第45話 襲撃

 降りしきる雨の中、木壁に囲まれたエリアには煌々と篝火が焚かれていた。

 できる限り明るくすることでこの場に多くの人がいる気配を出して人間の襲撃を事前に防ぐ意味合いもある。また、動物は基本的に火を嫌がる。

 この雨の中煌々と輝く炎があるというのは異常事態、普通の動物は近づくことはないだろう。


「あ、マリス様そちらは私達がやりますのでどうぞお休みください」


 野盗から大量にいただいた食材で温かいものを作る事になったら女性たちがその準備を進めてくれた。お陰で生きた心地のしなかった絶望のショックを和らげる暖かく豪華な夕食を準備することが出来た。


「おいしいよラゴンおじちゃん!」


「だからお兄さんだ」


 そう言いながらラゴンの目尻は優しく下がっている。

 他の女性陣は少し獣人であるラゴンにぎこちなさが残るが、子どもはかっけー! 状態になっている。父親が突然奪われたこともまだ理解はしていない状況をラゴンも理解して優しく接してあげている。


「凄い! まさか再びこんな食事が取れるなんて……」


 5名の女性たちは湯気を上げる食事を見て再び安堵から涙を流している。


「うまいな。ほんと、良かった」


「そうだな……」


「ありがとうございます……ありがとうございます……」


 緊張から開放されたおかげか女性たちは子どもを抱えてほぼただの木の床の小屋でぐっすりと眠りについた。

 マリスとラゴンは外を睨んでいた。


「……ちっ……せっかく助けてやったってのに」


「仕方ないね。彼らが選んだ道だ」


 雨音に紛れてここを襲撃するつもりだった野盗たちだったが、二人の眼はごまかせない。そして、二人も覚悟を決めていた。

 二人は壁を飛び越えて集団に一気に飛び込んでいく……


「ぐわっ!? な、なぜぐはっ!!」


「くそっ!! 囲め囲めぎゃっは!!」


 激しい雨が悪党の悲鳴をかき消してくれる。

 30名はいただろう野盗の群れは暗闇を飛び交う2つの影によって物言わぬ塊となって地に伏す以外の選択肢は与えられなかった。

 それから二人は街道から外れた場所を深くえぐり取り、死体を乱暴に放り投げ、土を被せてやった。彼らを知るものは、この世にいなくなるのであった……


「……悪党でも、気持ちの良いものじゃないな」


「マリスは初めてか……お前は良いやつだから、多分しばらく辛い」


「そうか、そうだろうな。でも、自分で選んだことだから」


「一緒に背負ってやるよ」


「……泣かせるなよ」


 コンと拳をぶつけ、二人は改めて身を整えて夜の警戒に戻るのであった。


「……あ、あのもしかしてお二人共、一睡もされていませんか?」


「いや、交代で休んだし、俺達は朝が早いんだ」


「すっかり雨もあがりましたね」


 昨日の豪雨が嘘のように翌朝は快晴。真っ青な空に白い雲がプカプカと浮いている。すでに日は登りしばらくてっていたが、二人は朝餉の準備をしながら女性たちが自然に起きるのを待っていた。壁の一部は取り外し、開いた外で簡単なスープとパンを温めておいた。


「すみません、朝食の準備まで」


「気にしないでください。俺達は早朝からの鍛錬が日課なので早起きなんです」


「そうなんですか……」


「あ、美味しい」


 実はマリスもラゴンもこう見えて料理上手であった。


「さて、今日は街まで進みましょう!」


「よろしくお願いします」


 朝食を済ませた後、建物はそのままに出発する。

 この地は後に休憩地となって長く使用されるのだが、二人はその事実を知ることはない。

 こうして、同行者を連れての旅はその後はいくどかの狼や魔物による襲撃はあるものの、問題なく進み、とうとう街へとたどり着くのであった。


 街の衛兵に事の顛末を報告し、しばらく取り調べもあったが、救われた女性たちの証言のお陰で二人は開放される。野盗達の集めていた品は街の預かりとなるが、その代わり野盗討伐の報酬はもらうことが出来た。巨大ダンジョンを攻略している二人は、お金には困っていないので、それで良かった。馬車も選別代わりに女性たちの再起の支度金へと換金するほどであった。


「本当にありがとうございました!」


「ラゴンまたねー!」


「マリス様、また、戻ってきてくださいますか?」


「ごめんなさい、多分僕は世界中を旅しなければいけないので、戻って来るのは随分と先になるかと」


「そうですか……旅のご無事を祈っております……」


 女性陣はマリスと離れるのを名残惜しそうにしていたが、マリスはさらっと去っていった。そのあたりはドライである。


「ラゴン、泣くなよ?」


「泣いてねーよ」


 ラゴンな少年との別れに目を赤くしていた。


 街へついたのならやることがある。これはすでにラゴンにも話している。

 マリスによる開発の布教だ。

 しばらく冒険者として堅実に信頼を得て、そして冒険者に力の解放を広めていく。

 これも世界を救うためには必要なことなので、二人はしばらく街に滞在する。

 牛人であるラゴンがいるために、優男に見えるマリスが舐められることもない。

 何度か魔物討伐を行えばすぐに実力者として認められ、開放の儀を受ける人間が現れる。そして、すぐに噂は広がり多くの冒険者が能力を開花される。

 ある程度広まれば後は相互で行ってもらえば良い、ようやく次の街へと移動の準備にかかることが出来る。

 二人の旅は、こうして進んでいくのであった……

 


 

 

 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る