第24話 さて、お次は朗読部門だ!他部門の講評も勉強になるなぁ・・・うん?知らない言葉が出て来たぞ?

 『朗読部門審査員の瀬原です。朗読部門の講評を行います。


 まず、アナウンスの講評でも言われてましたが、発声の小さな人が多く見られました。日頃の練習を充分積んでください。また、無声化、鼻濁音がきちんと出来ていない点も気になりました。Nコンで全国を目指すのであれば、基本的な技術がきちんとできていなければなりません。さもないと、全国では通用しないからです。』


 ・・・うん?なんか知らない言葉が出てきたぞ?“むせいか”?“びだくおん”?なんだそれ?きちんとできていないと全国で通用しないって?・・・これは・・・明日にでも神倉先輩に聞かなければ!先輩は全国でも通用した人だから、この“むせいか”と“びだくおん”もできるはず・・・。朗読部門は関係ないから、って思わずにちゃんと聞いておいて良かったぁ。ひょっとしたら、私のウイークポイントかもしれないもんね。


『二つ目です。これもまたアナウンスでも言われていたことですが、“文頭は上げる、文末はしっかり下げる”が基本です。朗読では演出上、文末を上げることもあるかもしれませんが、原則は下げます。


 また、勝手な節をつけて語るのも厳禁です。演劇と朗読の明確な違いはここにあります。朗読は元の言葉に即して、地の文を正確に伝え、作者の意図を尊重しなければなりません。演劇の場合は、演出家や役者の個性が表面おもてに出ます。それは当然のことで、またそうで無ければ演劇として成り立ちません。しかし、朗読では語り手の個性が出てはいけません。聞き手に対し、正確に作者の意図が伝わるように語ることが重要なのです。』


 えっ?そうなんだ。小説の文章部分はまだしも、台詞は演劇みたいにしゃべるのが正解だと思ってた。そうじゃないんだなぁ・・・。


『三つ目です。間を取る場合、それぞれの文章センテンスが、どこに架かっていくのかを考えて取りましょう。これもまた、作者の意図を正確に聞き手に伝えるために重要なポイントとなります。』


 そうか・・・朗読もまた聞き手に正確に伝えることが重要なんだぁ。そこはアナウンスと同じなんだなぁ・・・演劇と放送では、やっぱり技術的なことが違うんだ。


『四つ目です。朗読では、長い原作のごく一部を切り取って発表します。どのコンテストでも制限時間は絶対です。制限時間以内に読み終えることができる分量を切り取らなければなりません。その際、時間を気にして、中途半端な箇所で切り終わっている人がいました。しかし、それは駄目です。あれ?続きは?と聞き手がなってしまう所で切らないようにしましょう。内容がひとまとまりになっていて、その中で一応の落ちが付いているような部分を取り出すことを意識してください。』


 うんっ?今、結構難しいことをおっしゃったぞ。・・・制限時間内に収まって、且つ切り取った部分だけで起承転結が見られるところを選べって・・・相当原作を読み込まないと探せないんじゃぁ・・・。アナウンス原稿は、もともと起承転結を考えて書いているから尻切れトンボなんかにはならないけど。・・・益々朗読は私に向いていないような気がしてきたぞ。


 『最後に、課題原稿についてです。課題原稿は必ずしも皆さんが知っている作品であるとは限りません。むしろ、ほとんどの場合、初めて読む作品ではないでしょうか?しかも、全体では無く、ごく一部が切り取られたものです。それでも与えられた文章の中でもよく読んで、先の展開を考えながら読みましょう。そうでないと、聞き手に書かれてある情報を上手く伝えることができません。』


 いや・・・凄く難しいことを今おっしゃってるぞ・・・。アナウンスの課題原稿は、それ単体で完結しているニュースがほとんどだ。だから、内容が正確に伝わるように読み上げるのは、そんなに難しいことじゃない。でも、朗読の課題原稿は、まだその先に続きがある文章なんだ。それを“先を予想して読め!”って・・・相当な読解力が無いと難しいんじゃないの?・・・朗読で上位を取る自信がどんどん無くなっていくよぉ・・・。やはり、私はアナウンス一本だな・・・うん!これからもそうしよう!


『あと、アナウンスの講評でも言われてましたが、マイクの使い方に習熟しておきましょう。自分の声をしっかりとマイクに拾わせないと良い発表にはならないことに留意しましょう。


 以上で、朗読部門の講評を終わります。』


 うむ!ちゃんと聞いておいて正解だった。新しい発見もあったし、自分が朗読には向いていないってことも判った。他部門の講評も勉強になるなぁ。


『最後に、番組部門の講評です。』


『番組部門の審査を行いました蜂伏です。番組部門の講評を行います。


 番組部門では、与えられた制限時間をどう使うかが重要です。“尺が足らない”、もしくは“尺が余る”と言うのは、そもそも番組作りの基本がなっていません。まず、企画段階で、四分間という尺で足りる内容なのかどうか、または尺が余らないかどうかをしっかりと検討しましょう。企画段階での失敗は、番組を作る前から失敗作であることを決定付けてしまいます。単なる思いつきで企画を立ててしまうのではなく、スタッフ全員でとことん審議してください。


 次に、素材集めです。とにかく必要だと思われる取材を事前にしっかりと計画し、撮りにいくようにしましょう。


 素材をそのままベタで使うことは、まずありません。必要な箇所だけ切り取って使います。通常、撮った素材の三分の一が使えれば良い方です。全く使えない、没になる素材も出てきます。なので、必要だと思える素材は、できるだけ多く様々なものを集めておきましょう。そのためにも、企画段階でどのような素材が必要なのか、何を集めておかないといけないかを充分に審議して、明らかにしておかねばなりません。


 台本作りも重要です。台本をしっかり準備することで、必要な素材がはっきりします。企画会議が終わったら、真っ先に台本作りに着手しましょう。


 さらに、取材計画も重要です。必要な素材が特定の日や時期にしか撮影できない事があります。例えば、神社やお寺のお祭りを考えてみましょう。毎年行われているお祭りとは言えども、特定の日にしか行われません。その日を逃すと一年後まで撮影することができません。そういった取材せざるを得ない日に取材予定を入れておかねばなりません。


 また、取材をする前に、取材相手や団体、企業などには必ずアポを取ることも忘れないようにしましょう。当たり前の事ですが、取材は相手側の都合を優先しなければなりません。アポ無しの場合、取材をさせてもらえない事もあります。ですから、取材計画には余裕を持たせないと作品の完成に間に合わない事も起こりえます。


 機材の整備も重要です。今回、映像の音声が不明瞭な作品がありました。映像だけでなく、音声も大切なソースです。カメラの内蔵マイクだけに頼らず、ICレコーダーと指向性マイクも用意し、別録りで音声も録っておきましょう。


 編集は、作品作りにおいて重要な要素の一つです。妥協せず、作り込みを行う程作品の出来は良くなります。しかし、当然のことですが、作り込みをするには時間がかかります。全ての取材を早めに終えて、編集の時間を確保しましょう。時間がカツカツの状態で編集に入ると、思うような作品に仕上がらない状態でコンテストに出す羽目になります。


 以上のように、企画、台本、映像素材、音声素材、編集、それぞれをどれだけきっちり用意できるかで良い作品ができるかどうかが決まります。四分間もあれば、かなり多くの情報を詰め込めます。次回のコンテストでもしっかり作りましょう。』


 うーん・・・番組は作品自体を見ていないから講評を聞いても全然実感が湧かないなぁ・・・。でも、講評を聞いていると、なんだか作ってみたいって気にもなってくる。アナウンスと並行して作れないかなぁ・・・他の学校の人はどうしてるんだろう?さっきの交流会で仲良くなった人に聞いてみようかなぁ・・・。


『では、いよいよ各部門の結果を発表します。』

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