第19話 開眼

「何が、起きたんだ?」


 あまりにもあられもない姿なので命の別状などはないことを他のメンバーに確かめてもらったうえで馬車に放り込まれたデロンの事情をフォルスはドン引きしながらマリスに訪ねた。


「デロンがマリスに魔力をたんだけど……急に叫んだと思ったらああなったのよ」


「で、マリスはなにかしたのか?」


「魔力もマナに似ていたので、いつもと同じように循環と増幅をして見たら、想像よりも遥かに純度も濃度も高くなって、それをそのままデロンさんに流しちゃって……」


「突然大量の魔力を、ああなったのか……」


「マナの場合あんなに急速に増大できないんですよ、凄いんですよ魔力の方が!」


「ついでに神聖力とかでも同じことできるのかな?」


「やってみないとなんとも……」


「ちょ、ちょっとだけ、やってみようか……」


「ニリンさん……? なんか、目が座って……」


「おいおい、ニリン、危険じゃないのか?」


「フォルスは黙ってて!」


「はい」


「じゃあ、同じように集中してね。神聖力は祈りが生む力なの、行くわね」


 ニリンは瞳を閉じて祈りを始める。

 マリスは繋がれた手に集中する。しばらくすると、ニリンの手からふわふわとした不思議な感覚が伝わってくる。明らかに異なる何かが体に入ってくるのがわかる。


「ああ、たぶん、これですね……」


「おいおい、神聖力にも適正があるのか?」


「静かにフォルス! じゃ、じゃあ、ちょっとさっきみたいにやってみよっか」


「だ、大丈夫ですか?」


「大丈夫だから! 早く!」


「は、はい……」


 マリスはそのふわふわした気配をマナの回路に通して循環し、増幅させる。

 やはりマナとは比べ物にはならない爆発的にほわほわが増えて体を駆け巡り、逆の手からニリンへと戻っていく。


「は、はにゃああああんんん!! か、神よおおおぉぉぉっぉおぉ!!」


 ニリンはデロンと同様に奇声を上げながらのけぞって倒れてしまった。


「あ、あわわわわわわ」


「お、おいニリン! 大丈夫か!?」


「き、気合を、いれ、入れっていたっから、だ、だい、大丈夫……す、すご、凄かった……」


「ほ、本当に大丈夫かよ……」


「それと、予想通り、私、神聖力、めちゃくちゃ、高まってるわ……それに、マナ、それも、わかる、うん、わかるわ……ふぉ、フォルスとかも気を通して、マリスに、やってもらいなさい、」がくっ


「お、おい!」


「寝てるだけ、マリス、私が気をやる」


「ほ、本当にみんな大丈夫なの?」


「大丈夫。さぁ」


 今度はイトリルが同じようにマリスに気を通した。

 マリスはイトリルから温かい流れを感じる。一番マナに近いなと感じたが、同じように体を通してみるとマナよりも通りやすいし、やはり増幅させやすい。大量の気を練ってイトリスに流し込んだ。


「ふ、ふにゅううううううぅぅぅぅぅぅぅ!!」


 ビクリと跳ね上がったが、のけぞり倒れることはなかった。


「くっ、す、凄い……です」


 しかしそのままバタンと前方に突っ伏してしまった。


「ほ、本当に大丈夫なんですか?」


「……ニリンが言うんだ、マルス、私ともやってくれ!!」


「ナミドさんまで……フォルスさんいいんですか?」


「そうだな、ニリンがいうんだ。マリス、その次は、俺とやってくれ!」


「えーーーーー!!」


 結局、ナミドは


「はあああああああああんんんん!!」


 フォルスは


「オウグッファーーーーー!!」


 と奇声を上げて潰れていった。

 パーティメンバーが全員ぶっ倒れている中、マリスは今感じとった魔力、神聖力、気力に意識を集中させた。


「マナを変化させてそれぞれにして循環、そして増幅、凄いスムーズだ……」


 さらに今までマナで行っていた身体強化などを色々と試していく。

 内部の強化は気力、外部への影響は魔力、回復などは神聖力が優れていることがわかる。


「もしかして、これは、ある意味進化なのでは……」


 マナよりも効率よく物事を行うために細分化されていっていった結果のようにも感じた。

 

「片羽落ちなんだよな……」


 環境に気や魔力や神聖力は存在していない。だから、個々の持つ力が全てであまり大きくない、大気に存在するマナを取り込みそれぞれの力へと変化させればきっと今の何倍も、それこそマナをマナのまま利用するよりも効率よく力として使える可能性を感じていた。なのに、今の冒険者たちはマナの存在を知らない、だから、弱いのではないか……。


 日も落ちてきたのでマリスは篝火を焚き周囲を警戒しながら一晩過ごした。フォルスたちは皆馬車に突っ込んでいる。マリスはそれぞれの力を色々と試しながら体を動かしていたら、あっという間に一晩が過ぎていた。日差しが森から顔を出す頃、マリスの体調はすっかり良くなり、以前よりも強力な3種の力を手に入れていた。


「……す、すまないマリス……」


 しばらくするとフォルスがバツが悪そうに馬車から降りてきた。


「おはようフォルス、体調は大丈夫?」


「ああ、それなんだがマリス、お前、一体俺に何をしたんだ?

 気が信じられないほど高まっていて、自分の身体じゃないみたいだ……」


「私達も、そう、それに、この大気に存在する力がマナなのね……?」


「たぶん、そうだと思います。マナは、気力や魔力や神聖力の元となる力のようです……」


 フォルスたちの大いなる進化が、今、始まるのであった。

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