第15話 メインヒロインの水着を選ぶことに
「お、LIMEが来ている……」
家で自分の部屋にいると、桐葉からのLIMEが来た。
『哲彦くん。来週、あたしたち海行くじゃない? ちょっといろいろ準備したいから今週の日曜日に付き合ってくれない』
そう。俺、桐葉、アイサ、俊樹は来週、海に行くことになっていた。
すでに夏休みに入っている。
学校から電車で1時間くらいのところにある、湘南の海……だと思う。
原作ではどこの海とは出てこなかったが、たぶん背景の絵から想像すると湘南地域の海だ。
「いろいろ準備ってなんだろう……?」
俊樹のことで何か相談があるんだろう。
この「海イベント」で桐葉と俊樹の距離は近くなる。
たしかシナリオでは、海でナンパに絡まれていたところを、俊樹が助けるんだったか……
もちろん『瑠璃色に空が染まる』はハーレムがコンセプトだから、海イベントでも他のヒロインに浮気できる選択肢が出てくる。
(エグイルートがあるんだよな……)
アイサと「身体の関係」になるルートが存在するのだ。
海の岩の裏でヤルんだよな……
アイサが岩に手をついて後ろから――かなり生々しいシーンだ。
それが桐葉にバレて修羅場になってバットエンド。
最悪な結末を迎えることに。
「絶対に避けないといけないな……」
この世界の俊樹はブレブレなヤツだ。
アイサとヤってしまうことも十分あり得る。
海イベントでも無事に桐葉と俊樹をくっつけるのが俺の任務だ。
『いいよ。一緒に行こう』
俺は返信をする。
こないだの打ち上げでは特に成果を出すことはできなかった。
今回は親友キャラとして気合を入れないといけない。
主人公とメインヒロインの恋が実るために……
★
俺は今、桐葉とショッピングモールにいる。
普通に今日もいつものファミレスで作戦会議という名の恋愛相談になると思っていたのだが……
「ねえ。哲彦くん。どれがいいと思う?」
なぜか水着を選ぶことになってしまった。
女性用水着コーナーで男は俺ひとりだけの状況。
(どうしてこうなった……?)
ピンク色のフリルの水着と、水玉模様の清楚な感じの水着。
その2つが俺の目の前に掲げられる。
(これって俊樹がやることじゃないのか……)
たしか桐葉ルートで俊樹が桐葉の水着を選ぶシーンがある。
本当に俺は選んでしまっていいのか。
(俊樹はどっちを選ぶんだっけ……?)
俺は必死に記憶を探ってみるが、なかなか思い出せない。
原作ではそんなに重要なシーンじゃなかったから、すぐにクリックして流してしまっていた。
「うーん……どれがいいかな」
俺は真剣に悩むフリをながら、脳の記憶フォルダを必死に漁る。
ピンク色と水玉――この二択がわからない。
「ごめんね。あたし、なんかすごく悩ませているみたい」
「いや、そんなことはないよ……」
俺の悩み方があまりに激しすぎたのか、俺を気遣ってくれる桐葉。
いい加減に決めないといけない。
「哲彦くんの好きなほうを教えてほしいな……?」
いや、逆にそれが困るのだが……
本当なら俊樹の好みで水着を選ばないといけないのに。
「……俺は水玉のやつがいいと思う」
「ありがとう。じゃあ、試着してくるね」
「えっ? ここで……?」
「ここで試着するしかないでしょ……?」
桐葉は試着室の中へは入っていった。
最初に水着姿の桐葉を見るのは俊樹なのに――
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