第6話
リーシアさんが拠点としているのはフェクチェーという町だ。ファスティア王国とドスカンド王国という国の関所みたいな町ということで、人の往来が多いという。
「ここが、私が定宿にしている宿だ。森の恵み亭という」
森の恵み亭は石積みの大きな建物で、窓はガラスではなく木製の開口になっていた。
「戻ったぞー」
「リーシア!! もう、珍しく遅いから心配してたのよ!!」
リーシアさんが宿に入ると、受付をしていた女の子が慌てて駆け寄ってきた。多分同年代くらいの赤茶色の髪が特徴的な女の子。モスグリーン色の服と茶色のスカートを着ている。そんな彼女がリーシアさんに抱き着いて、すんすんと匂いを嗅ぐ。
「う……ちょっと焦げ臭いわ。お風呂、沸かすわね」
「あぁ。助かるよ。これ、新しい分だ」
そう言ってリーシアさんが彼女に袋に入った何かを渡す。宿代……?
「いつもありがとう。で……そちらの方は?」
受付の女の子がようやく私に気付いた。私はぺこりと頭を下げてからシズクと名乗った。
「私の命の恩人だ。私と一緒に泊めてくれないか?」
「え、まぁ、別にリーシアが良ければ別にいいわよ。まぁ、リーシアの恩人っていうなら、宿代は割安にしておくわね」
どうやら泊めてくれるらしい。お金はかかるけれど。それに、この宿にはどうやらお風呂もあるらしいから、それも嬉しいところだ。
「私はユミル。この宿の長女よ。よろしくねシズク。じゃあ私、水を汲んでくるから――」
「あ、それなら」
お風呂用の水を汲みに行くというユミルさんに待ってもらい、取り敢えずお風呂場へ案内してもらった。
「何をするつもりなの?」
「実はシズクはな――」
リーシアさんが説明してくれる中、水を生み出して木製の浴槽へ溜めていく。
「水魔法! しかもこの量をあっという間に!?」
浴槽はすぐに水でいっぱいになった。けれど、これじゃまだ水で、入るにはためらうほどひんやりしているが……。
「じゃあ、これを一つ入れてっと」
そう言ってユミルさんが放り込んだのは、真っ赤な石。
「これは?」
「さっき倒したファイアエレメントが落とす火の魔石だよ。お湯を沸かすのにちょうどいいんだ」
ユミルさんが水面をつんつんしながら温度を確かめる。
「もう一個くらい入れてもいいわね」
二つ目の火の魔石が浴槽に投じられる。次第に浴室内に湯気が立ち込め始めた。
「うん。いい感じね。それでシズク……貴女、この量の水は毎日出せる?」
「え、えぇ。多分……大丈夫だけど」
肩をがっしり掴まれ、問われた私は取り敢えず頷く。
「なら……毎日お願い。宿代なんていらないわ。ぜひ、この宿に居て欲しい」
よほど井戸から水を汲んでお風呂に入れるのが大変なんだろう。目がマジだった。私は再び頷いた。
「ありがとう。本当に、ありがとう。さぁ、お風呂どうぞ」
ユミルさんに促されて私たちは服を脱ぐために浴室を一度出るのだった。
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