第23話、アマノイワド

「ルル、ル~ル~、ルルルル~」

 むくつけき漢たちが低い声で歌っている。

 潜砂艦、“アマテラス”は、“アールヴ”の私椋船しりょうせんだった。

 私椋船とは、“アールヴ’国公認の海賊船の様なものだ。

 最近あまり仲が良くない”モンジョ古王国“の船が相手になるだろう。


「大丈夫~?」

 ファラクがイオリの声をかけた


「何とか、なれてきたよ」

 イオリが力なく言った。

 初めての、潜砂艦に完全にビビってしまっていたのだ。

 いつもは、大空を飛行艇で舞っているから、閉じ込められることに抵抗があるらしい。 


――もう、仕方のない人ね~

 ‘アマテラス”に来てから二日が、経っていた。


「お~う、もう少しで、“アマノイワド”につくぞ~」

 艦内無線から、エルザードの声が聞こえてきた。


「久しぶりの陸だ~」

「のんびりしたいね~」

「飲むのはまだ早えよ」

 クルーがそこかしこで盛り上がってる。 


「あの、“アマノイワド”って何ですか」

 ファラクが周りの人に聞いた。


「そうか、そうか、二人は初めてか」

「我々、海賊、“砂漠の鷹”団のアジトであり、『アマテラス』の母港だよ」

「いま、ブリッジに行ったら、見えると思うよ」


「ありがとう~」


「ありがとうございます」


「行ってみようか~」


「うん」 



 朝の砂漠の空は高い。

  

 “アマテラス’は艦橋かんきょう深度で航行中だ。

 艦橋だけを、地上に出していた。

 丸みを帯びた艦橋の、装甲板を上にあげた窓からは、外の景色が見えていた。

 

「あらいらっしゃい」

「あらいらっしゃい」


「妹よ、ファラクだわ」

 

「お姉さま、ファラクです」


「よっ」

「よく来たな」

 艦長席に座ったエルザードが、軽く手を上げた。

 に、美少女二人を座らせている。

 歳は、ファラクより少し若いくらいか。

 黒髪に、淡い朱色の瞳が並んで二つ。

 褐色の肌には、銀の魔紋。


 潜砂艦‘アマテラス”の、船巫女~ズ、“ワルダ”と”ランダ”の双子姉妹である。

 

 “アマテラス”は、船巫女をツイン装備しているのだ。


「「旦那様~」」

 ちなみに二人とも、エルザードの嫁。


「おはよう~」

「おはようございます」

 ファラクとイオリが挨拶をする。


「ちょうど、アジトが見えてきたぜ~」

 艦橋のガラス越しに、巨大な岩の島の様なものが見えて来た。

「アレがアジトだ、“アマノイワト”って呼んでいる」

 古い女神“アマテラス”が、神話の中でをしたという場所の名前を取ったそうだ。 

 とても大事なものを守っていたに違いない。


「自宅警備員さ」

――なんてったって、神が就いていた職業だからな

 エルザードが、あこがれの職業を語るように言う。


「古~い、古~い、話だぜ」


 フッ


 エルザードがハードボイルドな笑みを浮かべる。


「「だ、旦那さま~~」」

――かっこいい~~

 二人の双子が頬を染めて、熱い視線を送った。


「そ、そうなんですね」

 イオリが若干引き気味だが、隣でファラクが、うんうんとうなずいていた。

――これが、カルチャーギャップというものなのか??


「まあ、上から見るとな、巨大なドーナツ状に岩山が囲んでてな~」

「地下(砂の下?)に、船が通れる穴を空けてな」

「入口は、ちょうど地上部分が、この艦橋が通れるくらいに削っているのさ」

 艦体を砂の中に沈めないと中には入れない。


「ま。 また今度空から見てくれ」

――飛行艇でな


 しばらく、艦橋で周りの景色を見ていた。

 二人は、そろそろ、入港の様なので自室に帰った。


「もう、旦那さまったら~」

 “ワルダ”だ。

「お姉さまばかりは嫌です、かまってください」

 “ランダ’である。


「夫婦仲はいいみたいね~」


「……そうなのか……」

 レンマ王国は、一夫一妻制である。

 一夫多妻制を目の当たりにした、イオリは軽く動揺していた。

 取り合えず、エルザードとワルダとランダの中が良いということが分かった。



 静々と‘アマテラス”が、“アマノイワト’に入っていく。

 中は、半分は砂地で、その場で艦を180度回せるくらいには広かった。

 半分は、オアシスになっており、緑の木が生えている。

 緑の木を邪魔しないように、基地となる建物が立っていた。


「入港完了」

 港にもやい(ロープ)を繋ぐ。

 早速、艦の補給と、飛行艇”イザナミ‘“の余剰物資を下ろし始めた。


「明日は、新しい仲間の紹介のために宴会をしたいと思う~」

 エルザードだ、


「オオオ」


「久しぶりのおか、久しぶりの休暇だっ」


「オオオオオ」


「存分に楽しむぞ~~」


「オオオオオオオ」


 基地内に、歓声が響き渡った。


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