第23話 広がる力

 いつの間にかその場にいた冒険者たちで我慢大会が行われた。

 掛け金を払ってマリスがのを耐えたら賞金を得られるという単純なものだ。モスコがバカ面を晒してひっくり返ったのがお笑いとしての呼び水となりすぐにその場にいた冒険者が次々と挑戦することになった。

 もちろん耐えられる者なんているはずもない。皆、無様な顔でヒックリがえって掛け金を没収されていた。

 マリスはマリスでだんだん楽しくなっていた。他人の微妙に異なる魔力や気力、神聖力に精霊力を回して増やす作業がどんどんとうまくなっていくのがわかっていく。

 ただ増幅したのをぶっ放したり、ときに強弱を加えると相手の反応が面白くてどんどん若さゆえのいたずら心を刺激していった。特に女性への施術は盛り上がった。マリスに邪な心があれば、もっと問題になったが、彼には二心はなかった。散っていく華が可憐であるほど、会場は盛り上がりに盛り上がっていくのであった。


 モスコが目を覚まして来ると次々と冒険者たちは目を覚ました。気合を入れてある程度の抵抗をしていた冒険者は少し早く目が冷めてきた。みな自身の痴態を恥ずかしがったが、すぐに自分に起きた変化に気がついた。

 こうして、馬鹿騒ぎの中で行われた強化の通しは一気に街へと広がっていた。

 一度回路が広がった人間は、他の同じ回路の人に施術をすることが可能になる。と言っても最初の頃はマリスのようにこじ開けるような形ではなく、少しづつ広がっていくので何度も必要がある。 回路が広がるのはゆっくりやると心地よい、急速に行うと激しい快楽に似た感覚になり、一部の人は何度もマリスの通しを求めるようになって困ったものであった。鍛錬して回路を広げて急速に行うと似たような感覚が得られる事がわかると、皆鍛錬に勤しむことになった。


 こうしてベーリンゴールの冒険者たちは覚醒していく。皆がマナを利用して自分の得意とする力を伸ばしていく、すると周囲のマナも活性化してく、結果としてマナで満たされ瘴気から守られていく……冒険者の能力も跳ね上がり、そして魔獣とも渡り合える力の使い方が広がっていく。結果として、長い間停滞していた人の領域が拡張していく。


「マリス!! ダンジョン見つけたぞ! 行くぞ!!」


「え、俺がですか?」


「お願い! 私達だけじゃ不安なの!」


「はやくはやく! マリス、報告したらすぐに行くから!」


「わ、わかりましたよ……」


 魔物や魔獣に怯えていた冒険者たちの姿はそこにはなく、本来の未知へと挑み冒険を楽しむ子どものように目を輝かせた冒険者で溢れていた。


「まさか俺達がダンジョンに挑む日が来るとはな!」


「ちょっと少しは緊張感を持ちなさいよ!」


「お二人共声が大きいです、たぶんその先に魔物がいますから」


「マリスの言う通りよ、敵影小型6、まだ気が付かれていないわ」


「弓と魔法で先制攻撃をして混乱しているうちに一気に距離を詰めて倒す、でいいな」


「わかりました」


 テコラが静かに弓をつがえる、マリスは魔法を構築する。

 敵の詳しい内訳をワンが全体に伝える。それぞれの武器を構えて攻撃を待つ、ここまで流れるように配置する。


「マジックアロー!」


 二人の攻撃が放たれると同時に通路に4人が散る。

 ペーシェによる精霊の導きによってテコラの矢が敵の額に突き刺さる。

 魔法の矢も横腹を貫いていく、2体の魔物は致命傷を受ける、慌ててうろたえる残りの魔物にペーシェの精霊魔法とジョン、モスコの攻撃が次々と叩き込まれ、戦闘は一瞬で終わる。


「いやー、俺がこんな戦いできるなんてなー!」


「だから声がでかい! 気持ちはわかるけど……」


「てか、マリスくんいつの間にか敵を倒してたけど、素手で殴ってなかった?」


「いやー、今いろいろと試していて……」


「マリスくんやばいもんね、気も魔力も神聖力も精霊力も、さらにはマナをマナのままでも使えるんでしょ?」


「そうなんですけど、それぞれ最適な使い方を活かす戦い方はどうすればいいかと悩んでまして……」


「うーん、使えないからわからないけど、あまり分けると対応力は高くなりそうだけど、器用貧乏にならないか?」


「それがさ、この子、本当に全部完璧に使えるっぽいんだよね、それでいてマナの扱いも抜群だから基本無尽蔵レベル」


「もうずるですね、ははは」


「いや、本当に羨ましい」


「普通に考えると、気で身体能力を上げて、神聖力で上乗せして、精霊を使役して、身体能力と魔法で戦うって感じになるのか、すげーな、一人で何でもできるじゃん」


「確かに無手は、相性いいのかも」


「だったら攻撃にも対応した籠手型装備が良さそうですね」


「ああ、あとは脛当てと靴も攻撃を考えたものにするのが良さそうね」


「格闘系の得意なやつ紹介してやるから色々聞いてみると良い」


「ありがとうございます」


「さぁさぁ、皆さん、そろそろ進みましょう、今はダンジョン攻略が目の前の課題ですよ」


「そうだな、課題を終えずに先のことを考えるのは死の入口ってな」


「慎重に、ときに勇気を」


「行きましょう!!」


 ダンジョン攻略はまだ始まったばかりだった。





 



 

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