第13話

 優作と慎二郎の機嫌は治ったのか、学校から帰って来た頃にはいつもの二人となっていた。明後日には帰ってしまう両親に、これ以上心配を掛けるのは良くないと思い至ったのだろうと、佐奈は一人ホッと安堵した。



 入学式から初めての登校となった今日は、まだ本格的に授業は始まらず、レクレーションの時間が設けられ、皆が自由に交流をしている。

 佐奈の席の周りには沢山のクラスメイトが集まっている。


「なぁ深山の兄貴ってハーフなのか?」


 倉橋は佐奈の正面を陣取り、好奇心を隠さず訊ねてきた。


「ううん、ハーフではないかな……」

「じゃあ、やっぱり純粋にアメリカだかイギリスだかの外国人ってことか」

「それも違うんだ。えっと、母親はアメリカ人なんだけど、父親だった人はロシアと日本のハーフなんだ。だから優作は日本の血が四分の一だしクォーターになるのかな……その辺よく分かんないけど」


 アビーの話では、優作たちの父親は世界にも進出している有名なモデルらしいのだ。プラチナブロンドにマリンブルーの瞳。美しすぎるルックスに、各国の美女が群がるのは当然のような男だったと。そしてアビーという妻がいながらも、自由に奔放に美女らと逢瀬を重ね、結果アビーに離縁状を突き付けられたのだ。


 しかし浮気を重ねようが、アビーのことは深く愛していたようで別れを告げられたときは、最後まで悪あがきをしていたという。〝バカな男〟とアビーは笑って話していたが。


「へぇースゴいな。色んな国の奇跡の融合であのゴージャスさ。納得。やっぱり彼女いるのか?」

「倉橋さぁ、なんかすげぇ深山先輩のことに食いつくね。あの人にお近づきになりたい奴は一杯いるし、気持ち分かるけど諦めろよ」


 はじめが茶化すように倉橋の肩を軽く叩きながら言う中、佐奈の胸中は複雑なものがあった。

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