紅の魔術師は今日も世界をかき回す〜最強女魔術師の弟子は、できれば静かに暮らしたい〜

安崎依代@1/31『絶華』発売決定!

『紅の魔術師』、アディルレイド・サラ・ローゼン。その名を知らぬ者はこの世界にいない。


 彼女が紡ぐ理論式は、精巧にして繊細。


 風に翻る真紅の髪は、他に類を見ない強大な魔力の証。


 時の流れさえをも屈服させるその在り方は『悪魔的』とさえ称され、今やその名は『世界最強の魔女』と同義として扱われている。


「その『世界最強の魔女』がこんな性格だと知ったら、世の中結構な人間が絶望するんじゃないか……?」


 独白をこぼしたヒノエは深く溜め息をついた。その吐息に煽られた胸元のレースがフワフワと揺れる。詰め物をして膨らませた胸は、自分で見ても奇妙な代物だった。


 ヒノエ・アイヅカ、当年もって15歳。


 今は訳あって女物のドレスに身を包んで『乙女限定』と銘打たれた闇オークションの会場にいるが、こう見えても立派な男である。


 ちなみに女装が趣味であるわけではない。念のために釈明しておくと、これはれっきとした『変装』である。


「そういえば師匠、どうしてこんな詰め物なんて持ってたんだ? 必要ねぇだろ。あんだけ本物の胸があるんだから……」


 ヒノエが女装してまでこんな場所に来なくてはならなくなった事の発端は、そのアディルレイドがこぼした何気ない一言だった。


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