ドリフト-夢、翔ける者-

カズマックス

プロローグ

 キッカケもなく、突如として断片的な記憶が私の頭の中を駆け巡っていく。


 それは大好きな兄との思い出の記憶。


 リビングで交わした好きなテレビの話。子供の頃に一緒にやった卓球。いじわるしてくる男の子から守ってくれた頼もしい背中。


 そして何より、兄が愛してやまなかったクルマでのドライブ。


 煩く、落ち着かない車内での兄との一時はどんな嫌な事でも忘れるくらいとても楽しいものだった。


 そして何事にも夢中になれなかった私とは対称的に、クルマにとことん夢中になる兄の姿はとても眩しく感じるほどに羨ましかった​──────。

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