第26話 目的

 モスコたちはベーリンゴールに戻るとすぐに冒険者ギルドへと向かった。

 ダンジョンを攻略したこと、そしてダンジョンが消失したこと。

 ダンジョンから持ち帰ったモスコたちでは早々手に入らない宝の報酬が目の前にあるためにその事実は詳しく調べる必要があるということで、モスコ達のパーティもメルスもギルドによる聞き取りに協力することになる。

 全員悪いことをしていることわけではないのでもちろん協力することになる。

 そして、過去の記録からメリスのいうダンジョンの寿命という存在はギルドでも知られていたために、きちんとダンジョン踏破者の栄誉は与えられることになり開放されることになった。


「あーーー、疲れたー」


「でも、良かったわね」


「ああ、これで俺達もダンジョン踏破した冒険者だ!」


「それと、魔道具系も全部鑑定してもらえたな」


「ああ、逆にラッキーだったな」


「どれくらいの収益になったのか楽しみだな~」


「マリス、こんばんは付き合ってくれよ、どう考えても今回の立役者はお前だ、浴びるほど酒のんで飯くらおうぜ!」


「ははは、お手柔らかに……」


「とりあえず店で精算しようぜ」


 必要な道具は金を出して買い取り、それ以外は売却して、最後に金を山分けする。冒険者のよくある精算風景だが、今回はとにかく物と額がでかい。

 今回のようにゲストがいると、パーティ強化のための装備や道具をパーティ全員で負担したりといろいろと複雑になるが……


「必要な装備は取ってください、俺も剣をもらいますから」


「いいのか? ありがとう」


 マリスにとってはこの剣一本で十分だった。もちろんそれ以外の宝石や金貨を山分けしてもらって結構な大金を得られた。

 マリスはまだ大量の魔獣の素材を処分しきれていなかった、少しづつ小出しにして生活費とかに当てていたが、本当は大金持ちだった。

 悪目立ちしないようにしていたが、これでようやく一つの目的だったものを買う算段がついた、荷車を引く動物を手に入れようと考えていたのだ。


「よっしゃ! じゃあ、飲みに行くか!!」


「待ってました!」


「今日は飲むぞー!」


「財布を落とさないでくださいよモスコ」


「わかってらい!」


「精霊のささやきは使っておくわね、流石に大金持ち歩いているし」


「ありがとうペーシェ」


「そしたら俺も荷物整理とかしてきます!」


「ああ、いつものとこで待ってるぜ!」


 マリスは荷車を置かせてくれて安価な宿を利用している。

 すでに街でも顔を知られるようになってきた、通しのおかげで、マリスの荷車を狙う輩はいないこともないが、マリスによる仕組みによって皆諦めている。鍵がなければ荷に手を出すと爆音がなって周囲に知らせる仕組みになっており、今では彼の荷物を狙うものはいない。


『マリス、あの剣をだして頂戴』


「うん」


 ミリエスの剣をミスリルの剣と重ねる。


『悪いんだけど、マナを補充してもらってもいいかしら?』


「オーケー、ちょっと気合いれていくね」


 マリスは精神を集中し大気に存在するマナを集めていく、体の隅々までマナを行き渡らせ循環させる。体内の主要なチャンネルを通すことで少しづつマナを高めていく。気力や魔力、神聖力と精霊力これらを練り込むように流すことで以前より早く、そして急速にマナを増大させることができるようになっている。その高めたマナをミスリルの剣とミリエスの剣に流して重ねていく。


『成長したわね、マリス』


 2つの剣が溶け合い混ざり合う……完全に一本の剣になる頃には膨大なマナを内包する新たな姿に変化していた。


『聖剣に片足が入り始めてるわね……ありがとうマリス』


「凄いね、これは目立つかもなぁ……」


 ミリエスは気、魔力、神聖力、精霊力、マナの輝きを放つ美しい剣へと成長した。

 そして、かなりの力を取り戻していく。


『いいわね、ミスリルを取り込んでかなり力の維持が楽になったわ。

 これなら眠りにつかなくても大丈夫』


「よかったね」


『さて、そこのあなたは何者かしら?』


「え?」


 開いた窓に小さな動物が座っていた。ほわほわとした白い毛がまんまるで、つぶらな小さな瞳に小さな嘴、マリスは見たこともない鳥のような動物だ。


「精霊?」


『……神の遣い?』


「残念ながら、これでも神体そのものなんだ……オルディスにラグニミリエス、ようやく逢えたね」


 ミリエスから明確な警戒がその場を支配した。ちょうど新たな力を手に入れたミリエスはマリスを守るために力のすべてを失う覚悟をするほどだった。その変化に焦ったのは小鳥の方だった。


「待ってくれ、敵じゃない。君とオルディスを再び出会わせる手助けをした側だ」


『どういうこと?』


「とりあえず、この警戒を解いてくれ、僕の力は弱い、ようやく依代を作れたばっかりなのにまた霧散したくないんだ」


 息もできないほどの緊張感がその場からすっと抜けた。

 マリスもようやく深呼吸ができた。


「改めて僕は……あー、クロット、これ仮の名前ね、真名は名乗れるほどの神格がもどってないから、ごめんよ。察しの通り善神の一柱、の残り香って感じだね」


「神様なんですね」


「ああ、でも気楽でいいよ。僕達はもう神とは言えないくらい弱ってるし、なんならマリス君に最後の望みを託して縋っているような存在だから」


『やっぱり、善神は滅んでいるのね』


「そう……そして、この世界は終わりを迎えようとしている」


『続けて』


「悪神と邪神もすでに傀儡、全て創造神からこの世界を奪い取った異次元の神Zel'Noctis(マリス達の理解を超えた言語のために認識が不可能)、えっと言葉でいうとゼルノクティスってとこかな、異神によってこの世界は今破滅に向かっている」




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