第5話 第46小隊入隊
黄昏の空に保護されておよそ一週間、最初は囚人のように管理された生活になれなくて苦労したが3日目からもう考えることを放棄していたら慣れた。
俺はこの1週間基本的に身体の検査と事情聴取、そして俺のマキナの解析が行われた。
身体検査に関しては特に異常はないらしい。事情聴取ではどうして非常宣言が発令されていたのに外にいたのかと言うこととか聞かれたがその場でそれらしい言い訳をして解放された。
正直甘いんじゃないかと思ったがそこは置いとこう。
そしてマキナについてだがこれは未だ解析中だそうだ。
まだ俺のコントロールが未熟なせいで解析中に俺の紋章に戻ってしまうことがあるので基本的に1日数時間しか解析ができない。
そして今日は久しぶりに真白たちと会えることになっている。
「隼人君、久しぶり」
「おひさです隼人さん」
「お久しぶりです隼人さん」
真白に続いて美春、美濃部も入ってきた。
「ああ、久しぶりだな」
「どう、ここでの生活は?」
真白が心配そうに聞いてきた。
「まあまあだな。今のところ検査しかしてないからなんとも言えないがな」
「そう。でもここも慣れればいい所だから」
住めば都ってことか?
「隼人さん、少なからずここにも慣れてきたと思います。今日我々はあなたにこの開拓組合について説明する為にきました」
美濃部が部屋の電気を消して付けてあったスクリーンに映像を映す。
「まず改めまして我々開拓組合についてどれほど知っていますか?」
「この一週間少しばかりだが学んだ。この日ノ本にはそれぞれに計8つの支部があるってこと。それとそれぞれの支部に役職の違う大隊が存在してるってとこだな」
あまりにも暇だったので施設の人に無理言って本を読ませてもらっていた。
「その通りです。もう少し詳しく説明すれば我々黄昏の空はここ関東地方、それから上から北海道地方は雪原の銀泉、東北地方は豊穣の盆海、中部地方では鋼鉄の参道、近畿地方は神光の帝庭、中国地方では烈火の砂丘、四国地方では轟雷の荒海、九州地方は温華の繁栄の計8つの団がそれぞれ当てがわれて地域を守護しています。そしてそれぞれの団にはその団の総団長が一人、そしてその総団長を含む6人が隊長を務める6つの大隊が存在します」
スクリーンの映像が変わる。
あと、真白と美春の二人は映画じゃないんだからポップコーンを食べないの。
いや、いらないから。
「まずは戦士大隊、通称ウォーリア隊。近接戦闘を得意とした斬り込み隊です。そして魔術大隊、通称ウィザード隊。魔法や陰陽術を使う開拓者が属する隊で破壊力で言うならここが一番ですかね。次に騎士大隊、通称ナイト隊。護りに特化した隊で解放された領土の安全を守ることをメインにしている隊です。次に探索大隊、通称ハンター隊。彼らは隠密行動や狙撃などを得意としている少し癖のある隊です。次に支援大隊、通称サポート隊、本部や現地で戦闘隊員たちの支援をする隊です。ちなみに僕はこのサポート隊に属しています。そして最後に医療大隊、通称メディック隊。回復系のマキナを持っている隊員が配属されている部隊です。以上が開拓組合における大隊の種類です」
ん?待てよ。隊員それぞれがその大隊に所属しているなら真白が率いるこの小隊はなんなんだ?
隼人は手を挙げて疑問を吐いた。
「隊員がその大隊に所属してるならこの真白の小隊はなんなんだ?」
「いい質問ですね。それを説明するならその前にマキナについて説明する必要がありますね」
またスクリーンが変わる。
スクリーンには小難しいそうなあるマキナの設計図が映し出された。
「マキナ、正式名称真魂顕現兵器。マキナとはその人それぞれの在り方を具現化した兵器のことです」
「ようは人の心を形にしたものってことか?」
「そう捉えてもらって構いません。マキナにはそれぞれ個人個人によって姿、能力が変わります。例えば剣や刀、杖に銃、他にも武器以外にも色々な形のマキナがあります」
大隊それぞれに特徴があるのならマキナも千差万別であることに疑問はない。
メディックとかがあるならもしかしたら注射器とかもあるかもしれないな。
「そしてマキナは2種類に分けられます」
「2種類?」
「通常、マキナは一つにつき一つの特殊能力があります。少し違いますが隼人さんの場合あの刀に火を纏うとかがそれに当てはまります」
「なるほど・・・」
「そしてもう一つ、2つ以上の能力が備わっているマキナのことを我々はエクス・マキナと呼称しています」
「エクス・・・マキナ・・・・・・」
「ちなみに真白さんのマキナはエクス・マキナに属します」
「そうなのか?」
「えへへーー」
真白に目を向けると真白は照れ臭そうに頭をかく。
俺が見た真白のマキナの能力は氷の生成だけ。
他にも能力があるのか。
「ここで先程の隼人さんの疑問にお答えします」
「私たち第46小隊は真白先輩を守る専用の特殊小隊なのです」
「真白専用の特殊小隊?」
そんなにも真白のもつマキナの能力が凄いのか?
「隼人さんは真白さんが世間でなんと呼ばれているか知っていますか?」
「え、あ~え~っと……」
隼人は頭絞りだして考える。
そういえばなんかテレビで言われてたっけ?
あ~、やべ、覚えてね~。
「悪い。分からねえわ」
隼人は諦めて素直に分からないと答え。
それに美春が顔を寄せて言い寄ってきた。
「隼人さん知らないんですか!?あの想いの歌姫、白銀真白先輩を!」
あ~そうだ。
そうだ、真白のやつ、世間では歌姫とか呼ばれていたな。
あと、もうわかったから真白に関して語らなくていいから。
お前のその真白愛は伝わったから。
ほら真白も照れてるぞ?
あとポップコーン飛んできてるからせめて口の中からにしてから話せ!
「え~、まあとにかく美春さんの言う通り真白さんは世間では歌姫と呼ばれています」
「それが真白のマキナのもう一つの能力に関係するってことか」
「その通りです。そしてその能力の発動中は真白さんは基本無防備の状態です」
「だから専用の小隊ってわけか」
「その通りです」
よっぽど真白の能力は有用かつ貴重なんだろうな。
じゃなかったら小隊一つ作ってまで守ろうとしないからな。
「そこでなのですが隼人さんには我々第46小隊に入っていただくことが昨日決まりました」
「理由は?覚醒直後の素人を特殊小隊に入れるぐらいだ。それなりの理由があるんだろ?」
俺は美濃部に確信を持って聞く。
普通美濃部のようなサポーターは別かもしれないが、護衛対象を守るための戦闘員はそれなりの実力が必要なのは当たり前だ。
特にその護衛対象が代えが効かないほどな。
それなのにその護衛に俺を選ぶということはよっぽどの理由があるはずだ。
俺の質問に美濃部が恥ずかしそうに答える。
「大変お恥ずかしいのですが、我々も組織である以上多少なりとも派閥がございまして……」
「派閥って……」
隼人は分かりやすく呆れた顔をする。
「それに加え、今はそれぞれの大隊からこちらに人を引っ張ってこれるほどの余裕もなく……」
「仕方なく俺を補充要員としたってことか……」
「はい……」
こんな狂獣なんていうバケモンに国の大半が支配された状況で派閥とか……上の考えることはわからねえな……。
「以上で説明を終えますが、何か質問はありますか?」
美濃部は部屋の明かりをつけ俺に聞く。
俺は少し考えて答える。
「いや、特にはない」
そう言って隼人は立ち上がり美濃部に向かって手を前に出す。
それにきょとんとする美濃部。
「これからよろしくな」
それを聞いて美濃部は笑みを浮かべ隼人の手を取る。
「こちらこそ、よろしくお願いいたします」
男と男の固い握手を交わす。
「これから同じ仲間としてよろしくお願いね、隼人君」
「よろしくお願いします隼人さん!」
「ああ、二人もよろしくな」
隼人は真白、美春とも握手を交わす。
こうして第46小隊に雨宮隼人が入隊したのであった。
狂獣の華 鳳隼人 @dusdngd65838
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