第3話 暗闇のさかいめ
第1.00章
暗闇のさかいめ
七瀬いをり(17才)と白上風花(19才)はここを歩くべきでない時間にこの森を歩いている
いをりが見上げると枝と葉に覆われた空からあかね色の空のすきまが見えた
七瀬いをりは学校に行くときのローファー(22.5cm)を履き、紺色の女子校の制服、
ブレザーと折り目の細いスカートで姉の白上風花の横を歩いている
白上風花が履いているのはミュールサンダル(22.5cm)
青いカーディガンを羽織り、妹の七瀬いをりが離れないよう歩いている
風花はいをりに言った
「暗いし足元木の根っこだらけだからスマートフォンの背面ライト使おう
足元照らした方がいい。でないと転ぶよ」
いをりは聞いた
「バッグにモバイルバッテリー入ってる
おねえ充電何パーセント?わたし37」
「27だけどわたしのはスティーヴジョブズが作ったiPhoneだから
それを真似ただけのいをりは私に勝てっこない
先にバッテリー無くなってわたしに泣きつくのは目に見えてる」
「ジョブズ死んだよ。手術拒んで断食療法やってるうちに癌が転移したんだよ
いまのCEOはティムクック。マーケティングが専門だよ
バッテリーのことなんて気にしないよ。デザイナーのジョナサン・アイヴは
ジョブズが死んでから冷遇されてるって聞くし、こんなんじゃどうせ近いうち
Appleはジョブズをクビにした時のように方向性をうし」
風花は言った
「だまれ、いをり
ねえ、バッグの中、飲み物か食べ物ない?」
「なんでよ
まるで遭難してるみたいじゃん
さっきお店の看板あったよ、ずっと一本道だよ」
「わたしは午後の紅茶あるけどゼロカロリー。血糖測定器とインスリン、
ブドウ糖注射とグルカゴン注射。食べ物がない」
「そんなのあったって、おねえが意識失ったら意味ない
わたし注射なんてできない。こわいしやり方知らない」
「一回してくれたでしょ。いをりが小学3年のとき。家で二人っきりでわたしが
いきなり失神して
そのとき、グルカゴンのことどうして知ったの?
注射器の場所どうして分かった。いったいどこに注射したのよ?」
「覚えてない知らない
飲みかけだけど三ツ矢サイダーがある。いま測定する?
寒気と手の震えは?」
「測定チップが2つしかない
いま測ると注射打つタイミング分からなくなる」
白上風花は、生まれつきインスリンが分泌できない身体でうまれた1型糖尿病
血糖値が正常範囲に収まるよう気をつけて生きてきた
いをりは、風花の血糖値を心配して暮らしてきた
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