第49話 気配
「私は、生まれる前から、マリスと出会うと知っていたの」
「……どういうこと?」
「貴方の中にいる神様が教えてくれた」
マリスは自分の身体をバッと見る。そして、尋ねる。
「俺の身体の中に、神が?」
「ええ、貴方に魔力を流され、マナを感じて、ほんの僅かだけどたしかに感じたわ。
私に貴方のことを教えてくれた神様。それと、貴方のことを見ている……女神?」
「そうか……僕の中に……二人がいるんだ……」
マリスにとってアルディナの教えてくれたことは何よりも嬉しかった。そう信じていたが、実際にその存在を知るはずもない第三者から聞かされたことで確信へと変わる。
「アルディナ、ありがとう……」
マリスはアルディナの手をとって真っ直ぐな目で謝辞を伝える。アルディナは男性との接点が少なく、潤んだ瞳でまっすぐと見つめられることなんて経験がないために顔が熱くなっていくのを感じていた。彼女にとって初めての体験だった。
「い、いえ……本当にマリスさんが来てくれて、私も自分の望みが叶いますから」
「俺も全力で手伝うよ」
「あ、ありがとうございます」
「アルディナ、話が決まったら早く動こう、ジジイが何をするかわからない」
「確かに……」
「じじ、村長はアルディナが調べるのを反対しているんだね」
「溺愛してるから、危険なことしようとするとうるさい。二人で街を出るのもすごく大変だった」
「姉は村長の前では才女で通っているので、ようやく得た機会を失いたくないので助けてもらえて本当に良かったんです。ちょっと夢中になると周りが見えないというか、思いついたら危険を顧みないことが多くて……」
「面目ない」
「はぁ……」
マリスとラゴンの中でサリューシャの株がストップ安だ。
「とにかく、俺は過去の力と神の力を集めたい。それには竜の里の聖域に行く必要がある。アルディナとサリューシャも聖域を調べに行きたい。利害は一致しているから全力で協力するよ」
「ありがとうマリスさん」
「善は急げだし、じじいが変な手を回す前に突撃するのが吉」
「よっしゃ、話はまとまったな。俺はよくわかんねーけど、マリスが行くって言うなら手伝うって決めてるからよ」
「じゃあ、行こう!」
こうして、4人は竜人の聖域へと向かった。
しかし、姉妹の予想通り妨害工作が行われていた。
「姫、ドレイス様が心配されます。どうかお帰りください」
「お言葉ですが、アルディナと合わせが出来るものが現れたら其の者がアルディナと手を取り合い里の未来を作っていく。次代の里長となる者の言葉に従うと決めたのは里長であるドレイス様です。そして、マリス様が今アルディナと合わせを行い、実力も示しました。そこをどきなさい」
サリューシャもよそ行きの話し方をすると立派な人物に見える。
そして、形骸的に二人の行く手を阻むふりをしていた人たちはあっさりと道を譲る。
「まあ、一応ちゃんと止めたってことにしないと村長、暴れるから……」
なるほど、人の下で働くということは色々と大変なことがあるんだなとマリスは頷く、似たようなことをされていたラゴンはうんうんと彼らの境遇に同情をするのであった。
「聖域は今非常に不安定な状態になっています。正直内部がどうなっているのかもうわからないので気をつけてください」
「ああ、たぶん魔獣とか山程出てくると思う、いやーな予感がするから」
「よっしゃ、今回も張り切っていこうか!」
「二人はどれだけの修羅場を越えてきたのですか……」
「死んだと思ったことは両手では足りませんよ、お二人とも、絶対に無理はしないでください。危ない目には合わせないようにしますから」
アルディナとサリューシャはマリスとラゴンの実力を小さく見るつもりはなかったが、自分たちの持つ魔法の力が非常に優れているために、本当の気の使い手の力を自然と過小評価していたことをダンジョンに入って思い知らされる。それほどに二人の力は圧倒的で、自分たちの認識の中にある気の使い手とは世界が異なっていた。
「凄い……本当に、何もする必要がないとは……」
「どういうことなんですか!? 気とはそれほど万能なものなのですか?」
「それに、マリス様はなぜ魔力を使わないのですか?」
「魔法というものがよくわからないんだよね、ただ、あの村長が使ってたアレは使えそうだからいざって場合は使うつもりなんだけど……」
ちょうど現れた巨大なカマキリの魔獣。その外殻は怪しく光っていて、こういうタイプに魔法の効きは悪いのだが、マリスが作り出した純粋な魔力の玉を気の技でも用いる指弾で打ち込むと、外殻が簡単に撃ち抜かれていく。
「やっぱり外に使うのは気よりも魔力の方が威力が持続するね。これなら遠距離の狙撃も出来そうだ」
「……マリス様、サリューシャに魔法の細かい使用方法をみっちり教わりましょう。とんでもない使い手になれます。サリューシャ、許可します。マリス様に魔力の奥深さをしっかりと知ってもらって」
「いいんですか!?」
サリューシャの目が光る、マリスは彼女の優秀な研究対象となる。
「なぁ、アルディナが教えるんじゃダメなのか?」
「私、感覚で出来てしまうので、人に教えるの苦手なんです」
なるほど、マリスと似た者同士かもしれない。案外うまくいくのかもな、とラゴンは妄想を膨らませるのであった……マリスの座学に漬け込まれる毎日はこうして始まるのであった……
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます