あなたへ送る手紙~紙と紙が繋ぐ物語~

団栗珈琲。

紙と紙が繋ぐ物語

第1話 机の上の手紙

 今年の春、高校二年に上がったばかりの俺。

 二年になってから不思議な現象が続いている。


 なぜか、毎日机の上に手紙が置いてあるのだ。

 内容は俺宛で、毎日手紙の内容は違う。


 差出人は不明。

 そとの封筒みたいなのにも、手紙の文末にも、名前は書かれていない。


 いったい誰が俺に向けてこんな手紙を書いたのだろうか。


 手紙の内容は、今日あった事などのまったくと言っていいほど取り留めのない話だ。


 友達のいたずらだろうと思い、友達に確認してみたが全員知らないというのだ。


 クラスの奴らにも、俺の机に手紙を置いている人物を見たことがないか。と聞いてみたものの、誰一人として手紙のことを知っている者はいなかった。


 ほかにも不思議な点はある。


 俺の学校では一番早くに登校したものが、職員室に鍵を取りに行き、自分のクラスの教室を開ける。

 という作業をしないといけないのだが、一番初めに登校したやつも手紙を見ていない。というのだ。


 つまり、朝早くに登校してきて俺のクラスの鍵を取りに行き、わざわざ職員室に鍵を返して登校してくる。

 ……なんてことをしない限り、この状況を作るのは不可能なのだ。


 先生にそのことを訊いたのだが、なに一つ教えてくれなかった。

 先生は何か知っているようだったが。


 放課後は生徒の退出後すぐに施錠されるため、放課後に手紙を置くのはほぼ不可能。


 前者の方法で間違いないだろう。


 毎朝、手紙を読み、一日を始める。

 これが俺のルーティンみたいなものになっていた。


 手紙の内容から察するに、女性のようだ。


 また、文脈から彼女は明るく楽しい性格なのだろうなというのがわかる。


 まだ、桜の木が花で彩られる季節だが、この手紙は、俺が進級するまで、いや、卒業するまでずっと続くんじゃないかと、そう思っている。


 手紙。

 今はインターネットでの会話が主流で、手紙でのやり取りなんて最近では聞いたことがない。


 かくいう俺もスマホ使いの現代っ子だ。


 スティーブ・ジョブズには本当に頭が上がらない。


 だが、紙だからこそある質感、永遠に残せる永続性に心奪われていた。

 だからこうやって、紙に書き起こしているんだがな。


 それでも、友達との会話は未だにインターネットだ。


 流石に急に慣れ親しんだインターネットから紙に変えるのは難しいだろう。


 人がより便利なものにすがるように、一度慣れてしまったものはどうしようもない。


 だからこそ、彼女との手紙のやり取りを大切にしていくのだ。


 彼女の顔も、名前も、性格も、髪型もなにもわからないが、それでも彼女の手紙が楽しみだった。


 彼女は誰か?なんて無粋な推理はもうやめた。

 それは今の俺に必要ないからだ。


 彼女との、彼女から一方的に送られてくる手紙を読む関係をこれからも続けていきたい。


 一つ、気なることがあるとすれば、なぜ彼女は俺にあんな手紙を送るのだろうか。


 そこが唯一の疑問点だ。


 だが、そんな疑問もどこか遠くへ吹き飛ばすような、明るく楽しい彼女の手紙が俺は好きだった。

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