『ウンメクリヒの三命題』

 夜闇の中、一つの灯が宙に浮く。

 燎火魔法の主は大図書館の扉を開き、2本の蝋燭が灯っているのを見た。

 スクエアテーブルに近づき、2人の先客に声を掛ける。


「眠れないの? 2人とも」

「はい。どうしても明日の作戦が不安でして」

「私はそもそも睡眠を取らないだけ」


 エーヴィヒは巫女の隣に座り、彼女たちの表情を見る。

 初老となったアイリスは祈るように手を組み、その顔は不安の影を落としていた。

 マリヴェレは変わりない。普段通りの真顔だ。


「そういえば、マリヴェレさんはどうして眠らないのですか?

 もし私の夜更かしに付き合わせてしまったのでしたら、すみません」

「私は半年眠らなくても問題ありません。

 一週間前に7時間の長期睡眠を取ったので、しばらくは眠る必要が無い」

「無理は止めなさい。明日は戦闘になるかもしれないわよ。

 クリフォトの魔物。それも、一筋縄とはいかない。

 最悪の場合、闇の神クリフォト本人と対面する可能性だってある」

「私は......」


 30年前の憂慮が、決戦前夜となって蘇る。

 マリヴェレは親友と巫女を見つめ、言った。


「私は、アーカーシャと戦えません」

「それは、実力不足という意味なのかしら?」

「いいえ。私は神への反乱を許されていない存在だからです」


 アイリスの顔に困惑の色が差す。

 エーヴィヒは漠然と察知していたが、真実を知らない。


「教えて、マリヴェレ」

「長くなるかもしれません」


 マリヴェレは魔法で3本目の蝋燭を灯し、話し始めた。

 この世界の創世について。



  ===



 ただ一点であった宇宙が膨張し、13の存在に分かれた。

 13アーカーシャの誕生。この創世神話には一つの嘘が混じっている。

 正確な表現をするのであれば、14の存在だ。


 ただし、14番目に誕生したのは矮小な存在だった。

 13の神たちとは比べるまでも無く、価値も立場もまるで違う。

 それでも、その矮小な者は確かに存在していた。


 鏡界を司る者。十三神の小間使い。

 "鏡の子"は神と共に誕生し、神の創世を見届けた。

 神々が大地を、生命を、宇宙を形作る中、世界の端で世界を覆う鏡を織っていた。


 鏡界の機織はたおり。"鏡の子"は鏡界を無から生み出したわけではない。

 十三神の創造物、即ち十三神の一部を結い合わせ、不器用ながらも世界の外套を編んだのだ。


「私は"鏡の子"の成れの果て。

 鏡界を司る者マリヴェレです」


 意識は神々と同様に摩耗し、もはや創世段階とは別の生命といえるだろう。

 世界の傍観者であり、十三神の使い。

 アルマやエーヴィヒとは住む世界が違う。


「だから戦えないの?」

「ええ。の闇の主は半神ながらも確かにアーカーシャの意志と神性を保有しておられます。

 私は闇の神クリフォト様を殺すどころか、傷つけることすらできないのです」

「それは、あなたの意志の問題?」

「......いえ、一種の呪縛のようなものです」


 マリヴェレは肩を降ろし、小さくため息を吐く。

 蝋燭の揺らぐ炎を見つめ、諦念を含んだ声を漏らした。


「情けない話です。

 私の失敗は30年前に課題を告げられたあの日から決まっていた。

 あなたやアルマと共に努力してきた日々も、意味のない藻掻きと相違ありません」


 失敗すると分かっていながら諦めきれなかった。

 方法を模索し、失敗し、絶望し、諦めた。

 どんな策を講じても、私の手は神々に届かない。


 最初から失敗が分かり切っている挑戦。

 アルマとエーヴィヒと共に過ごした日々は楽しかった。私の口調や性格も随分と変わっているらしい。

 彼女たちの心を知り、私の心を知り、初めて心の底から笑うことができた。


 そんな幸せも、失敗で終わってしまうのだ。

 仮にクリフォトが討伐されたとしても、私はその結果になんの影響も及ぼすことはできない。

 2人は喜ぶだろう。だが、私が心の底から喜ぶことはできない。


 私は何もできないのだから。


「そんなことはありません」


 唐突にアイリスがマリヴェレの手を握り、その目を覗き込んだ。

 年を重ねてもどこか幼さを感じる巫女の表情が真剣な色に染まる。


「マリヴェレさんは聖光の遠方伝達を実現して下さいました。

 それだけじゃない。アルマさんの投げた実証実験を代行したり、結界装置を改良したり、魔物の討伐に参加したり......

 あなたの意志が私たちに力をくれます。

 たとえ直接関与することができなくても、私たちはあなたのおかげでクリフォトを倒すことができるんです」


 この30年の成果は計り知れない。

 聖女を軸とした新入生三人組はかつてないほど聖術結界の精度を向上させ、闇の魔物の討伐に尽力した。

 誰が欠けたとしても、現状の成果は叶わなかった。


「例えば100人が巨人に斬りかかったとして、巨人殺しの称号は誰が貰い受けるのかしら?」


 エーヴィヒがマリヴェレに問う。

 正しい解釈とは何かを。


「絶命の一手を与えた者、でしょうか」

「ええ。民衆はそう捉えるでしょうね。

 けれど、その1人だけで巨人は倒せるかしら?」

「功績の観点から言えば、確かに私は一助の役を為していると言えるでしょう。

 しかし、現実には......」

「マリヴェレ、それって」


 親友はどこまでいっても親友だ。

 その繋がりを断ち切ることはできない。


「私がクリフォトを殺したら、アルマの努力は無駄だったって言いたいの?」

「!? いえ、そんなつもりは......」


 凝り固まった固定観念が崩れ去る感覚は、一面の澄んだ大海を臨む瞬間のように爽快だ。

 矛盾の無いように見える諦念の瓦解がマリヴェレの脳を貫いた。


「私たちは同じ道を歩く。

 別に死ぬタイミングが同じわけでも、同時に神を殺すわけでもない。

 私たちは対等な立場で同じ未来に向けて生を燃やしてきた。

 それが、あなたの活躍の証となる」


 アイリスとマリヴェレの握られた手を上から掴み、エーヴィヒは言う。

 覚悟と確信を込めた声で、はっきりと。


「種族も立場も寿命も関係ない。

 私たちは一緒に居続ける。

 これからも、いつまでも、死んだ後も」


 決戦前夜。日の変わる直前の深い夜。

 大図書館の中、蝋燭の灯るテーブル。


 マリヴェレの初めての涙が、その頬を静かに伝った。



  ===



 クリフォトの闇と聖術結界の境界。

 それは、天地の境界のような不鮮明なものでなく、湖面のように確固として二者を分かつ壁である。

 迫りくる闇を光が留めている形である。


 闇に潜む魔物の討伐に際し、130年に渡る戦跡の末に得たノウハウは数えきれない。

 数多あまたの心得の中、必定と呼ぶべき鉄則がある。

 "闇の中で孤立してはいけない"と。


 クリフォトの闇は光を奪うだけでない。

 "信仰心"、"理性"、"思考"、"感受性"、"倫理観"、"安定"を奪う。

 聖術を以て抵抗レジストしない限り、精神は摩耗し記憶や思考に影響が出る。


「マリヴェレ、アイリスちゃんの護衛頼んだよ!」

「作戦通りの行動を心掛けます。2人もお気をつけて。

 エーヴィヒにはアルマの世話を頼みます」

「ちょっ! なんで私が世話される側なの!?」


 当初の予定通り、聖術結界の装置2つを4人で設置する。

 4人全員が固まって行動することもできるが、その場合は設置場所の関係上長い距離を歩くこととなり、魔物との遭遇率が跳ね上がる。

 結果として2人組ずつに分かれることとなった。


 マリヴェレとアイリスのペア。

 マリヴェレはクリフォトへの直接的な攻撃ができないため、聖術に長けたアイリスが攻撃役を担う。

 同時に、マリヴェレは4人の中で最も強いため、巫女であるアイリスの護衛として最適だ。


 アルマとエーヴィヒのペア。

 マリヴェレに次ぐ戦闘能力を持つアルマが、戦闘慣れしていないエーヴィヒをカバーする。

 エルフであるエーヴィヒは、アイリスほどの絶対性は無いが聖術を使って闇を退けることができる。


 その他の人員は闇と聖術結界の境界で待機。

 聖術を完全に使い熟すことのできる者が限られている以上、闇に踏み入るのは少数精鋭に絞られる。


 危険な任務に見えるが、歴史を鑑みれば大したことは無い。

 狂気に陥りながら闇と戦った先人たちが無数に存在する中、今回は聖術使いが2人もいるのだ。

 滅多なことが無ければ死ぬことはない。


 そう。滅多なことが無ければ。


「作戦内容忘れて突っ走らないでね」

「誰が若年性認知症よ! まだピチピチの美少女だわ!」

「もうおばさんなんだから、若年性とかでもなんでもなくただの認知症でしょう?」

「おばっ......私がおばさんなら、あんたはおばあさんでしょうがッ!!」


 アルマとエーヴィヒは自分の杖を握り、軽口を言い合う。

 横に並んだ時、エーヴィヒは違和感を覚えた。

 アルマの背が昔よりも低い気がしたのだ。


「あなた、背が縮んだのね」

「そんなに変わらないと思うけど?」

「そう......ね」


 30年という時間の流れを感じ、一瞬の懐古に浸るエーヴィヒ。

 決戦前に緩んだ意識を振り払い、クリフォトの闇を見つめる。


「それじゃ、行きましょう」

「うん!」


 墨に染まった湖面へ浸かるように、2人は闇へ踏み込んだ。



  ★★★



「そういえば、マリヴェレさんはご自身のことを"鏡の子"の末裔とおっしゃっていましたが、クリフォトの闇の魔物は倒して問題無いのですか?」


 四方3m範囲の闇を聖術で押し退けつつ、アイリスがそう尋ねる。

 闇の魔物はクリフォトに属する存在である。

 帰属の主が不可侵対象なのであれば、と。当然の疑問が浮かんだ。


「クリフォト様は、13の"クリファ"から成る神です」

「クリファ?」

「光の源たる太陽を覆うクリファが、闇の半神の本質です。

 "暗闇"、"無神論"、"愚鈍"、"反感"、"無感動"、"残酷"、"醜悪"、"強欲"、"不安定"、"物質主義"、"強制"、"非難"、"威圧"。

 クリフォトという名前は、クリファの複数形です」


 計13の概念は世界の各所であらゆる形を以て存在している。

 物体や現象、魔物の状態であるクリファのうち、ただ1つは人型。

 その1つこそがクリフォトの神性と意志の塊である。


「クリフォト様は13の概念を行き来することができるため、クリファが存在する限り不滅の神性をお持ちです。

 逆説的に言えば、クリファをすべて破壊することで闇の神を葬ることが可能です」


 マリヴェレは神性を持たない、つまり人型でないクリファならば破壊することができる。

 あくまで"鏡の子"が手出しできないのは"神性"であり、神の一部はその限りでない。


「私は1000年をかけて10のクリファを破壊しました」

「じゅっ、10!?

 ってことは、残り3つ......」

「ええ、たったの3つです。

 しかし、その3つはいつまで経っても破壊できませんでした。

 現在のクリフォト様は酷く膨大で、本質的かつ、非常に流動的な......」


 マリヴェレの言葉に呼応するかのように、周囲の闇が静かに揺らぎ始めた。

 2人が魔物の出現を警戒する中、静寂を妨げる足音が響く。

 素足が地面を踏む『ひたひた』という音と共に、人型の生き物が現れた。


「"暗闇"のクリファに宿っています」


 大陸を覆う闇。

 それこそが第1のクリファ"暗闇"。

 クリフォトは闇をヴェールのように身に纏い、口を開いた。


「"鏡の子"マリヴェレ」


 金色の瞳が鏡面の賢者を捉え、その名を口にする。

 マリヴェレにできることは何もない。


「地神アヴァルダに相まみえる方法を述べろ」


 マリヴェレは嘘を述べることを禁じられている。

 ただ知りうるすべてを、真実を言った。


「知りません」

「そうか、ならば......」


 クリフォトの手がおもむろに動き、マリヴェレの方へ向けられた。

 半神の顔は無慈悲を、賢者の顔は諦念を示していた。


「謁見の供物となれ」


 無数に蠢く闇の魔物がマリヴェレを襲う。

 獣の牙が鏡面の肌を貫き、瘴気が力を奪う。

 抵抗は許されていない。マリヴェレには、何もできない。


 1人ならば、何もできない。


「"聖なる光よ! の者に救済の鉄槌を!!"」


 アイリスが聖光を放ち、周囲の魔物を蹴散らす。

 貫かれた体を手で押さえつつ、マリヴェレはぐったりとした様子で地面に膝を突く。

 闇を払う光を肌に感じ取り、クリフォトは後退した。


「セフィロトの力......巫女か」


 闇の半神、神々の小間使い、神殺しの巫女。

 奇妙な形で邂逅を果たした3人は、各々の意志の下に行動をとる。


「鏡の子よ、お前は運が良いようだ。

 無力なお前を唯一守ることのできる光神セフィロトの力が、お前のすぐ傍に居る。

 だが......」


 クリフォトの漆黒の腕が鎌の形となり、振るわれる。

 目にも止まらぬ神速の一撃が空を薙いだ。


「光明の巫女、お前を殺せばすべてが終わる。

 無力な鏡界の端くれには何もできない」


 空振りにより生じた音速衝撃波ソニックブームがアイリスを襲い、その頬に赤い線が走る。

 返しの鎌が伸び、アイリスの首を刈ろうとした瞬間。

 クリフォトは目を見開いた。


「ずっと暗い場所に居て、目が悪くなったようですね」


 体の各所に穴が開いたマリヴェレがクリフォトの背後に立っていた。

 直後、クリフォトの足元に鏡面の額縁が現れる。

 鏡の中に落ちていくクリフォトの鎌がマリヴェレの鼻をかすめた。


 空中に現れた鏡から落下し、着地するクリフォト。

 マリヴェレの姿を視界に収め、理解する。


「ッ、小賢しい......」


 『鏡面の賢者』マリヴェレ。

 非神なれど鏡界を司る調停者として、彼女には1つの力が与えられた。

 これは、凡人における"能力"や"アーカーシャの断片"に相当する。


 権能"泉の底を覗く水仙フルール・エト・フォンテーヌ"。

 任意の大きさの鏡を自在に出現・操作し、それらを鏡界を介して接続する。

 魂が原初的に持つ"鏡界への拒否反応"を利用し、鏡を橋渡しとした空間転移を行うことができる。


 闇の神への暴力が禁じられている以上、クリフォト本人を高空に転移させることはできない。

 だが、闇の魔物はその限りでない。


「重力の源たる、地神アヴァルダ様に感謝を」


 無数の魔物が鏡を介して空中に転移させられ、次々と落下死していく。

 魔物の残党をアイリスが聖光で倒し、周囲の闇は段々と薄くなる。

 クリフォトは不機嫌な表情を浮かべ、面倒臭そうに言った。


「海水をバケツで空にするつもりか?」

「無尽蔵な暗闇を晴らすことはできません。

 私はただ、道を拓くだけでいい」


 魔物はいくらでも増やすことができる。

 アイリスもマリヴェレも、その絶望的な事実を理解していた。いくら倒しても意味は無く、ただの無駄な行為だ。

 クリフォトは、その行動を無意味な足掻きと捉えた。


「"聖なる光よ! の者に救済の鉄槌を!!"」


 アイリスの放った光がクリフォトの腹に命中するも、焼け石に水と言わんばかりに闇が光を呑み込む。

 闇の神すらも殺すとされた聖光は効果を成さなかった。


「先進都市が聞いて呆れる。

 命を賭した研究の結果がコレか?

 お前たちのすべては冗長な徒労と知れ」


 "暗闇"のクリファに宿るクリフォトを葬るには、大陸を覆うすべての闇を聖光で照らさなくてはならない。

 アイリスにその力は無い。聖術結界も同様だ。


 マリヴェレはクリフォトに逆らえない。

 アイリスは大陸の闇を照らす力が無い。

 2人では不十分だ。なら、どうすればいい?


 科学技術が大いなる闇に牙を剥く。


「結界装置、起動!」


 アイリスの持っていた装置が光を放ち、周囲の闇が揺らぐ。

 クリフォトは次なる聖光を警戒するが、待てど暮らせど光は来ない。

 寧ろ、


「一体何を......

 ッ!? まさか!!」


 凡人がクリフォトの闇の中を進むことは自殺行為だ。

 そして、研究者の生涯は挑戦と自殺行為の繰り返し。

 結界装置の設置を、命を懸けて成し遂げた。


 何のための聖術結界なのか。

 通常の結界装置は10個もあれば安全区域を生み出すことができる。

 なぜ、今回の結界装置は100を優に上回る数あるのか。


 アイリスが持っていたのは結界の"核"。

 この結界は核を中心とする円形上に配置されており、発動と同時に核の方角へ向けて聖光を照射する。

 装置の数の少なさからして、円形結界内の闇をすべて照らすことはできない。だが......


 核の周囲に闇を集めるには十分な数だ。


「クリフォトの闇を一掃する方法は100年前から模索されていました」


 マリヴェレがアイリスから装置を受け取り、クリフォトの目を見る。

 その表情は焦りと怒りを隠さず、手の鎌が装置を破壊しようと振るわれた。


 マリヴェレが生み出した鏡により、クリフォトは足をすくわれる。

 片足を転移させられ、鎌の軌道が逸らされた。

 鏡面の賢者は半神の怒気を正面から受け止め、言葉を続けた。


「幾千の死者を生み出した100年に渡る研究。

 その最後のピースが5年前に揃った。

 私たちはもう、あなたの闇を恐れない」


 『光明の巫女』アイリス。

 光の神セフィロトの恩寵を受けし、聖光を讃える光の化身。

 聖術結界の核心とも言えるその力にはまだ奥行きが残されている。


 指向性を取り払った聖光の爆発的な放射。

 その威力を最大限まで有効なものとするため、マリヴェレの鏡が半径100mの範囲を覆う。

 集まった闇を取り囲む形、そして光を内部に閉じ込める形で。


 アイリスが祈りを捧げ、呟くように詠唱した。


「"光あれ"」


 濃い闇の中、眼球を焼くほど強烈な閃光が鏡の球内部を満たした。

 魔物や闇は照らされて消滅し、跡形もなく消え去る。


「畜生ッ、......ぁあ゛!!」


 クリフォトの体は形を保つことも難しくなり、次々に部位が破損していく。

 鏡に反射した光が再びその全身を侵し、喉からはくぐもった叫びが響く。

 絶叫と喘鳴すらも光に吞み込まれ、クリフォトの四肢はついえた。


「アヴぁ、ぅッ......ぅ゛だ!!!」


 残された頭部は苦悶の表情を浮かべ、何かを叫びながら塵となった。

 聖光は闇のくずすらも消し去り、すべてが跡形もなく祓われた。


 不可能ウンメクリヒの三命題の一つ、"神殺し"。

 非神が"神"あるいは"半神"を殺害するという難題。


 『鏡面の賢者』と『光明の巫女』は、三命題の一つを実現した。


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