第9話 猫の女王、アイスクリーム!

 私はアイスクリーム。優雅な姿と気品あふれる猫よ。名前は甘くて可愛らしいけれど、勘違いしないで。私は決して誰にでも撫でられるような猫じゃない。

 それに、この家で唯一の女王でもあるのよ。


 私の毛色は完璧な三毛模様。白は気高く、黒は神秘的、オレンジは活力の象徴。まさに猫界の頂点に立つカラーリングといえるでしょう。


 歩く姿はまるで王族のようにしなやかで、一つ一つのジャンプは芸術そのもの。見惚れるのも無理はないわね。


 しかし、私の名前……うん、人間のネーミングセンスというものは、猫には理解しがたいものね。

(ママ:「おいおい、毎回名前のセンスに文句言わないでくれる!?」)


 私の人間、まあ、一応「合格レベルの下僕」として認めてあげてもいいわ。

 毎朝、ちゃんと私の朝ごはんを用意するし、たまに準備が遅くてイライラすることもあるけど、一生懸命なのは認めてあげよう。


 でも、ひとつだけ奇妙な習慣があるの。

 彼女は私に向かって、ずーっと話しかけてくるのよね。


 例えば、私が窓辺で優雅に佇んでいると、彼女はこう言う。

「アイスクリーム、今日も美しいね~。」


 ――当たり前でしょ? そんなの言われなくても知ってるわよ。


 それから、私がカボチャの尻尾をおもちゃにして、ちょいちょいと遊んでいると、彼女は慌てて言うのよね。

「こら!カボチャをいじめちゃダメ!」


 ――違うわ、これは訓練よ。アイツ、あまりにも大人しすぎるのよ。ちょっとは反撃することを覚えさせなきゃ!


 それに、以前こんなこともあったの。

 私が犬のクリの背中にちょこんと乗って、完璧な暖房器具として活用していたら、ママが目を丸くして叫んだのよね。

「アイスクリーム!犬の上に乗っちゃダメでしょ!!」


 ――なんでダメなの?あんなに頑丈そうな体してるんだから、移動式ソファとして最適じゃない?


 こう見ると、私の人間はまだまだ訓練が足りないわね。

 本物の「優秀な猫の下僕」になるには、もっと精進してもらわないと困るわ。


 うちには猫がたくさんいて、犬も二匹いるから、毎日がとても賑やかで退屈しないのよ。


 カボチャは一番おとなしい猫で、私がどんなに尻尾で遊んでも、ほとんど抵抗しないの。

 ミカンは気が短くて、いつも自分がリーダー気取りだけど、私から見ればただのちっちゃいオレンジ色のケチなやつよ。

 クリムはちょっとミステリアスな性格で、いつも部屋の隅で静かにしてる。でも、私は知ってるのよ。実はこっそり私たちの動きを観察しているのよね。まるでスパイ猫みたいに。

 コメは元気いっぱいで、いつも家の中を走り回ってる。突然私の前に飛び出してきて驚かせるのが趣味みたいだけど、正直、迷惑極まりないわ。


 そして、犬のクリとアンコ……うん、彼らはこの家で最も謎めいた存在ね。


 私は最近、驚くべき事実に気づいたのよ。なんとクリという生き物は、全く根に持たないの!

 私は何度も実験してみたわ。鼻先にしっぽをチョンと当てたり、棚の上から飛び降りて驚かせたり、おもちゃを横取りしたり……それでも、彼は怒るどころか、ただポカーンと私を見つめた後、嬉しそうに尻尾を振るのよ。信じられる?


 クリは体が大きいくせに、実はものすごく臆病なのよね。私がちょっと睨んだだけで、すぐに目を逸らして「ごめんなさい…」みたいな顔をするの。


 でも、クリが役に立つ時もあるのよ。例えば、私がテーブルの上の物を落としたいけど、ちょっと面倒くさい時……

 そんな時は、そっと「にゃーん」と甘えた声を出して、ターゲットを示すだけでいいの。すると、クリは嬉しそうに突進して、見事にすべてを床にぶちまけてくれるのよね。

 人間が怒って駆けつけてくるころには、私はすでに窓辺で優雅に毛づくろい中。「あら?何か問題でも?」って顔をしてね。


 アンコはというと……正直、バカよね。

 とにかくエネルギッシュで、いつも「遊ぼう!遊ぼう!」って寄ってくるけど、猫のルールを全然分かってないのよ。

 だから、彼が近づいてきたら、私たちはサッと逃げるのが鉄則。すると、アンコは「え?なんで?」ってキョロキョロしながら、その場でくるくる回るの。ほんと、笑えるわ。


 でも、私は知ってるのよ。

 実は、犬のそばって、とても暖かいのよね……。

 たまに、こっそりクリの横に丸まって寝ることもあるの。人間のベッドも悪くないけど、犬の体温って、なんだか特別に心地いいのよね。


 最近、私は恐ろしい事実に気づいてしまったの……。

 それは――私の人間がこっそり私を盗撮していること!


 毎日、私が一番快適な日向スポットでお昼寝していると、気配を消して近づいてくるのよね。

 そして、例の長方形の黒い機械を取り出し、「カシャッ!」と音を鳴らすのよ。


 その写真は、どうやら「X」とかいう謎の場所にアップロードされるらしいわ。

 しかも、そこにはこんなコメントが添えられるのよ。

「うちの猫、可愛すぎる!」


 ……いやいや、可愛いのは当たり前でしょ?

 それよりも、無断で撮るのはどういうつもり!?


 さらに恐ろしいのは、その後の行動よ。

 人間はスマホを見ながら、怪しげな笑い声を漏らしつつ、

「あぁぁぁ、猫って本当に天使……」とか言い出すのよ。


 ……いや、私は天使じゃなくて、猫よ!?


 ちょっとこれは、深刻な猫権侵害の問題ね。

 私がこのまま黙っていたら、いつか動画まで撮られて、「へそ天寝姿」とかいう恥ずかしい映像を公開されるかもしれない……。

 今のうちに、スマホを叩き落とす訓練を始めた方がいいかしら?


 でも、一番ありえなかったのは――帽子を被せられたことよ!!


 そう、ある日、あの人間は突然とんでもないことをしでかしたの。

 私の頭に、ピンク色の毛糸で編まれた帽子をかぶせたのよ!しかも、おまけにリボンまでつけて……。


 そして、目をキラキラさせながら叫んだの。

「アイスクリーム!やばい!可愛すぎる!!」


 ……可愛いですって?

 違うわ、人間。猫にとって一番大切なものは尊厳よ!!


 もちろん、私は怒らなかった。そんな下品なことはしないわ。

 ただ、優雅に頭を振って帽子を吹っ飛ばし、最後に前足でそっと押さえて意思を示しただけ。

 ――この物体、受け入れるつもりはない。


 ところが、その時、私は見てしまったのよ。

 隅っこでじっと帽子を見つめるカボチャの姿を……。


 ……え、ちょっと、まさか被りたがってるの!?

 ふふ……やっぱりこの家で本物のおバカはカボチャだったみたいね。


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 猫の日、すべての猫たちが幸せで長生きしますように!

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