第33話 すばるの言葉

そんなあゆみの人生に光が差したのは、高校時代のことだった。


すばるは彼女の担任の先生で、何かと彼女を気にかけてくれた。


ある日、あゆみは学校で思い悩んでいた。学園祭の実行委員長としてリーダーを任され、必死に準備を進めていた。


最初は自信を持って取り組み、みんなに指示を出してイベントの段取りを進めた。


しかし、当日になってから問題が次々に発生し、計画通りにいかないことばかりだった。


最終的に、準備が間に合わなかったり、思った通りに動けなかったり、予想外のトラブルが続いて、イベント自体は何とか形になったものの、あゆみの心は沈んでいた。


その日、教室で一人考え込みながら、あゆみは自分の行動を振り返っていた。


「どうして私がリーダーなんかやっちゃったんだろう…。みんなの期待に応えられなかった。もっとできたはずなのに…。」


そのとき、ドアが開いて、すばるが顔を覗かせた。


教室の片隅で一人悩んでいるあゆみに気づいたすばるは、少し困ったような顔で歩み寄ってきた。


「あれ?下校時刻過ぎてるよ。暗くなっているし、おうちの人も待ってるだろ?待ちすぎてミイラになっちゃうかもしれないよ?」


すばるは冗談交じりに言った。


あゆみはその言葉に一瞬驚いたが、すぐに笑顔を浮かべた。


すばるの軽い冗談が、少しだけ気持ちを和らげてくれるようだった。


「うーん、ミイラになるほど待たせてないと思うけど…。」


あゆみは微笑みながら返したが、心の中ではすこしだけ安心した。


あゆみは今日のことを打ち明けた。


すばるは少し考え込みながらも、優しく答えた。


「そんなに落ち込まなくても良いんじゃないかな? 行動を起こさなければ失敗は起きない。逆に言えば、行動を起こすことができたっていうこと自体が、如月さんの頑張りだよ。」


その言葉に、あゆみは少し驚き、そして心が軽くなった。


自分がどう思うかではなく、実際に何かをしたことが大切だということを、すばるは当たり前のように言ってのけた。


「行動できたってだけですごいことだよ。何もせずに後悔するより、何かを試してみる方がよっぽど価値があると思う。」


すばるの言葉に、あゆみは少しずつ自分の行動を肯定できるようになった。


その夜、あゆみは自分がしたことに対して、もう一度前向きに考え直すことができた。


確かに、すべてがうまくいったわけではないかもしれない。


でも、それは無駄ではなかったと信じられるようになった。


「私も、誰かを支えることができるような存在になりたい。」


そう思うようになったのは、その頃からだった。

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