ウイ1
名無しの視聴者
新しい動画見たか?
名無しの視聴者
なんの動画だ?
名無しの視聴者
ちょっと待てよ……これこれ、『サシャのお料理練習チャンネル』ってやつ
名無しの視聴者
なんだそれ? どんな魔物を討伐してるんだ?
名無しの視聴者
それが魔物の討伐やゲートの攻略じゃないんだよ
名無しの視聴者
なんだよそれ。何を流してんだ?
愛の使者
>>>ちょっと待てよ……これこれ、『サシャのお料理練習チャンネル』ってやつ
見た。ウイ
名無しの視聴者
あっ、ウイの人だ。ウイの人がウイっていうんだからウイなんだろうな
名無しの視聴者
その動画もそうだけどウイの人ってなんだよ?
名無しの視聴者
ウイの人、知らないのか? 青春ウォッチャー、有名なレビュー職人だよ
名無しの視聴者
いや、わかんねぇし!
愛の使者
見てみろ。ウイぞ
名無しの視聴者
だからウイってなんだよ……
ーーーーー
「な、なんだ……?」
「どうしたの、イースラ?」
サクッとギルドのみんなの分の朝ごはんを作って提供して、台所で三人揃って先に確保しておいた美味しいところを食べていた。
イースラは配信者メニュー画面を開いて何かを確認しながらパンをかじっていた。
しかし急に手を止めてぼんやりと画面を見つめ始めたイースラにサシャとクラインは顔を合わせて肩をすくめる。
「いや……こないだのやつ公開したんだけどさ」
「こないだの……トマトのスープ作ったやつ?」
「ああそうだ」
細かく編集を加えて見やすい動画として整えたイースラはタイミングを見て動画を投稿した。
最初の動画であるし今主流であるモンスター討伐ものの配信ではないのであまり期待はしていなかった。
どこかで話題になれば御の字だと考えていたのだけど動画を投稿してから少し時間を置いて成果を確認してみた。
すると想像をはるかに超える反響が動画に寄せられていた。
どうしてこんなに見られているのか分からない。
嬉しいのだけど困惑もしてしまう。
「…………なんだよこれ?」
配信に対してコメントもたくさん来ていた。
確認してみると同じようなコメントが並んでいて驚いた。
一瞬荒らしかと思ったけれど違う。
「ウイ?」
パッと目につくコメントは“ウイ”と書かれたものだった。
ウイだけのものあればここがウイみたいなポイントをあげているコメントもある。
「ウイってなんだよ……?」
回帰前色々と配信を見ていたこともあるイースラであったがウイというコメントがなんなのか分からない。
ただ悪い言葉ではないようで肯定的なものらしい。
イースラはコメントを遡ってみる。
どこがウイと言い始めたのか気になった。
「ブルーネーム……! しかもレビューって」
コメントの最初の方に初めてウイと書き込んだ人がいた。
愛の使者という名前のユーザーで名前の表示が青くなっていた。
ブルーネームと呼ばれる特殊な人で大きな影響力を持っていたり多くの金額を投じてくれたりする大口の視聴者なのである。
愛の使者は配信に対してレビューをしてくれていた。
レビューとは配信をオススメする行為で、レビュー紹介文と共にオススメとして一定のところで取り上げられたりする。
影響力の大きな人がレビューをして配信をオススメしてくれると一気に知名度が上がるのだ。
「なになに……血生臭い配信の中で平和な料理の光景を配信するという新たな試み。配信の中に出てくる二人の関係性は良く……非常にウイものである。ウイポイントが多く、危険な配信ではないためにウイを心ゆくまで楽しめる。ウイ」
レビューを読み上げてみた。
どうやら愛の使者が始まりとなってウイという言葉がコメントに溢れているらしい。
というか愛の使者のレビューを見て配信を見に来てくれる人はよく愛の使者の見ているものを追いかけているようだった。
「ふーむ……」
いくつかコメントを追いかけてみてなんとなくウイというものが分かってきた。
ウイだけでなくどこがウイのかコメントしてくれているものを見て推測する感じでは物慣れないピュアな感じやイースラとミュコの空気感にウイと言っているようだった。
もっと言うとミュコの最初の言い慣れない感じのコメントやイースラがミュコに料理を教えて顔を赤らめるところなんかにウイを感じるらしい。
「初々しい……ってことなのかな?」
愛の使者が他にオススメしているものを見てみたら男女でモンスターと戦っていて互いに心を寄せ合っているような節があるものだった。
男女の甘酸っぱい関係性を見ることが愛の使者の趣味のようで、そうした空気感をウイと表現しているらしかった。
イースラの配信の場合はイースラとサシャの関係がウイようである。
あとは何にでもニコニコとすぐに喜ぶサシャの態度もウイらしい。
「パトロンも愛の使者を始めとして多いな……」
お金や財宝などを配信商人に渡すともらえるポイントを配信者や配信動画に送る機能があり、ポイントを送ることや送る人のことをパトロンと呼んでいた。
愛の使者はレビューをしてくれただけでなくパトロンもしてくれていた。
「10000ポイント!? これは大きいな」
愛の使者のレビューを皮切りに配信の視聴者が大幅に増加してその中からパトロンしてくれる人も意外と現れていた。
評価してくれている人の中にはウイということだけなく、血生臭くない安心してみられることや飯を作るというほっこりすることに好印象を抱いている人も多かった。
狙い通りだとイースラは思った。
今はまだ戦うような配信しかないけれど後々こうした戦い以外のことを配信する人も増える。
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