第32話 キス以上のことを…
「みんなが帰ったら……あたしと、しよ?」
「……それは無理だ」
「ふぇ?」
アイサはふーっと、俺の耳に息を吹きかける。
暖かい吐息が耳に入り込む。
全身に電撃が走ったみたいに、ぞくぞくした感覚に襲われる。
「……アイサ、本当にそれはダメだ」
「これ、見てくれない?」
胸元を触るアイサ。
図書委員のエプロンが、膨らんでいる。
大きな胸がはち切れんばかりの自己主張をして……
「……アイサは、俊樹が好きなんだろ?」
俺はアイサから離れようとするが、アイサは俺の背中に手を回す。
カウンター越しに、俺とアイサはまるで身を名乗り出してキスしているみたいな感じになる。
「うん。好きだよ」
「そういうことは、好きな人としろよ」
「哲くんはいつも正しいね。パパみたい」
アイサは俺の頬に触れる。
小さくて白い手。
温もりが伝わってくる……
「みんな、真面目に勉強してるね」
「そうだな。すごいよ」
「貴重な高校生活、なのにね」
それは見方によるかもしれない。
だいたい夏休みに図書室にいるのは、今年受験を控えた高校3年生だ。
今が頑張って勉強する時、なんだろう。
「まあ来年、受験だしな」
「でもさ、高校生活最後だよ? もっと楽しまなくていいのかな?」
「人それぞれじゃないか」
「むむむ。哲くん、やっぱり正しい……」
なんて返せばよかったのだろう。
別に正論を言いたいわけじゃない。
みんな、それぞれ自分がしたいことをただするだけだ。
「今日くらい、悪いことしよう」
「……もっと自分を大切にしろよ」
「哲くんになら、そういうことしてもいい」
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