③俺はハーレムを、ビシっ!……道具屋にならせていただきます1部3章1~タカト!大ピンチ! ~ 生死をかけろ! 筋肉超人あっ♡修マラ♡ん♡編

ぺんぺん草のすけ

第1話 プロローグ

 ある晴れた日。今日もタカトとビン子は権蔵の配達の手伝いに駆り出されていた。

 だが、いつもと違ってトボトボと歩く二人。

 そう、今日はパートナーの忌野清志子イマワノキヨシコがいないのである。

 あっ!知っていると思うけど、忌野清志子イマワノキヨシコは馬の名前だからね。

 そう、タカトよりも権蔵に信頼されている老馬なのである。

 その老馬も最近、年を取ってきたようで力が衰えてきた。

 「本当に年は取りたくないものだ」……などという権蔵のしおらしい言葉に、つい、タカトは「じっちゃんも、ボケはじめたか……」などと、タカトなりに気遣ったつもりだったのだが……どうやら、そのいらぬ一言が権蔵の怒りを買ったようで、今日の配達をタカト自身に運ばせたようなのだ。

 その荷物の重さ……ゆうに50kg。

 というか、50kg? それぐらいの重さであれば、ヨークなどはスキップを踏みながら片手で運んでしまうことだろう。

 だが、タカトは非力wwww喧嘩にも勝てない最弱野郎なのである。

 そんなタカトにとって50kgは、絶望的な重さだった。


「くそ! あのじじい! 帰ったら小遣いたんまり請求してやるからな!」

 半日かけてやっとのことで配達を終えたタカトは、配達で得た代金をポケットにしまい、不貞腐れながら家路についていた。

 川の土手、いつも歩きなれているあぜ道のちょっとしたデコボコが酷使した体に響くのだろう、先ほどから肩を押さえて腕をグルグルと回している。

 そして、そんなタカトの横には、いつものようにビン子が明るい声で付き従っていた。 

「ねぇタカト。私も手伝ったんだから、ちゃんとお小遣いわけてよね!」

「お前、そんなに運んでないだろうが!」

「何言ってんのよ! 10kgは運んだわよ」

「10kg? 俺なんか40kgだぞ!」

「私、女の子なんだから仕方ないじゃない!」

「はぁ? ビン子さんが女の子? そのまな板お胸で女の子とおっしゃりますかwww」

 カっち―ン!

 その言葉に一瞬にしてビン子の表情が怒りに変わった。

 というのも、ビン子にとって貧乳は禁句、いや、虎の尾を踏むようなもの……いやいやいや、それ以上……竜の逆鱗をハンマーでバンバンと無神経に叩くような行為なのである。

 だが、タカトは貧乳という直接的な言葉を避けたことにより、その危険は回避した(俺って賢いだろwwwbyタカト)とでも思っていたのか、いまだに危機感など全く感じずに飄々と言葉を続けていたのだ……そう……この男……まったくデリカシーのないアホなのである。

「というかさ、ビン子、お前、神様なんだから、こういう時、なにかパッと役に立つ神の恩恵とかないのかよwww」

 神の恩恵とは神の持つ力の一つ。簡単に言うと魔法みたいなものなのだ。

「あ・る・わ・よ! その神の恩恵とやらをその身でしっかり受け取りなさいよ(怒)」

 と、ビン子が大声を出したかと思うと、その体が大きく天に舞い上がったのだ。

 その高さはタカトの頭上のはるか上。

 恐るべし! この跳躍力が神の恩恵というのであろうか。

 ――いや違う! ビン子にこんな神の恩恵などありはしない! といか、アイツに神の恩恵なんてあるわけないじゃない!

 何を隠そうビン子ちゃん、神は神でも記憶を失った神様なのだ。だから、神の恩恵など持ち合わせておりません。多分……

 引きつるタカトの顔が遅れて空を見上げると、その視界は太陽から降り注ぐ輝きによって、一瞬、真っ白になっていた。

 だが、その白き世界にまるで天から美しい女神でも舞い降りてくるかの様に黒い影がどんどんと近づいてくるではないか。

「なに!」

 驚くタカト。

 そう、この状況、タカトはよく知っている。

 あれは決して女神などといった優しい存在ではないのだ!

 ――というか、まずい!

 そのため、この後、起こりうる惨劇も瞬時に理解できていた。

 ――そう!コレはビン子の!

 それはタカトが要らぬことを言うたびに振り下ろされるビン子のハリセン。

 まぁ、そのハリセンがどこから出てきているのかはタカトは知らない。

 スカートの中からなのか、カバンの中からなのか、はたまた、これが神の恩恵なのかどうかなど……というか、そんなものを確認する余裕などタカトには全く無いのである。

 ――とにかく防御!防御姿勢を! 防御スキル!石頭発動! って、俺、そんなスキル持ってなかったわw

 あわてて頭を守ろうと手を回そうとするタカトを見てビン子はニヤリ!

 ――遅い!

清・浄・寂・滅・扇しょうじょうじゃくめつせん!」

 ビシっ!

 ビン子の怒声が終わるよりも早く、打ち付けられた衝撃波が周囲の草々を激しく揺らした。

 そう……ビン子が振り下ろしたハリセンはタカトの手のスピードをも凌駕し、その脳天を一直線にシバキ倒していたのである。

 何を隠そう!ビン子の振り下ろすハリセンのスピードは音速をも超えるのである!


 吹き抜ける一陣の風と共に、タカトの視野が霧散した。

 残るは暗黒の世界、そして、動かぬ体……

 ――ここはどこだ?

 そんなタカトの耳に、いつかどこかで聞いたことがあるような声が響いてきた。

「ウァハハハアハ 天塚タカト! ようこそ我がツョッカーに来てくれた! 君が意識を失っている間、我がツョッカーは!」

「って、もうええわ! このくだりは前にも聞いたわ!」

 という、タカトの無慈悲なツッコミによって

「えええ! ちょっと待ってよ、ここから大切な伏線を喋るのに……」と、どこぞの声は小さくなっていき、ついにタカトは何とか正気を取り戻すことができた。

 気が付くと、どうやらあぜ道の上であおむけにぶっ倒れているようで、空に浮かぶ白い雲がよく見えた。

 しかも、サンサンと降り注ぐまぶしいばかりの光。

 ――まぶしい! まぶしすぎる!

 上目づかいでやっと見ることができる視界の端には黒い影が揺れていた。

 そう、タカトの頭上からは勝ち誇ったようなビン子が腰に腕を当て覗き込むかのように見下ろしていたのである。

「今日もやっぱり私の勝ちね!」

 さきほどから土手を吹く風が、まるで勝者をたたえるかのように彼女のスカートを揺らしていた。

 そして、今日もまたタカトはいつものように負けを認めるのである。

 ――ふっ……やっぱり白だったか……俺のパンツ予想……今回も外れたぜ……

 ビシっ! 

 ふごっ!


「いてぇなぁ……」

 頭をこすりながらぼやくタカトの横では、ビン子がアッカンベーをしていた。

「タカトが悪いんですぅ」

 そんないつもの光景、そんないつもの二人であった……


 だが……今日に限っては、少々違った。

 というのも、タンポポといった短い雑草たちが生い茂る道横から少女たちの声がしたのである。

 そう、少女たち……複数形である。


「はい、こちらで人魔チェックを行っております」

「ただいま、人魔チェックの強化週間で~す」


 そこには一つの長机と丸椅子が二つ。

 しかも、その脇にはなんと!二人のナースが立っているではないか!

 にこやかな笑顔を浮かべ机へといざなおうとするこの仕草……まるで、マルチ商法の勧誘員さんそのもの。だが、彼女たちの能力は恐ろしいほど高いのだ。ボンキュボンのなまめかしいボディをピチピチのOLスーツに身を包みながら童貞丸出しのカモのウィークポイントを正確に狙い撃ちしてくるのである。机越しに相手の手を両手で握ったかと思うとそっとその指先を絡めてくる……そして、とどめの一言「タカト君♡……私、この商品をタカト君♡に是非とも使ってもらいたいと思うの、いや、タカト君♡だからこそ使って欲しいの♡タカト君♡タカト君♡タカトきゅ~ん♡」指先を優しくこすられながら何度も何度も女性に名前を呼ばれてしまうと童貞の脳みそなど、完全にとろけてしまう……

 ――俺はこれで一体いくらネジを購入させららたことだろう……

 そう、タカトの持つ『頑固おやじ印の極め匠シリーズ』のオスねじとメスねじの多くは、このやり手のお姉さんによって、無駄に買わされていたのである……恐るべし巨乳のおねえさん!

 といっても、『頑固おやじ印の極め匠シリーズ』のネジそのものはしっかりした超一流品! だが、無駄に超一流品過ぎてなかなか買い手が見つからなかっただけなのだ。

 で、話もどって、このナースたち……どこかおかしい。

 ―― 一流品というよりも三流品……いや、それ以下か。

 というのも、背が低い、低すぎるのだ……いや、背が低いのは百歩譲ったとして、ぺちゃぱいなのである。それも!ビン子とドッコイどっこい!(ギラ! なんか言った!byビン子)

 タカトにとってのナースとはボンキュボン!の、今にも胸ボタンがはち切れそうなきれいなお姉さんたちのことなのである。

 そう、夜な夜な見るムフフな本にはイメクラの広告が腐るほど載っていた。

 そこでなまめかしいポーズをとるナースの方々は、どれもがボンキュボン!と一流の体型をしていたのである。

 ――これがナース……あん? ふざけてんのか!

 そんなタカトが、目の前に立つ幼児体系のナースを見て白けるのは仕方のない事であった。

 だからなのか、タカトはあからさまに面倒くさそうな態度、いや、見下すような視線を送り、

「俺はいたって健康体だから、別にいいよ」と、けんもほろろに断った。


 タカトは、まるで関わりたくないかのようにに長机の前をスタスタと横切っていく。

 だが、いきなりなぜかナースたちがそんなタカトの前に手を大きく広げて立ちふさがったのだ。

 その鬼気迫る感じの表情にタカトは少々おじけづいた。

 だって、その眼はまるで借金取りに追われてもう後がない、だから……だから……人を殺してでも何とかするわよ!というような怖い目をしていたのだ。

 ――だが、俺は男の子!ココで引き下がるのは男の子としてのプライドが許さん!

 ってことで、とりあえず、ディスってみた。

「オイオイ! お前さんたちwww本当にナースかよ! ナースていうのはな、こう、患者さんたちを安心させるために、もっと天使のような笑顔を浮かべているもんだぜwww」

 まぁ、ちょっと小便ちびっていたのだが、それは内緒の話だ……


 ギク!

 二人のナースは、その言葉に驚いたようで互いに顔を見合わせた。

 そして、再びタカトの方に向き直った顔には、満面の笑顔が咲いていたのである。

 ――もしかして! この変わりよう……

 タカトは、瞬時に悟った。

 ――こやつら! できる!

 目の前の幼女たちは5歳ほど……この年頃の子供であれば、自分の思い通りにならなければ泣いたりわめいたりするものなのだ。それがどうだ、こんな年端もいかない女の子たちが、ものの見事に自分の感情をコントロールしたのである。

 タカトは冷静さを装いつつも警戒を厳にした。

 ――どこの誰かは知らないが! 大体、こういった輩の正体は犯罪者と決まっている!

 

 しかし、横に立つビン子はキョトンとしながら、目の前の二人の幼女を見つめていた。

「あら……もしかして……あなたたち……」

 ビン子の奴、タカトと違ってどうやら、二人の正体に心当たりでもあるのだろう。

 ちなみに、目の前の幼女ナースたち、マスクなどしていない。そう、スッピンの顔をさらしているのである。

 知り合いなら100%どこの誰だか認識できる!

 だが、まあ、この世の中、セ〇ラームーンをはじめとした魔法少女たちなどは変身した後にスッピンをさらしたとしても正体が全くばれないのが通例だ。

 ならば、このナースたちも自分の正体がバレていないと思っているに違いない。

 などと、ビン子が思ったのかどうかは知らないが、二人の正体を口に出すことをやめた。

 ――やっぱり、蘭華ちゃんと蘭菊ちゃんよね…… 

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