第3話
王様の名前を当てたことで、場の雰囲気はすっかりわたしのスキルを信じてもらえたようだ。スキルの発動方法をごまかせたことで、わたしもちょっとほっとしている。
よし、じゃあ次のターゲットはあの人だ。
「あ、今度はあの人が気になります。よし、ムムム、えーい!はい、鑑定の結果をお知らせしますね。そこのフォンターナ外務大臣は、となりの国のグレッシ侯爵からお金をもらって、この国の情報を教えています。証拠はフォンターナ大臣のおうちの動く本棚の裏にある、金庫の中にあります。暗証番号は右に2回6、左に3回4、右に2回7でーす」
ふふ、みんなビックリしてるな。
しばらくざわついていたら、フォンターナ大臣が真っ青な顔で騒ぎはじめた。
「小娘がバカなことを言うな!ワシが国を裏切るだと?陛下、ゆめゆめご信じられませんよう。あの小娘はかの敵国から遣わされた間者かもしれませんぞ。ワシの方で一度調べさせてください」
「ふむ。召喚の成否はまた別に調べさせよう。今はまずフォンターナ大臣の自宅を調べて、娘の鑑定が正しいか確かめてみようではないか。大臣はそれまで隣の控室で休むとよい」
わあわあと騒ぐ大臣を、お城の衛兵さんが連れていく。お父さんとお母さんの新婚旅行の写真でみた、バッキンガム宮殿の衛兵さんみたいな制服でかっこいい。私が思わず衛兵さんに見とれていると、ニッコロ王がうぉっほんと咳払いをした。
「あ、すみません。えっと、今日はスキルを使い過ぎたみたいで、もう鑑定できないみたいです」
あんまりやり過ぎるとボロがでちゃって困るから、今日はこれで終わりにしておこう。
「うむ、そうか。それでは大臣の件が本当かどうかを調べてから、続きを鑑定してもらうことにしようかの。よし、下がってよいぞ。ジェラルドよ、あかねの部屋とメイドの手配をするように」
名前を呼ばれたジェラルドさんが、わたしを手招きする。さっき鑑定した結果は、すごくマジメで優しいおじいさん執事長。お城で余った食材を孤児院に届けさせたり、お休みの日は子供たちに勉強を教えたりしている。きっとこの人は信用しても大丈夫。
長い廊下を渡って、他国からのお客様が過ごす迎賓館の一室に案内された。国がお迎えするゲストを泊めるお部屋だから、とにかく豪華!お手入れも行き届いていて、足跡をつけることも申し訳ないくらいで、なんとなくつま先立ちで歩いた。
ジェラルドさんが連れてきた、何人かいるメイドさんの中からお世話係を選んでよいと言われたので、みんなにあいさつをして鑑定させてもらう。
その中で、ふわふわの赤毛にそばかすがかわいいエミーリアにお世話係をお願いすることにした。地方から王都に出てきて1年、地元に残してきた妹のことが心配な優しいお姉ちゃん。わたしよりも年下だけど、話が合いそうだと思った。
その後、夕食のワゴンが届けられ、食事の時間になった。エミーリアに見守られながら1人で食べるのは嫌だったので、お願いして一緒に食べてもらうことにした。最初は遠慮したエミーリアも、美味しいご飯を一緒に食べてるうちに、思ったとおりすぐに打ちとけた。
お風呂ですみずみまで洗われたのは恥ずかしかったけど、髪を
天蓋付きのベッドのフカフカの毛布にくるまると、緊張から解放されたわたしはすぐに夢の世界へと落ちた。
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