朱莉がしびれを切らした。
「なんだよもう!言いたいことあったらさっさと言え!」
朱莉とは反対に寄り添うように質問してくるリオン
「なに~。こんなサイト調べて~なんかあったの?」
(*'▽') 検索、北陸 なんかいいとこ
厳しい視線と優しい視線に耐えられず、カイリは起きたことすべてを話した。
「実は、、、」
道端に死体があったというところまで話した。
「はあああ!?」
「それほんと?」
(゜o゜)
全員がカイリに顔を近づけた。
「いやいや、実はまだ続きがあって」
必死に両手を揺らし、みんなの誤解を解こうとする。
「その死体は偽物だったんだよ、、、」
三人は少し安心したように顔を遠ざける。
「なんで偽物ってわかったの?それに全然噂が立ってないように感じるけど?」
「ユナさんが教えてくれたんだ。あれは結晶体だって。それとその現場を見た人の記憶はユナさんが消してくれたらしい、、、」
改めて口にし、疑問点しか出てこないことに気づくカイリ。
その疑問を博識なリオンがあっさりと解決してくれた。
「結界を利用すれば人の脳すら干渉できるらしいからね~、それは納得。でも、、、結晶体って言った?なんでそんなものが?」
リオンの知識の深さに感謝しつつも、新たな謎が多々出てきた。
「そのー、結晶体?ってやつが何だか知らねえけど、誰がなんのためにやったんだよ」
カイリが黙り込んでいた時、リオンと遊里は再びパソコンのデスクの方向を向いた。
(-_-)
「、、、なるほど~。追放者のうち誰かが犯人なのか。確かにこのなかなら結晶体を作れる人だっているだろうね」
不機嫌な表情でリオンを見る朱莉。
「なんでそんな飲み込み速いんだよ!そもそも結晶体ってなんなんだ?」
「ほんとに何も知らないんだね朱莉は。結晶体は簡単に言えば結晶で作る人形。具現型でたまーに作れる人もいるけど、その難易度はとんでもないの。追放者は簡単に言えば能力を使った犯罪者」
「うわ、わかりやす」
リオンの的確でスピーディーな説明に感動する朱莉。それもつかの間、すぐに頭をぶんぶんと振り、カイリへの質問を続ける。
「それで!?このなかのどいつが犯人なんだ?」
ゆっくりとさっき開いていたページに戻す。リオンと遊里はもう嫌な雰囲気をつかんだらしい。
「さっき言った事件現場に、白い服を着て仮面を付けた人がいたんだ。そのことをユナさんに伝えたら、、、」
「ミルだったと」
さすがに空気を読んだのか朱莉がテンションを抑え発現する。
「そのミルってのはやばい奴なのか?なんも情報が載ってないけど」
リオンは眉間にしわを寄せ深刻そうに答えた。
「何百年も前から多くの事件を起こしてきた追放者。結晶人だよ」
ゆっくりとカイリを見つめる朱莉。
「結晶人に、、、狙われたのか?」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
後日、四人はユナのもとに尋ねようとしたが、あいにく今は出払っているらしい。
ハルからユナの伝言として、カイリ以外のトレーニングの許可は下りている、とのこと。
追放者らしき人が出没し、事件が起きたのにもかかわらず何も対策をしない点を疑問視しながら、四人はグラウンド上うえの広場でこれからのことについて話していた。
「さーて、どうしたものか~。さすがにユナさんの意見を聞かない限り、カイリ君をこの学園から出すわけにはいかないし、北陸の大会はキャンセルかな~」
(;_:) 検索、国セン近く 美味しいもの
「いやいや、僕のことはいいよ!三人なら大会に出られるでしょ?」
朱莉がそれを聞き怒ったように言った。
「指導者が事件に巻き込まれたんだぞ?相手は結晶人かもしんねえ!んなことできっかよ!それにオレらが危険じゃないとも言い切れないしな」
(;_:) 検索、国セン近く 猫カフェ
朱莉の言葉にも納得しつつ、申し訳ない気持ちでいっぱいになると、遊里の方向に顔を向ける。
ぷるぷる
腕を震わし涙を流しながらカイリの肩を励ますように持っていた。
ニャ~
反対の手に持ったスマホにはT〇kTokで猫の動画が。
感情を素直に表現してくれたおかげか、逆に気持ちの整理が済んだ。
「とりあえず、国セン内でできることをやろう。無事に何も起こらないことを願って」
全員が顔を見合わせ賛成する。
その後、カイリ以外は安全用の結界をつけ、トレーニングをしに外へと向かった。
「ん?」
誰もいないグラウンド、背後を振り向くカイリ。
(だれか見てた?)
顔を傾けつつも勘違いだと考え、指導室へと入っていった。
国センの上、屋根に立ち、カイリを見つめる結晶人。
「うまくいっているようだね」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます