第19話 サンゴのゴーグル

 明るい日差しが瞼の裏側を赤色に染めていく。

 目を開けると、水色の空がサンゴの視界に挨拶をしていた。


「ん……」

「よう、起きたか」


 ダリルは隣で胡坐をかいていた。


「今日は随分早起きなんだね」


 いつも自分が起床した一時間後くらいに起きるダリルが、もう既に目覚めていることに驚くと、彼は身を寄せてきた。


「ん? なに」

「ほれ」


 頭に重みを感じる。


「これ、ゴーグルだ!」

「ああ。サイズ合うか、調整してくれ」


 サンゴは声を上げると、急いでベットから跳ね起きて、鏡へと向かった。

 ダリルのゴーグルを一回り小さくしたようなデザイン。


 彼と同じように額より少し上に被せたが、すとんと首元に落っこちてしまった。


 ネックレスをするようにゴーグルをぶら下げていると、後ろから追ってきたダリルと鏡越しに目が合った。


「げっ、もう少し小さく調整するべきだったか」

「でも、これはこれで……良い!」


「ははっ、そうだな、それが似合うような大人になるんだな」


 将来楽しみだ、と言わんばかりの笑顔を向けると、サンゴの頭にぽんと触れた。

 サンゴはダリルの笑顔をじっと見つめると、首元の新しいゴーグルに触れる。


 淀んだ肺の中の空気を入れ替えて、


「……うんっ! ありがとう」


 サンゴは、屈託の無い笑顔をダリルに向けると、元気良く返事をした。



 それからしばらくすると、目的の場所、ヴィクドリア・南ターミナルに到着した。


 ヴィクドリア・シティへは、このヴィクドリア・南ターミナルから、蒸気機関車に乗って向かうことなる。


 飛行船から降りると、ヴィクドリア・シティの存在が粒ほどで確認できる。

 おそらく到着するのは本日の夕時頃になるだろう。


 招待状に記載されている日時には間に合いそうだった。


「よし、とりあえず時間までターミナルを見て回るか」

「……ダリル、また肩車して欲しい」


 ダリルの袖を掴み、甘えた声を出すサンゴ。


「……なあに甘えてんだよ。こら」

「むう」


 ぶすっとした表情をすると、サンゴは肩を落とした。

 蒸気機関車が来る時間になるまで、二人はヴィクドリア・南ターミナルを見て回った。


 ヴィクドリア・南ターミナルは、その名の通りヴィクドリア・シティの南に位置する、比較的巨大なターミナルであり、ここからヴィクドリア・シティ行きの蒸気機関車が出ている。また、飛行船の停留所でもある為、別大陸からの物資や土産品、特産物などが販売されている。ダリル達の暮らす大陸の町一つと、ほぼ同規模の巨大ターミナルである。


 ターミナルを見て回る間、サンゴはやけにダリルに甘えた。


 袖を掴んだり、やけに身体を密着させてきたり、なにかと肩車を要求したり、ちょっかいを出して、ダリルの気を引こうとした。


 やがて、蒸気機関車が汽笛と共に出発する時間となった。

 二人は、指定の位置に座ると、窓から見えるヴィクドリア・シティを眺めていた。


 サンゴは、いつも対面の座席に座っていたが、今回はダリルの横に座った。

 小さくなったバックパックは向かい側の席に座らせた。

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