第23話 偶然

夜、あゆみがリビングに出てきたのは、水を飲むためだった。


暗いリビングでソファに座る二つの小さな影に気づいたとき、彼女は立ち止まった。


「れんくん……りおちゃん?」


二人が同時に顔を上げた。その目には、涙が溜まっていた。

毎日毎晩ずっとソファで待っていたようだ。


「ごめんなさい……。」


れんが泣きながら言った。


「僕たちが悪かったんだよね?だから、あゆみちゃんが怒ってるんだよね……。」


りおも泣きながら「遊んでって言いすぎたからかな……」と呟いた。


あゆみはその言葉に、胸が締め付けられるような感覚を覚えた。


「違う、違うの……。二人のせいじゃない。全部、私が悪いの。」


彼女は二人を抱きしめながら泣き出した。


「私はね、子どもが苦手だったの。でも、二人は本当にいい子で……だから、余計に自分がダメだって思っちゃって……。」


れんが小さな声で言った。


「あゆみちゃんがダメなんて思ったことないよ。僕たち、あゆみちゃんがいないとダメなんだよ。」


その言葉に、あゆみの涙は止まらなかった。

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