二人称・短編ホラー『人撹者』【カクヨムコンテスト10短編用】

白銀比(シルヴァ・レイシオン)

1人目 着信

 スマホから着信が鳴っている。

 『あなた』は非通知からの着信は絶対に取ることはない。

 が・・・・・・

 なぜかこの着信は取らなきゃいけない気がする。何らかの強迫概念かのように差し迫られながら、恐るおそるその画面下部をスライドした。


「・・・はい」


 電話口の相手は三秒ほど無言を返してくる。


「・・・殺す・・・殺す・・・殺させて」


 あなたは気持ちが悪くなり、急いで通話を切った。しかし、また直ぐに着信が入る。また非通知だ。


「・・・はい」


「早くそこから逃げて!電話は絶対に取らなきゃいけない!できなくなっちゃうから。『あいつ』からも着信が入ると思うけど、あいつの話は聞かないで。お願い」


「『あなた』は誰?あいつって?」


 あなたにはずっと以前から、間違い電話やイタズラ電話が相次いでいた。番号を変えてもその状況は変わらない。しかし、最近になってその内容が自分の身の回りに起こる出来事とリンクするようになっていた。


「・・・はっ、『あいつ』だ・・・とにかく、また電話するから、待ってて」


 プツッ・・・・・・


 『僕』・・・少年と思われる子からの電話は初めてで、なんだか安心できる声だった。


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