第3話 お外に出る

-side ラルク-



「お外〜お外〜」

「ふふっ外だねー」

「とうとう、ラルクもはつ外だな、楽しみだ」



 2歳になった今日は、始めたお外に行ける日だ。父親ーーゼクスが抱っこしてくれてお外に運んでくれる。

 今までは安全のため、屋敷の2階に閉じ込められていたので、念願のお外。

 この世界がどんな感じなのか知りたかったので、本当に嬉しい。



 --カァーカァー



「お外なんもない?」

「な、なんもなくはないだろう?ほらあそこには、宿屋がある。そこには、我が家で働いている使用人の家があるよ。向こうには羊を育てている草原や馬を育てている古屋があるぞ」



 ふーむ。つまりは本当に何にもないんだな。

 お金がないから、道も整備できず、産業も誘致できない。



「お、あそこにゴブリンがいる」

「なぬ?」

「大丈夫、ふぁいあーぼーる」



 どーん。ゴブリンが粉々になった。


 

「ななな……」

「遊ぶ」



 とうっ……!と父親から飛び降りる。

 この日のために用意してきた魔法があるので試したくでうずうずしていたのだ。



「ブロック!」

「まあ!」

「なな……!」


 俺がそう唱えると、屋敷の周りの一面からブロック上になった土が出てきた。

 成功だ。やはり、思った通り。

 土ブロックというのは、クラフト系ゲームにおいて、基本中の基本の素材。

 これがなきゃ始まらない。逆にこれさえできて仕舞えば、あと、ベッドとピッケルとか剣さえあればなんとかなってしまうものなのである。



「回収!」



 俺が手をかざすと、アイテムボックスの中へ入る。アイテムボックスの中を見てみる。


石材

 ◻︎土ブロック 20


 どうやら回収も成功したみたいだ。順調そのものだな。



「ちょ、ちょっとまった、ラルク」



 と、ウキウキ気分でいると、俺の様子を眺めていた父上と母上が慌てた様子で聞いてきた。



「さっきのファイアーボールや土を土ブロックにする魔法はいつ覚えたんだ?」

「んー?結構前」

「ゴブリンを倒したのは初めて?」

「そう、いけそーだったから倒した」

「なんということだ……」



 父上は頭を抱えてしまった。うーんうーんと唸って色々考えている。気持ちは分かるよ?外に出た事ない子供がいいなり外に出たと思ったら雑魚とはいえモンスターを倒し、土とはいえ、物質の形を変形してしまったのだ。

 俺が親でも同じような反応をしていただろう。だけど、仕方ないのだ。あんたの子供は生まれた時から、そういう仕様ですので。



「なあ、ラルク。突然なんだが」

「んー?」

「お前、ダンジョンとか興味ないか?」

「えっ!あるある」



 俺は目をキラキラさせて答える。

 まさか、こんな早くにダンジョンの話が出てくるなんて。嬉しさ極まりない。


 

「ちょっとあなた……!」

「もちろん、保護者であろ俺の付き添いは必要だ。必要と思うんだったっら、キャロルにも同席を頼もう」

「それならいいか。ただし、1階層までですよ」

「それはもちろん」



 どうやら、話はまとまったみたいだ。



「やったー!やったー!ダンジョン♪ダンジョン♪」



 俺は思わずその場で小躍りする。


 

「全く、かわいいわね。それにしても、あの子、ダンジョンなんて単語どこで覚えてきたのかしら?」

「さあ、さっきのファイアーボールといい、土ブロック作成といい、うちの子は天才かもしれない。子供の成長とは早いものだな」



 そんなこんなで、男爵家が管理するダンジョンに行くことが決定したのだった。

 


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