第10話 知り合いでも、取調べ

「おめぇーがやったんだろう!」

「だから違いますって!何回言えばいいですか?!」

と山本警部がまたしても他人を犯人だと決めつけ、取り調べを実施した。

そう、いつものことだ。山本警部は俺の上司であり、尊敬する理想の刑事でもある…


でも今日はなんとなく…様子が違うみたいだ。


俺たちが呼ばれたのは、東京の小田区にある交差点。そこで起きた事故は最初の110番通報で、俺らは全員耳を疑った…

四方から車が衝突し、その事故に巻き込まれた人達は殆ど死んでいたとのこと…


事故現場の大パニックに加え、山本警部が、事件だ事件だーっと大騒ぎした…あっちもこっちも大変…


そこには、多くの人がその中心部の4台の車を囲んで撮影していた。人を助けるという声が飛び交う中、俺の目に最初映ったのは、事故とは無関係の、一人の女性の姿だった…


怖がって、事故を一見すら出来ず、今の現実を受け入れたくないとばかりに…

他の人が事件に夢中にも関わらず…自分だけが助かればと…そう思っていたのだろう…

気になったからその方に声をかけた。


「こんにちは。何故、貴方は一人で車の中に居るんですか?旦那さんは?」

と言ったらこう返してもらった

「夫は、人を救っています。私はそれが出来たらいいのですが…私はやっぱり臆病ものみたいです…前に突っ走って前向きな夫とは真反対なのかもしれません…」

彼女は、逃げたいじゃなくて…逃げざるを得なくなった。

「それじゃ、貴方は今出来ることは何ですか?」


「支援です。ひたすら…それで夫が助かれば…それこそ私の生き甲斐です。」


「なるほど。ご協力感謝します。では失礼します。」

と彼女を車の中に置いていき、事故現場に向かった。


歩いて一分程で飛び交う声でとある一つの共通の話題が聞こえた。

「な!あの少年すげぇだろう!」

「ああ!こんなに人を動かせるなんて、とても子どもには見えないわ!」

「大人なのに情けねぇー!」

とそればかり…まさかこの事故の救済の指揮に当たったのは一人少年だというのか?


ふとこう思った。

「これは調査しなければな…」


俺は山本警部のところまで戻って、事故現場の調査結果を伝えた所に、顔見知りが見えたから、報告をすみ、その男性に声を掛けた。


男性は先程話した女性と、もう一人少年を連れて行った。


「荒牧さん、お久しぶりです。」

「あ、栗崎刑事!お久しぶりです!この前の試験会場でのお誘い、ありがとうございました!」

「それは何よりですが、今はそんな話よりも…結論から言わせてもらいます。」

と荒牧橙次郎に重要な話をすると彼が…

「なんですか?結論って」


「荒牧橙次郎、貴方と、そこの少年を取り調べに連れていきます。」


荒牧橙次郎と少年は同時に声を発した。


「え?」

「は?」






俺は栗崎刑事に取り調べに連れて行かれた。

それだけじゃない…一緒にいた洋介くんもだ。

まー無理はない。俺たちはそこで居合わせて、事故…いや、事件の重要参考人として直々に『山本警部』という人に呼ばれたらしい。

莉子ちゃんを置いていくわけにはいかないから、一緒に警視庁まで連れて来た。


時刻は18時05分…お腹は空く頃合いで、丁度晩御飯を食べる所が…どうしてこんなにもテンプレの事情聴取に………


カツ丼なんか用意されてるんだぁ!


「よーし、これで話してもらうぞ…おめぇがやったか?」


「だーかーらーっ!!どうしてこんな決めつけるんですか?!やってるわけがないでしょう!」


カツ丼はかなり魅力的だが、それよりこの取り調べはこんなにもやり方が古くて…苦手過ぎる…

鏡の向こうの部屋で莉子ちゃんも見てるし、多分呆れてると思う…せめて彼女にもカツ丼を用意さてもらったら?全く…俺は朝からなんにも食ってないけど、うちの莉子ちゃんが少しでもお腹が空いて、食べることが出来なければ俺は真っ先に買い物に行く…こんな取り調べ室なんか飛び出してやる!!


目の前の警部がふざけてるかわからないけど…こんなやり方で喋る人なんて本当に今でもいるんだろうか?別に俺は犯人じゃないし、そもそも事件性までに至ってるのはいいとして…ここには目撃証人しか居ないが?話すんだったらカツ丼なくても全然喋れるけど…


「とりあえず、俺はそこでいきなり居合わせてだけです。何故この事故が起きたか、本当に真犯人なんているかは分かりませんが、明らかなのは俺たち3人はただ居合わせただけです。」


「そう言うと思ったんですよ…荒牧橙次郎さん。」


いや、当たり前だが?最近の刑事さんはなんなんだ…?

とこう愚痴った俺に説明してくれる山本警部。

「いいか荒牧橙次郎…人はね、どうしても生きたいんだよ。何があってもだ。これが我々人間の最重要の任務と考えればいいでしょう。でも生きるだけじゃ駄目だ。なんだったら楽に生きたい…そういう考え方を持つ人は地球の9割も占めている。で、お前さんは今必死に楽に生きようとするのに何をしてる?犯罪から免れようとしている。」


「いや、そもそも何もしてないですって!」

「そう!それだよそれ!そういうのは免れようとする考え方だ!ぴったりだ!いいか、おめぇは犯人じゃねぇだともうとっくにわかってるんだよ…そういう話じゃないんだ…お前が犯人だと思って喋ってるだけだ…でもお前は今必死で言い訳をしようとしているんだ…実にみっともない…俺は聞きたいのはそういうのじゃないんだ…この取り調べは。お前もわかってるだろう?俺たち警察は何がほしいんだ?」

「犯人を見つける?」

と聞き返すと…

「そう、正解。そのためには?」

「犯人を探す…しかない?」

「おお…いい線行ってるね…もう少しだ。俺はオメェと話す時、常にお前が犯人だという意識を持っている…世界にどこのどいつも嘘つきだからな…で、犯人を捕まえるのに最も有効な手段は、自白だ。例えそれがどんな些細なことでも、それがあれば俺たちの勝ちだ…忘れるなよ。」

と山本警部が話を終え、取り調べ室から出た。


山本警部…結局何がしたかったのか未だにわからないが…俺は彼を憎めない気がする…犯人呼ばわりされたけど…この人…かーなり凝ってるね…


警部が出た後、栗崎刑事に洋介くんの取り調べそ行えるよう指示した。

俺は取り調べ室から出て、莉子ちゃんが居た鏡後ろの部屋に話掛けた。

「今終わったよ…」

とへとへとの俺に優しく慰める莉子ちゃん

「よーしよし、偉い偉い!それで、犯人は橙次郎さんですか?」

「そんなわけないよ〜莉子ちゃん〜俺は虫でさえ殺せない、何を言ってらっしゃる莉子ちゃん…?」

「そうよね橙次郎さん!台所を燃やせる貴方ならそんなこと出来るわけがないよねー!」

「それは昔の話だろうが!!思い出したくもない…哀れなハンバーグサプライズ…」


と俺をからかう莉子ちゃんだった…

「とにかく、この取り調べが終わったら今度こそ晩御飯食べないとだよ!まさかカツ丼でお腹いっぱいになったとか?」

「莉子ちゃんの料理はいつでも別腹にスペース置いてあるのっさ!」

カッコよく決めたつもりでいたが、莉子ちゃんは少し微笑んで、何も言ってこなかった…


少し反応がほしい!


それを見た栗崎刑事が少し微笑んで、洋介くんを連れて、取り調べを開始した。


ガラス越しで会話は微かに聞こえたが、後ろの部屋に入ってきた山本警部に話かけられた。


「君たちは元気だねー、若いのはいいことじゃないか。」


とこう話す山本警部だった。

彼は結局年を召された方で、憶測で言うと50から60代まで言ってると思う…改めて見ると渋い警部にしか見えない…けどどこかで会話をすると何となく話がズレる気がする。身長は俺とほぼ一緒で、お互いの体重もそこまで変わらない…俺も20年後もあーなったらいいなー…


「お互いで支え合ってこそです。妻は大好きなので…」

「ちょっと橙次郎さん、そんな恥ずかしいことを言うのは慣れてないから辞めてね…先の仕返しってこと?」

「そだよ〜ん!いっぱい恥ずかしくなれ!!あははは!」

「もう、調子狂うんだから…」

と莉子ちゃんにかった気で満々でいたが、山本警部は俺たちにガラスの向こうに居る栗崎刑事を見ると言われた。

「荒牧、あの人を見ろ。俺の大事な部下の栗崎だ。知り合いだったってな?」


「あ、はい、そうです…俺の死んだ息子が彼の息子と一緒の中学で…あ、この栗崎洋介くんも同じ中学に通ってたんです。」


「そっか…彼についてはまだ聞いてないのか?」

彼?誰?

「誰のことですか?」

「いや、話されてなかったら俺からは何も言わん。」


いや、気になるけど…何があったのか?栗崎刑事のことだよね…諸事情に首を突っ込むのも嫌だから、とりあえずいつかそういう話されたらまた聞いておこう…


山本警部は話を続けた。

「彼は今とにかく必死。仕事に必死、私生活でも必死。手当たり次第彼は動いている。立ち止まるわけにはいかないところにいるからだ。彼にも部下も居て、もちろん妻と子ども、だからってわけじゃないが…これの必死な努力を見ると昔の俺に似てると思って、つい、重ねっちまうんだ。もしこれから先に栗崎に何かあったら、多分彼の味方は荒牧しか居ねぇよと彼が思うのだろう。その時、2つお願い事がしたい。」


「願い事ですか?」


「そうだ。聞いてくれるとありがたいが、彼に絶対の秘密にすると約束してくれ。破ったら業務執行妨害で逮捕にするぞ。」


その罪、当てはまらないと思うけど…栗崎刑事のことだし、断る理由もないしな。


「分かりました。お願い事というのは?」


「一つ。彼を思いっきりぶん殴ってくれ。」


「え?殴る?何でですか?」

「彼は正直者だから、そうしないと何も見なくなってしまう。だから思いっきり殴れ。」


……


「出来るかわからないけど…分かりました。」


「二つ。山本警部から『ごめんなさい』って伝えてくれ。」

??? どういうこと?


「はぁ…ごめんなさいって何がですか?」

と言った瞬間警部が銃を出して俺を脅し始めた。


「秘密って言ってんだ!!死にてぇのか!!っこら!」


「ごめんなさい!分かりました!何も聞かないからそう伝えておきます、はい!銃を降ろしてください!」


「命令される筋合いはオメェにねぇ!」

と山本警部は少しずつ銃降ろしていた。


こっっっっっわ…


後ろにいた莉子ちゃんも一瞬動揺したが、幸いそこまで衝撃はなかったみたい。まるで莉子ちゃんがこの人が絶対に人を殺さないかのように山本警部を見つめた。

そして、話を栗崎刑事戻すと、何かとんでもないことが取り調べ室の中で起きてるみたい。


栗崎刑事が洋介くんの服を掴んで、怒る洋介が見れた。

どうやら喧嘩中みたいな様子…


何が起こっているんだ?


そして、栗崎刑事からとんでもない一言が…



「お前みたいなクソガキ、絶対に許さない!!」






          次回へ続く

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