第23話、アマノイワド
「ルル、ル~ル~、ルルルル~」
むくつけき漢たちが低い声で歌っている。
潜砂艦、“アマテラス”は、“アールヴ”の
私椋船とは、“アールヴ’国公認の海賊船の様なものだ。
最近あまり仲が良くない”モンジョ古王国“の船が相手になるだろう。
「大丈夫~?」
ファラクがイオリの声をかけた
「何とか、なれてきたよ」
イオリが力なく言った。
初めての、潜砂艦に完全にビビってしまっていたのだ。
いつもは、大空を飛行艇で舞っているから、閉じ込められることに抵抗があるらしい。
――もう、仕方のない人ね~
‘アマテラス”に来てから二日が、経っていた。
「お~う、もう少しで、“アマノイワド”につくぞ~」
艦内無線から、エルザードの声が聞こえてきた。
「久しぶりの陸だ~」
「のんびりしたいね~」
「飲むのはまだ早えよ」
クルーがそこかしこで盛り上がってる。
「あの、“アマノイワド”って何ですか」
ファラクが周りの人に聞いた。
「そうか、そうか、二人は初めてか」
「我々、海賊、“砂漠の鷹”団のアジトであり、『アマテラス』の母港だよ」
「いま、ブリッジに行ったら、見えると思うよ」
「ありがとう~」
「ありがとうございます」
「行ってみようか~」
「うん」
◆
朝の砂漠の空は高い。
“アマテラス’は
艦橋だけを、地上に出していた。
丸みを帯びた艦橋の、装甲板を上にあげた窓からは、外の景色が見えていた。
「あらいらっしゃい」
「あらいらっしゃい」
「妹よ、ファラクだわ」
「お姉さま、ファラクです」
「よっ」
「よく来たな」
艦長席に座ったエルザードが、軽く手を上げた。
両ひざに、美少女二人を座らせている。
歳は、ファラクより少し若いくらいか。
黒髪に、淡い朱色の瞳が並んで二つ。
褐色の肌には、銀の魔紋。
潜砂艦‘アマテラス”の、船巫女~ズ、“ワルダ”と”ランダ”の双子姉妹である。
“アマテラス”は、船巫女をツイン装備しているのだ。
「「旦那様~」」
ちなみに二人とも、エルザードの嫁。
「おはよう~」
「おはようございます」
ファラクとイオリが挨拶をする。
「ちょうど、アジトが見えてきたぜ~」
艦橋のガラス越しに、巨大な岩の島の様なものが見えて来た。
「アレがアジトだ、“アマノイワト”って呼んでいる」
古い女神“アマテラス”が、神話の中で自宅警備員をしたという場所の名前を取ったそうだ。
とても大事なものを守っていたに違いない。
「自宅警備員さ」
――なんてったって、神が就いていた職業だからな
エルザードが、あこがれの職業を語るように言う。
「古~い、古~い、話だぜ」
フッ
エルザードがハードボイルドな笑みを浮かべる。
「「だ、旦那さま~~」」
――かっこいい~~
二人の双子が頬を染めて、熱い視線を送った。
「そ、そうなんですね」
イオリが若干引き気味だが、隣でファラクが、うんうんとうなずいていた。
――これが、カルチャーギャップというものなのか??
「まあ、上から見るとな、巨大なドーナツ状に岩山が囲んでてな~」
「地下(砂の下?)に、船が通れる穴を空けてな」
「入口は、ちょうど地上部分が、この艦橋が通れるくらいに削っているのさ」
艦体を砂の中に沈めないと中には入れない。
「ま。 また今度空から見てくれ」
――飛行艇でな
しばらく、艦橋で周りの景色を見ていた。
二人は、そろそろ、入港の様なので自室に帰った。
「もう、旦那さまったら~」
“ワルダ”だ。
「お姉さまばかりは嫌です、かまってください」
“ランダ’である。
「夫婦仲はいいみたいね~」
「……そうなのか……」
レンマ王国は、一夫一妻制である。
一夫多妻制を目の当たりにした、イオリは軽く動揺していた。
取り合えず、エルザードとワルダとランダの中が良いということが分かった。
◆
静々と‘アマテラス”が、“アマノイワト’に入っていく。
中は、半分は砂地で、その場で艦を180度回せるくらいには広かった。
半分は、オアシスになっており、緑の木が生えている。
緑の木を邪魔しないように、基地となる建物が立っていた。
「入港完了」
港にもやい(ロープ)を繋ぐ。
早速、艦の補給と、飛行艇”イザナミ‘“の余剰物資を下ろし始めた。
「明日は、新しい仲間の紹介のために宴会をしたいと思う~」
エルザードだ、
「オオオ」
「久しぶりの
「オオオオオ」
「存分に楽しむぞ~~」
「オオオオオオオ」
基地内に、歓声が響き渡った。
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