第15話 僕が逃げた、あの日のこと
僕の妹、あんこはね、生後6ヶ月のときに、黒猫の配達員が来たすきに「スッ」って外に出ていっちゃったんだって。
ママは何本もの通りを全力で走って、ようやく連れ戻したらしい。
「スッて一瞬で消えたよ……」って、ママは今でも言ってる。
僕、ちょっとだけ羨ましかった。
リードのない世界を、思いっきり走り回るってどんな感じなんだろう?
もうすぐ2歳の誕生日を迎える僕だけど、そんな大冒険、まだしたことなかったんだ。
……昨日までは。
パパが新しいリュック型ハーネスを買ってくれてね、
おやつも、牛のヒヅメも、僕のお気に入りのボールも全部背負える。
レモンイエローで、金色のぼくにぴったりのやつ!
超目立つ!超かっこいい!
ウキウキでその新しい装備を背負って、ママとパパとお出かけしたんだ。
ママがバラの世話をしてるすきに、僕はパパを連れてちょっとだけダッシュした。
そしたらさ……リュックが!スポーン!って抜けた!!!
えっ!?って思った時には、もう僕はママからずいぶん離れてた。
5メートルの伸びるリードが、リュックごとスルリと外れたらしい。
パパは反射的に追いかけてきたけど、僕はそのまま角の向こうにいるママを見つけた。
……あれ?ママ、僕の方見てないけど??
「クリ!」ってパパが叫んだ声で、ようやくママも気づいた。
今か今かと、僕は待った。そう、あんこのときみたいに、僕のことを追いかけてくれるはず!
……と思ったら。
ママ、足をドンって鳴らして一言叫んだだけで、家の方に走っていった。
え?え!?!?
ちょ、マジで!?!?
僕のこと、置いて帰る気かこの人!?!?
……いや、ほんとはちょっとだけ、泣きそうだったけど!
焦った僕は、全力ダッシュでママを追いかけた!
が、止まらなかった。
家を通り過ぎちゃった。
だって僕、ボーダーコリーだもん!
一ブロックの距離なんて、30秒で行けるよ!!
でもこの女の人、ほんとに余裕あるなぁ……
僕が家を通りすぎても、全然慌てない。
べ、別に帰ってきたわけじゃないし!これは……そう!通りすぎただけだし!
電柱を2本はさんで、僕は玄関を開けてるママを見た。
……さてさて、この人、ついに僕を迎えに来るのかな?
すると、ママは家の玄関を開けて、また閉めたんだ。
それから数歩、僕の方に歩いてきて……ゆっくりしゃがんで、腕を広げた。
「クリリ〜〜〜」
……チッ。なによその余裕。
この人、僕のこと完全に見抜いてる顔じゃん。
でも僕、律儀な犬だから。
たった0.5秒だけ悩んでから、猛スピードでママの腕の中に飛び込んだ。
こうして、僕の逃走劇は2分で幕を閉じた。
でもね、その2分間でぼくは2つのブロックと6本の電柱を通過したんだぞ?
(あんこ:ふーん、それがエキサイティングな逃走劇ね?)
そのあと、僕は車に乗って桜祭りへ!
ママは得意げにパパにこう言ってた。
「あんこだったら、きっと追いかけてたけど……クリなら、大丈夫。ちゃんと戻ってきてくれるって、信じてるの。あの子は、絶対に、私のところに帰ってきてくれる子だから。」
ふん、得意満面の顔しやがって。 僕のこと、完全に分かってるって思ってんだな?
……いやまあ、たしかに僕は帰ってきたけど。
帰ってきたけど!
でももうちょっと心配してくれてもいいじゃん!?
(パパ:でも結局、めっちゃ笑顔でママに甘えてたよね?あれ全部写真撮られてたよ?)
僕はそのまま、ママの手を前足でホールドして、ナデナデしてもらいながら祭りを楽しみにしてた。
ピンクの桜の下、僕はいつも通り一番かっこいい金色の犬!
通りすがりのおじいちゃんおばあちゃんたちが写真をいっぱい撮ってくれた。
でもね、僕はじっとしてられなかった。
さっきちょっとでもママと離れたことが気になって……
写真を撮られてる間にも、何度もママのところに走って戻っちゃった。
結局、ママと一緒に桜の下でツーショットを撮ったんだ。
空は晴れてたし、風は冷たかったけど、
桜は満開で、僕はきらきら光る金色のボーダーコリーで、
そして――なにより、大好きなママと一緒にいた。
だからやっぱり、外の世界よりも、
僕のいちばんの居場所は……
この人のそばなんだよね。
まあ、今この瞬間も、僕はこの女の人の足元にぴったりくっついて寝そべっているわけだけど。
カタカタとキーボードの音が聞こえる。どうやらこのお話は、しばらくお休みに入るらしい。
でも、ママが言ってた。「栗の誕生日に、また再開する予定だよ」って!
うわー、楽しみすぎる!
お話が止まってるこの2ヶ月のあいだに、どんな冒険が待ってるのかな?
今年の僕のお誕生日は、どんなに面白い日になるんだろう?
うんうん、それはまた今度、たっぷりまとめて話すね!
だから――ちゃんと待っててね!
ここまで読んでくれて、本当にありがとう!わんっ🐾
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写真もあわせて更新いたしました:
桜じゃないけれど、春の思い出の一部をそっとお裾分けです。
よければ、こちらも覗いてみてくださいね。
https://kakuyomu.jp/users/kuripumpkin/news/16818622172174820325
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