栗あんの話し

栗パン

第1話 僕の名前は栗、金色のイケメンだ!

僕の名前は栗、ボーダーコリーだ。


僕の毛色は珍しい金色、太陽の光を浴びればキラキラ輝いて、めちゃくちゃカッコいいって自負している。


でも、僕の飼い主はどういうわけかその僕に「栗」って名前をつけた。なんでかって?


理由は単純明快。彼女がとんでもない食いしん坊だからだ。


僕の初めての記憶は、飼い主が僕を迎えに来た日のことだ。


その時の彼女の顔、今でもはっきり覚えている。何て言うか、勢いしかないって感じ。

あの日の僕はまだ三ヶ月の子犬だったけど、負ける気なんてさらさらなかった。


必死に噛んだり、飛び跳ねたりして抵抗したんだ。


「彼女の旦那まで噛みちぎってやる勢いだったぜ!」


(いやいや、三ヶ月の君の歯で何ができるって言うの?と、突然あんこが割り込む。)


……えーと、それは置いといて。


結局、僕の全力の抵抗なんてお構いなしに、彼女は僕を抱き上げた。


聞いた話だと、彼女は僕を見た瞬間、他の犬には目もくれずに「この子!」って決めたらしい。


ふふ、僕のイケメンぶりが罪深いのさ。


家に着いて早々、僕は20分でトイレを覚えた。これ、すごいことだよね?


なにせ僕の「妹」――いや、「天敵」と呼んだほうがいいかな――彼女は覚えるのに丸々七日もかかったんだ。


しかもその間、あちこちにトイレを間違えるたび、飼い主は泣きそうになってた。


その点、僕は一発で覚えるんだから、やっぱり僕の頭脳は桁違いだよね。


さて、僕の賢さをもっとアピールさせてもらおう。


僕は狭いケージの中で、一人でいろいろ考えて、試行錯誤して、


ついに「おすわり」「まて」「ふせ」「お手」を全部マスターしたんだ!


さすが、ボーダーコリーの僕だよね!


でもね、一つだけ失敗したことがあるんだ。


それは僕の「ふせ」のポーズ。

未だに直らないけど、これ、実は「柴犬ふせ」なんだよね。



飼い主が僕を初めて「ふせ」させた時、僕のお尻を押さえつけながら「おお、コーギーみたい!」って喜んでたんだ。


いやいや、これ柴犬スタイルだから!

まぁ、飼い主が喜ぶなら僕もいいかなって思って、それ以来ずっとこのスタイルで「ふせ」してるんだ。


何だかんだで、僕は彼女のそばにいるのが好きなんだよね。



僕は三ヶ月の頃から、近所の公園を三時間走り回ることができるんだ!


飼い主をヘトヘトにさせて、帰り道で「私が犬になったみたい……」って嘆いてたっけ。

そういえば、飼い主は僕と出会う前、とても忙しい毎日を過ごしていたらしい。


「勉強や生活で手一杯で、空を見る余裕すらなかった。」と彼女は言ってた。


でも、僕と暮らし始めてから、彼女は変わったみたいだ。


「栗くんと散歩すると、今まで気づかなかった風景が見えるのよ。」


「立ち止まって深呼吸すると、世界が少し優しくなる気がする。」


彼女はそう言いながら微笑んでいた。
僕はただ全力で走っていただけなのに。


でも、その笑顔を見るたびに僕は思うんだ。


「まぁ、僕が飼い主に少しでも役立ってるなら、それも悪くないか。」ってね。

だから僕は――彼女が笑顔でいられるように、今日も全力で走るんだ!

どれだけ走っても足りないくらい、彼女がずっと笑っていてくれるといいなって思うんだよね。


でも、僕の飼い主は僕以上に「執念」がある。


「栗くん、ほらほら!取ってきてー!」


彼女はおもちゃを全力で投げるけど、僕は動かない。だってそこにおやつがないなら、取る意味がない。


しかし、彼女はめげない。おもちゃを拾って戻ってきて、また投げる。そしてまた拾いに行く。

正直、僕からすると、「この人、僕より犬らしいんじゃないか?」って思う。


投げて、拾って、投げて、拾って……そのループが永遠に続く。



「人間って大変だなぁ」と僕は横目で見ながら、お気に入りのクッションの上でゴロゴロしてる。


でも、たまに僕が気が向いて走り出すと、彼女がびっくりして「え、やる気出たの?」ってめちゃくちゃ喜ぶんだ。


その時の笑顔を見ると、まぁ、たまには付き合ってやってもいいかなって思うんだよね。


あ、そうそう。僕が世界で一番カッコいい犬だって話、もうしたっけ?


……いや、一度だけ僕よりカッコいい犬を見たことがあるんだ。


それはテレビに映った「りく」って犬だ。


あいつ、僕と同じ金色の毛並みで、まるで画面越しの僕みたいだった。


正直、「俺、こんなにカッコいいんだな」って感心しちゃったよ。


ちなみに、僕がこの家に来た時、実はもう先住民がいたんだ。


君たち、何だと思う?


正解は――猫だよ!僕の大好きな猫!


いや、正確に言えば、僕が好きなのに、彼らは僕が嫌いらしいけどね……。


飼い主はずっと野良猫の保護をしていて、気づいたら6匹も飼っていたらしい。


彼らは「猫様」として、この家で贅沢な生活を送ってるんだ。


僕が来た時、彼らは僕に全く興味がないどころか、むしろ冷たかった。


「何、この落ち着きのない奴?」って顔で僕を見てたけど、僕はそんなの気にしない!


初日から全力で尻尾を振りまくって、友達になろうと頑張ったんだ。


だけど、彼らは僕をじっと見つめて……僕も見返して……こうして10分間の睨み合いが続いた。

そんな中、一番大きいドラゴンリーがゆっくり僕に近づいてきたんだ。
茶色い縞模様がピカピカしてて、なんか僕と同じくらいイケメンだなって思ったよ。


彼は僕の鼻先でピタッと止まると、じーっと僕を見つめてきた。


正直、ちょっとびっくりしたけど、もちろん僕は堂々としてたさ!……たぶんね。


その後、彼はふいっと鼻を鳴らして、尻尾をゆっくり一振りしながら優雅に去って行った。


完全に「お前なんか相手にしないよ」って言ってたね、あれは。

風に吹かれながら、僕はつぶやいた。「友達になるのって難しいなぁ。」



でも、僕には分かるんだ。

猫様たちは僕を監視してるみたいだけど、その目の奥にはちょっとだけ好奇心も混じってる。


それくらい、僕にだって分かるんだよ!


僕は彼ら(猫)が時々僕を『犬』って見下す理由も理解してる。


たぶん『頭がいい』犬が怖いんだろうね。


もし僕が死んだら、墓碑にはこう書いてほしい。


「ここに猫と友達になりたかった犬、眠る」


……まぁ、今のところ成功してないんだけどね!


そういえば、あんこがこの家に来るのは、もう少し先の話だけどね。


まぁ、僕の毎日はこんな感じだけど、これから先、どんな冒険が待ってるんだろう?考えるだけでワクワクしちゃうよ!

こんな僕だけど、これからもよろしく!

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